皮膚炎・湿疹の漢方治療

皮膚炎・湿疹の漢方治療

湿疹(eczema)

アトピー性皮膚炎をはじめとする、湿疹症状の変化をまとめたものを「湿疹三角」と言います。

湿疹は瘙痒(かゆみ)を伴う紅斑から始まり、丘疹や小水疱、膿疱、びらん、痂皮、鱗屑を形成して治癒に向かいます。

漢方相談の方の多くは、これらの症状が混在した状態で紅斑⇒丘疹⇒水疱⇒結痂⇒落屑⇒治癒⇒紅斑を繰り返し、慢性化している方は皮膚の苔癬化や色素沈着が見られます。

用語解説

用語 解説
紅斑 皮膚表面が赤くなっている状態
丘疹 直径10mm以下の小さな突起
小水疱 丘疹の内側に透明な水溶性のものが発生している状態
膿疱 水疱の内容物が化膿して白から黄色に変化しているもの
湿潤 小水疱や膿疱が壊れてジクジクしている状態
結痂 湿潤している状態が変化して固まったもの(かさぶたなど)
落屑 結痂が脱落、あるいは剥がれようとしている状態
苔癬化 皮膚が厚くなりシワが深く、ゴワゴワしている状態

中医学的分析

皮膚病の漢方・中医学治療の特徴は、症状の原因となる【病邪】を判別しそれを取り除くこと、そして【正気】を補い繰り返さないように体質改善を行います。

皮膚病を治癒困難にしている原因の病邪は、主に「風」「湿」「熱」の3種類で、それぞれ単独で発生している時間は短く、「風湿」「風熱」「湿熱」と混在した状態が長く続き、さらに風熱から風湿、風熱から湿熱と病邪にも変化がおこります。

上図からそれぞれの症状において関連する病邪があります。どの時期が長いかによって、風・湿・熱のどの病邪が大きく影響しているのかを判断していきます。

紅斑・丘疹・・・熱邪、風熱
小水疱  ・・・湿邪
膿疱   ・・・熱毒、湿熱
湿潤   ・・・湿熱

体質改善

体質改善は、病邪を取り除くことだけではなく、病邪を取り除くことができなくなっている体質や病邪を生成しやすい体質を改善することです。

また、病邪の多くは生活習慣によって発生するものなので、生活習慣の観察をして、どの様な時に症状が変化するのかを記録しておくと体質のウィークポイントが解ります。

ご自分の体質の特徴を分析してみましょう。

肝(胆)のトラブル

□ イライラや不安感がある
□ 眠りが浅く、嫌な夢を見る
□ わき腹や胸が張って苦しい
□ 便秘と下痢を繰り返す
□ 目が疲れやすい、視力低下
□ 筋がこわばったり、ひきつれたりする
□ 爪が割れやすい、凸凹している
□ 月経不順、月経前にイライラする
□ 顔色が青い
□ 舌の両側の縁に赤みがある

心(小腸)のトラブル

□ 動悸や息切れがする
□ 寝つきが悪く、途中で目が覚める
□ 不安感がある
□ 物忘れしやすい
□ 胸や心臓部が重い、痛む
□ 左の肩や肩甲骨のあたりがこる
□ 少しの運動で汗をかく
□ 手足や顔がむくむ
□ 顔が赤い、ほてる
□ 舌の先端が赤い、または痛みがある

脾(胃)のトラブル

□ 食欲がない
□ 胃が痛い、または胃がむかつく
□ 下痢をしやすい
□ 口の中が荒れ、味がわかりにくい
□ 手足がだるく、筋力が弱い
□ 体がやせる、太っていて水太り
□ アザができやすい
□ 月経が止まりにくい
□ 顔や皮膚の色が黄色っぽい
□ よだれが多い
□ 舌の周囲に歯型がつく

肺(大腸)のトラブル

□ 咳や痰がでやすい
□ 呼吸が苦しい
□ 息が詰まったり、鼻水がよくでる
□ のどが腫れて痛みやすい
□ 風邪をひきやすい
□ 皮膚が弱い
□ 便秘になりやすい
□ アレルギー性の鼻炎や皮膚炎がある
□ 顔が白っぽい、色白である
□ 口で呼吸していることが多い

腎(膀胱)のトラブル

□ 足腰がだるく、腰痛を起こす
□ 精力が減退している
□ 骨がもろい(骨粗鬆症である)
□ 排尿障害を感じる(頻尿・残尿感・夜間尿など)
□ むくみやすい
□ 寒がりである(腰回りが冷える)
□ 手足がほてる、午後に微熱が出る
□ 耳鳴りや難聴がある
□ 顔が黒ずんでいる、目の下にクマ
□ 舌が赤く、苔が少ない

漢方薬の選択

治療に用いる漢方薬は、病邪を取り除く漢方薬と状態に応じて体質を整える漢方薬を併用します。

病邪を取り除く漢方薬:
黄連解毒湯、四物湯、温清飲、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、十味敗毒湯、五物解毒湯、竜胆瀉肝湯、茵蔯蒿湯など

正気を補う漢方薬:
衛益顆粒、補中益気湯、十全大補湯、六君子湯など

皮膚病に用いられる漢方薬はこれだけでなく、他にも様々な処方があります。自分の症状・体質に合ったものを服用することが改善の近道です。