「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」で病気に打ち勝つ
- 2019.02.05
- 漢方基礎知識
扶正と袪邪
漢方治療の特徴は治療哲学にあります。
その一つが「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」
中医学では、疾病が起こるのは「正気」が「邪気」に負かされていると考えます。その為、「正気」を補い、「邪気」を取り除くことによって疾病を治癒に向かわせる事を重視しています。
邪気の発生
「邪気」は次のようなものが原因で発生します。
(自然発生するもの)
寒さ、暑さ、乾燥、湿気などの気候変動
(外部から侵入しようとするもの)
ウイルス、細菌、アレルギー物質、公害物質など
(体内で発生するもの)
高血糖、コレステロール、中性脂肪、皮下脂肪
(その他)
感情の変化(怒り、悲しみ、思い悩み、喜び、驚き、恐怖)
生活習慣(昼夜逆転、不規則な生活、過労)
タバコ、酒、薬
これらは「邪気」となり身体の「正気」を傷つけていきます。
正気とは
「正気」は、わかりやすく考えると「元気」と考えてください。
アントニオ猪木さんの名言でもある「元気が一番、元気であればなんでもできる!!」とあるように、元気が充実している方は「邪気」は払いのけてしまいます。
しかし、正気を傷つけるようなことが続いていると邪気を払いのけることができずに邪気が身体に侵入し、滞り、増殖することでそれを追い出そうとする生理反応があらわれます。
それが「症状」です。
症状の改善は治療でない
病気になってあらわれる症状は、身体に起こっている異常な状態を整えようとする正常な反応です。
インフルエンザを例にお話いたします。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性疾患です。その症状は、悪寒、発熱、のどの痛み、倦怠感、咳、鼻水など
西洋治療は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬などが一般的で、発熱、咳などの症状にたいしては、その症状を抑える解熱鎮痛剤、消炎鎮痛剤、鎮咳剤、去痰剤などが使用されます。
しかし、これらの薬がインフルエンザを治したのではないことをご存知でしょうか。
自然治癒力
風邪の定義は次のように書かれています
「自然に良くなる上気道のウイルス感染症」
自然に良くなるとはいったいどういうことでしょうか。
けがをした時の傷、ぶつけた時のたんこぶ、蚊や虫に刺された時の腫れ、空腹時に飲むお酒による胃の内部の出血、体内に絶えずできるがん細胞
これらは、自然に良くなっています。身体をもとの健康な状態に戻そうとする力を「自然治癒力」と呼びます。
先ほどの、インフルエンザの場合、抗ウイルス剤・鎮痛剤・鎮咳剤などは症状を軽減することで自然治癒力が発揮しやすい状況を作るためのお薬で、
インフルエンザ、病気が改善できるのは「自然治癒力」が十分に働いた結果、身体を健康な状態に整えることができたと考えるのです。
扶正袪邪
病気の原因は「邪気」で、改善するためには「正気(自然治癒力)」がしっかり働くことが大切です。
漢方の治療は、病邪を除く「袪邪」と正気を補う「扶正」を行うことを基本としています。
しかし、病んでいる状態によって袪邪を優先するのか扶正を優先するのかが異なります。
- 病邪の勢いが強いが正気が充実している場合:
邪気を取り除く「袪邪」を優先する - 正気が不足しているために発症している場合:
正気を補う「扶正」を行い邪を取り除く - 病邪の勢いが強く、正気も不足している場合:
正気を補いながら、邪気を取り除く
これらの違いを判断するためにも、漢方相談では問診を重視しているのです。
数値は病気でない
血糖値、血圧、尿酸値、コレステロール、中性脂肪、甲状腺数値などの検査数値によって、様々な疾患の診断を行います。
これらの数値はあくまでも診断するための指標であり、この数値を安定させることが大切でありますが、数値を基準内に収めることだけを目標にしていては病気は改善されません。
つまり、数値が下げること、安定させることが大切なのではなく、異常な数値を引き起こしてしまった原因(体質)を正す(整える)ことが大切なのです。
生活習慣
病気を引き起こしてしまう原因の多くは生活習慣にあります。その次に遺伝的体質、生活環境が原因していきます。
生活習慣によって体質は作られていきます。親子、兄弟だからと言っても違う環境、異なる生活習慣であれば、罹る病気も違ってきます。
正気を弱めてしまう、または邪気を発生させやすい生活習慣があるのであれば、早めの対策が必要です。
漢方相談にご相談に来られる方の多くが、原因がわからないと言いますが、お話をお伺いしているうちに自分自身でその原因に気づくことがあります。
気づくことができると、生活習慣や物事のとらえ方が変わります。そうすることで病気の改善の近道となるのです。
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