脾胃を整えよう ― 未病を防ぐために

疾患別漢方治療

私たちの身体は、「食べて、消化して、吸収する」ことでエネルギーをつくり、健康を保っています。中医学ではこの働きを「脾胃(ひい)」が担っており、「未病(症状が出る前の不調)」を予防する上で重要な柱です。元気が出ない、だるい、食欲がいまいち…そんな状態をそのままにしないために、脾胃を整える生活を始めましょう。

脾胃とは何か ― 中医学での役割

  • 「脾」は、食べたものを「運化(うんか)」=消化・吸収し、気・血・水をつくり、全身に送る働きを持ちます。
  • 「胃」は、受納(じゅのう)=食物を受け取り、それを分解して脾に渡す役割。
  • 両者が協調して働くことで、「気血(きけつ)」――生命活動の原動力と栄養となるもの――が生まれます。

この状態が健康な「土台」であり、ここが弱るとさまざまな不調の入り口になります。

 脾胃の弱りによる未病サイン

 脾胃が弱ってくると、すぐには大きな病気にはならないけれど、「なんとなく不調」が続く状態が現れます。以下は予兆として見逃しがちなサインです。

サイン内容
食欲がない・食べてもあまり美味しく感じない胃の受納が弱くなるため。
消化が遅い・胃もたれ・膨満感食べ物が胃に留まりやすくなり、重く感じる。
下痢・軟便/便秘運化・輸送・排泄のリズムが乱れる。
身体が重だるい・むくみやすい水の代謝が滞り、「湿」が体にこもる。
疲れやすい・気力が出ない気血が十分に作られず、エネルギー不足に。
寒がり・冷たい飲食がしみる冷えが脾胃の働きをさらに低下させる。

これらのうち2〜3つが頻繁にあるなら、「脾胃が弱っているかも?」と考えて、生活習慣を見直す良いきっかけになります。

脾胃を弱らせる原因 ― 見落としがちな習慣

何気ない日常の中にも、脾胃を疲れさせる要因はいくつもあります。気づいたら改善のヒントです。

  • 冷たいもの・氷などを頻繁に摂取する
  • 食事の時間が不規則、夜遅く食べることが多い
  • 満腹になるまで食べる・早食い
  • 過度なダイエット、偏食・栄養の偏り
  • 長時間のストレス・緊張
  • 運動不足または逆に過度な運動
  • 睡眠不足・生活リズムが乱れている

日常でできる養生法 ― 食事・生活スタイルの具体策

実際に今日から取り入れやすい養生法を、できれば習慣にしてしまいましょう。

食事のポイント
  • 温かいものを中心に:温かい汁物・おかゆ・スープなど。冷たい飲み物・アイス・冷たいデザートは控える。
  • よく噛んでゆっくり食べる:満腹になる前に咀嚼を重視。
  • 腹八分目を心がける。過食は脾胃に負担。
  • 規則正しい食事時間:朝食をしっかり、昼と夜もできるだけ時間を固定。
生活スタイルの改善
  • 適度な運動:歩く・ストレッチ・ヨガなど、お腹を動かす軽めの運動を取り入れる。
  • ストレスケア:深呼吸・温かいお茶・趣味時間など、心を和ませる時間を持つ。
  • 良質な睡眠の確保:寝る前1時間程度は電子機器を避け、温かくて落ち着いた環境を整える。
  • 冷え対策を忘れずに:夏でも冷房での冷えや冷たい飲食で内臓が冷えることがあるので、腹巻き・足元暖かくしたり、温かい飲み物で内側から温めること。
食材・薬膳のヒント
  • 脾胃を助ける食材例:かぼちゃ・山芋・里芋・白米・にんじん・大根・しょうがなど。
  • 忌み食材例:冷たいもの・脂っこい重い食材・アルコールの過剰摂取など。

漢方でのサポート処方例と使い分け

脾胃を整えるために、漢方薬を補助的に使うことも有効です。以下は代表的な処方とその使い分け例です。

漢方名主な特徴向く症状・体質の例
六君子湯
(りっくんしとう)
脾胃を補い、「氣」を助け、寒さや湿気で弱った胃腸を整える胃もたれ・気が上がらない・冷えを伴う。朝が特につらい方。
補中益気湯
(ほちゅうえっきとう)
脾胃を整えながら、元気を補う。体力が落ち、疲れやすい人向き疲労が日常化している・気力低下・「元気を取り戻したい」方。
加味平胃散
(かみへいいさん)
胃腸の停滞感を取り除き、消化を助ける。湿や食積に用いる食べすぎ・脂っこいものの摂取後の胃もたれ・膨満感。
三仙
(山査子・麦芽・神麹)
消食薬。食べ物の消化を促進し、停滞を解消する脂っこい食事・穀物・酒などの消化不良。子どもの食積にも。

まとめ

脾胃を整えることは、「大病になる前のサインを見逃さない力=未病力」を育てることです。
小さな不調を軽視せず、「食べる」「眠る」「動く」「温める」を意識することで、気血が満ち、体力・免疫力が育まれます。

まずは、今週から一つだけ養生法を取り入れてみてください。たとえば「冷たい飲み物を控えて温かい飲み物をとる」「よく噛んで食べる」など、小さなことが体を整える第一歩になります。

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