漢方薬を2種類以上合わせて服用しても大丈夫か・・専門家がズバリお答えいたします。

漢方薬を2種類以上合わせて服用しても大丈夫か・・専門家がズバリお答えいたします。

病院から、〇〇湯と〇〇散を同時に処方されているのですが、一緒に服用しても大丈夫なのでしょうか。というお問合せを頂きました。

漢方薬を処方していただいた医師又は調剤した薬局の薬剤師に、しっかり説明いただくことが一番大切で明快な回答が得られると考えられますが、漢方の専門の方にお伺いしたいということでご連絡を頂きました。

漢方医学には、一つの処方で治療するという原則はありますが、2~3種類の漢方薬を組み合わせて調合・処方することは稀なことでありません。

その理由をご説明いたします。

漢方薬はいくつもの処方を組み合わせてできている

そもそも、漢方処方は基本となる処方が組み合わさってできていることが多く、1つの処方でもともとある処方を3つ合わせている場合もあります。

具体例1:温清飲(うんせいいん)

皮膚病や婦人病によく用いられる処方ですが、この処方は、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)と四物湯(しもつとう)を組み合わせてできている処方です。

黄連解毒湯は、清熱剤(せいねつざい)として使用し、特に血熱(けつねつ)という炎症や出血、興奮を鎮める働きがあります。

四物湯は、補血剤(ほけつざい)として使用され、血虚(けっきょ)を改善する働きに優れています。

この2つの処方を組み合わせることで、血熱・血虚を同時に改善することができるのです。

また、この温清飲を基本処方として、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯(一貫堂)という処方があり、症状に合わせて使い分けていきます。

具体例2:柴苓湯(さいれいとう)

吐き気・食欲不振・むくみなどに使用される処方で、小柴胡湯(しょうさいことう)と五苓散(ごれいさん)が組み合わさった処方です。

五苓散を半夏厚朴湯に変えた場合は、柴朴湯(さいぼくとう)という処方になります。

他に、小柴胡湯に桔梗・石膏を加えると、小柴胡湯加桔梗石膏という処方になります。

処方名のなかに「加」や「合」がある場合、処方に加えている又は組み合わせているという意味になります。

具体例3:葛根湯(かっこんとう)

”ゾクッと来たら葛根湯”でおなじみの風邪の初期症状によく使用される処方ですが、これも2つの漢方薬が組み合わさってできているのです。

一つは、麻黄湯(まおうとう)インフルエンザに効果があるとして一躍注目をあつめた処方で、それに桂枝湯(けいしとう)を合わせ、そこに「葛根」を加え「杏仁」を除いた処方なのです。

麻黄湯と桂枝湯を半分ずつ組み合わせた処方に「桂麻各半湯」という処方もあります。

そうすると、葛根湯は桂麻各半湯から麻黄・桂枝を減量し、葛根を加え杏仁を取り除いたものと解することもできるのです。

その他、多くの処方はその処方の中に基本となる証の処方が含まれていて、症状の違いによって処方を使い分けているのです。

漢方薬を組み合わせるとこでの注意

漢方薬が、いくつもの処方を組み合わせて作られているからと言って、何種類も無作為に服用してよいということにはなりません。

特に注意してほしいことをあげていきます。

偽アルドステロン症

漢方薬を長く服用している方、漢方薬の副作用について調べている方はご存知でしょう。

偽アルドステロン症(Pseudoaldosteronism )についてご説明いたします。

血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにも関わらず、高血圧、むくみ、カリウム喪失などの症状があらわれる状態で、漢方薬の多くの処方に含まれる「甘草」が原因となることが多く

手足のだるさ・しびれ・つっぱり感・こわばりがみられ、力が抜ける感じ、こむら返り、筋肉痛が現れて、だんだんきつくなります。

これらの症状が現れた場合には、すぐに服用を中止し、処方した医師又は薬局(薬剤師)に相談してください。

「甘草」の主成分はグリチルリチンを含み、この成分は、漢方薬以外に風邪薬、胃腸薬、肝臓病の薬、添加物として食品などにも含まれているため、漢方薬を1種類だけ服用していても、この副作用が現れることがあります。

治療方針を確認

漢方薬の利点は、複数の症状や疾患があっても少ない処方で改善できることです。

漢方薬が多剤服用の悩みを解決する

その利点をうまくいかせず、身体にあらわれている症状ひとつひとつに対して西洋薬のように漢方薬を選び服用することはお勧めできません。

漢方治療は、病気の原因となっている体質である「証」を見極め改善させます。そうすることで身体にあらわれている様々な症状は原因となる体質が改善されれば必ず良くなるためいろいろと組み合わせすぎると、治療の方向性を見失うこととなりかねません。

治療方針を明確にして、その都度現れる症状をどのようにとらえるのかをカウンセリングでしっかり見極めて、正しい漢方治療を進めてください。

漢方薬の効能効果よりも配合生薬

漢方治療の原則は1つの処方で治療するということですが、実際に2種類組み合わせて処方することは稀なことではありません。その背景には、漢方処方の効能によって漢方処方を選んでいるのではなく、配合生薬・構成を熟知し「証」に合わせて組み合わせを考えているからです。

配合生薬を理解していないと、葛根湯と麻黄湯を同時に服用させたり、温清飲と荊芥連翹湯を組み合わせたりとなります。漢方を熟知している専門家であればこれらの処方を同時に処方することはありません。

ただし、補気剤や健脾薬といった身体に不足しているものを補う処方の場合、似たような構成の処方を組み合わせることはありますが、配合割合や配合量を意識して調合することが前提となります。

調合(分量の調整等)されていない漢方薬を2種類以上同時に服用される場合には、漢方に精通した専門家にご相談ください。

組み合わせるとよい漢方薬

漢方治療を長く続けている中で、体質改善として基礎となる処方の他に組み合わせることで、治療効果の高まる漢方があることが解っています。

消導薬(しょうどうやく)

消化器系が強くても弱くても、薬が体内に吸収されるためには一部の薬剤を除いて消化器官を通過する必要があります。

また、漢方薬の処方の中には消化器系に負担がかかる場合があり、それによる消化器系の機能低下が漢方薬の効果を低下させてしまうことがあります。

漢方薬の吸収促進や副作用軽減対策として、「消導薬」を組み合わせる方法がおすすめ。

消導薬は山楂子・神麹・麦芽の3種類、これらが配合されている処方があり(加味平胃散、啓脾湯など)、基本となる処方と合わせて調合することがあります。

また、当店ではイスクラ産業株式会社より山楂子・神麹・麦芽の3種類が配合された「晶三仙(しょうさんせん)」という健康食品があるため、漢方エキス剤と一緒に服用していただくことがあります。

活血化瘀(かっけつかお)

体内に吸収された漢方成分は、体内を巡り効果を発揮していきます。

体内を巡る経絡にあらわれる血の滞りや出血を瘀血(おけつ)と呼び、瘀血を改善する方法を「活血化瘀法」といいます。

瘀血は、それ自体が様々な症状を引き起こす原因となるほか、他の病態を引き起こす原因ともなるため、冷えとともに「瘀血は万病のもと」と言われています。

瘀血を改善させる漢方処方で有名なのは、血府逐瘀湯、冠元顆粒、桂枝茯苓丸、芎帰調血飲

これらも、基本処方と組み合わせて使用することが多いです。


漢方薬を数種類服用することの不安や疑問は、その薬を服用する目標や意義が明確になっていないからではないでしょうか。

当店では漢方薬を調合し、その内容・治療の方向性についてしっかりお話しさせていただいています。

服用している漢方薬に疑問や不安を感じたら、処方していただいた医師又は薬剤師に相談してみましょう。

相談しにくいというお返事を頂くことがありますが、医師・薬剤師と患者さんの意思疎通ができないで、よい漢方治療・お悩みの改善ができるとは思えません。

漢方治療で大切なのは、治療者とのコミュニケーションです。時間をかけてでも信頼できる方に相談してください。それが治療の一番の近道です。

 

イスクラ冠元顆粒ってどんな薬なのか