ちょっと待って下さい。それは漢方薬ではありません

ちょっと待って下さい。それは漢方薬ではありません

漢方相談では、西洋薬を調剤する調剤薬局と同様に現在服用しているお薬や健康食品の内容を確認しています。

病院やクリニックで処方していただいたお薬に関してはお薬手帳で確認させていただいていますが、健康食品や市販薬を薬局・薬店・ネット・個人輸入等で個人購入したものに関しては商品の名称をお伺いして、分からなければネットで内容を確認させていただいています。

稀に、ご本人が漢方薬を服用しているという事で内容を確認してみると医薬品でも漢方薬でもない場合があります。

どうして、これを漢方薬と思って服用していたのだろうか・・・

間違えやすいケースと漢方薬の見分け方についてご紹介いたします。

これが原因

写真に写っている商品は当店で取り扱っている商品ですが、この中で漢方薬はどれかわかりますか。

人によっては”全部”と答える方もいます。
その理由は後程。

正解は1つだけですがどれかわかりますか。

正解は一番左の「イスクラ独歩顆粒」です。

「えっ? よくいにん末は漢方薬でしょ!!」
「亀鹿仙は、漢方処方名じゃないの」
「福寿茶は、いろんな薬草が入っているから漢方薬よね」
と思っている方もいらっしゃると思います。

漢方薬と間違える原因は、
「漢字で書かれている商品名」
「漢方薬局で取り扱っているから」
「知っている生薬・植物名が入っているから」
「製造販売会社が他に漢方薬を製造販売しているから」
「製造販売会社の名称に「~漢方(株)」「(株)和漢~」「中国~(株)」など漢方薬を連想させる言葉が入っている」
など他にもいろいろな理由があると思われますが、お客様からお伺いする理由としてこれらが主な原因であると分りました。

漢方薬と思って飲んで何が悪いの?

漢方薬でないものを漢方薬だと思って服用すること自体はイメージだけの問題なので、悪いことではありません。

しかし、それを服用する目的が何かの治療のためである場合には、思った効果や改善があらわれないまま服用を続けることは必ずしもプラスになるとは言えません。

漢方薬とは、民間薬との違い

そもそも漢方薬とは何かをしっかり理解することが間違いを正すことになり、紛らわしい商品を見極めることもできるようになります。

漢方薬は、「生薬」と呼ばれる、自然界に存在する植物、動物や鉱物などの薬効となる部分を、漢方理論に基づき通常は複数組み合わせて構成され、それぞれ固有の名称(漢方処方名)で呼ばれ、効能効果が示されています。

例えば、
葛根湯(かっこんとう)
使用されている生薬は、葛根、桂皮、麻黄、生姜、甘草、大棗、芍薬の7種類。
効能効果:感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は当帰、芍薬、大黄など18種類の生薬で構成された処方です。
効能効果:腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘

固有の名称はその処方を区別するための人の名前でいえば「本名」ですが、販売会社によっては、「本名」を使用せずそのメーカーで名付けた名称(商品名)をパッケージに使用している場合があります。

例えば、小林製薬株式会社にて販売している
ナイシトール85a(https://www.kobayashi.co.jp/seihin/ns_t/index.html)の本名は防風通聖散です。

添付文書の成分分量をみると、1日量(10錠中)防風通聖散エキス(50%量)2.5gと記載されています。


次に漢方薬と間違えやすいものに民間薬があります。

民間薬も自然の生薬を用いるのですが、漢方理論に基づいてその使用を制限しているのではなく、古くから言い伝えられ、利用されているものを指します。

例えば、いぼ取りに「はとむぎ」、便秘に「センナ」、あせもに「桃の葉」など主に単味(1種類)で使用し、呼び方も処方名ではなく生薬・植物名で呼ばれています。

漢方薬と民間薬との紛らわしいところは、漢方処方に使用される生薬を民間薬として使用することがあるからです。

例えば、艾葉(よもぎ)、大棗(なつめ)、枇杷葉、薏苡仁、山楂子などです。それぞれの生薬・植物には独自の効果がありますが、単味で使用する場合には漢方薬としてではなく、民間薬としての分類になります。

さらに紛らわしいのが、数種類の薬草を使用している商品や健康茶です。

当店で販売しているオリジナル健康茶も数種類の薬草を使用していますが、医薬品ではありません。分類としては健康食品です。

医薬品と健康食品の区別

医薬品と健康食品の大きな違いは、それを服用することによって得られる効能・効果が国によって認められているか否かです。

<健康食品とは>
健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです。そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした「保健機能食品制度」があります。(厚生労働省:健康食品のホームページ

特定保健用食品である特保(トクホ)や機能性表示食品などについては、また別ブログでご説明いたします。

医薬品は、様々な試験や実験を繰り返し、安全性・有効性などいくつものハードルをクリアしなければその認可は得られません。

一方、健康食品は表示方法や剤型などに約束事があるだけで、製造方法・有効性・安全性などには企業倫理にゆだねられているところがあります。

医薬品と健康食品の見分け方は簡単で、医薬品はパーッケージに、第1類医薬品・第2類医薬品・第3類医薬品と医薬品であることが記載されています。さらに、効能効果・用法容量・成分分量などその医薬品の詳しい情報がしっかりと記載されています。


健康食品と医薬品、漢方薬との違いは判りましたでしょうか。

まとめ
・漢方薬には、固有の名称(漢方処方名)が記載されています。
・医薬品には、効能効果が明記されています。
・わからないときには専門家に必ずお尋ねください。