新型コロナウイルス対策の漢方薬について
![新型コロナウイルス対策の漢方薬について](https://minamino-kanpou.com/wp-content/uploads/2020/04/IMG_20200417_094948.jpg)
新型コロナウイス対策として、漢方医学の専門家という立場から金沢大学附属病院漢方医学科 小川 恵子先生の特別寄稿「COVID-19 感染症に対する漢方治療の考え方」が公開され、この内容について反響が大きく、お客様よりお問い合わせが多くなりましたので、特にお問い合わせが多かった内容をまとめてご紹介いたします。
はじめに
まずはじめに小川先生は、特別寄稿の中で
この COVID-19 のパンデミックへの漢方医学の貢献の可能性に関して積極的に発言するのを避けてきました。なぜなら、エビデンスが確立していないからです。しかし、数多くの呼吸器内科医や救急医の友人たちから、「患者さんに役立つならば是非効果のありそうな処方を知りたい」という要望があり、現状で分かっていることで、漢方が役立つ可能性を伝えるという視点から、主に中国の診療ガイドラインを参考に、現在までに分かっている漢方医学的・中医学的な知見を簡潔にまとめました。
(本文より抜粋)
と前置きがあります。詳しく、内容を知りたい方はコチラから:http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_kanpou_0319.pdf
当ブログにおいての漢方処方や疾患に対する考え方は、中医学の考えに基づくものであり、西洋医学的視点からの効能を標榜しているのではありません。
補中益気湯と十全大補湯の違い
補中益気湯と十全大補湯の構成の違いを見ていきましょう。
処方名 | 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) |
成分 | 人参(ニンジン) | 人参 |
白朮(ビャクジュツ) | 白朮 | |
黄耆(オウギ) | 黄耆 | |
当帰(トウキ) | 当帰 | |
甘草(カンゾウ) | 甘草 | |
生姜(ショウキョウ) | 芍薬(シャクヤク) | |
陳皮(チンピ) | 川芎(センキュウ) | |
大棗(タイソウ) | 地黄(ジオウ) | |
升麻(ショウマ) | 茯苓(ブクリョウ) | |
柴胡(サイコ) | 桂皮(ケイヒ) | |
効能・効果 | 体力虚弱で、元気がなく、胃腸の働きが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術前の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒 | 体力虚弱なものの次の諸症:病後・術前の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血 |
中医分類 | 補気剤(ほきざい) | 気血双補剤(きけつそうほ) |
効能効果から見る違い
効能効果からの違いは、補中益気湯が「胃腸の働きが衰えて」と前置きがあることと、十全大補湯の「手足の冷え、貧血」というところから
十全大補湯は、身体を温め、血を補い元気にする
と分けることができます。
配合生薬の違いから
両処方とも、配合している生薬の人参、黄耆、白朮、甘草、当帰は同じですが、
補中益気湯は、大棗、陳皮、生姜、升麻、柴胡
十全大補湯は、茯苓、芍薬、地黄、川芎、桂皮
が異なる生薬になります。
十全大補湯の、当帰、芍薬、川芎、地黄の4種類は「四物湯(しもつとう)」という処方で、貧血、血の道症、冷え症、月経不順など改善する代表処方なので、十全大補湯は貧血傾向や冷えやすい傾向の方に向いている処方です。
補中益気湯は、升麻という生薬が配合されこれは胃下垂・子宮脱・直腸脱などに有効とされています。そのほか、大棗、陳皮、生姜は五臓の脾胃を整えていく働きがありますので、五臓の脾胃が弱い傾向の方に向いている処方となります。
2つの処方の何が良いのか
そもそも、この2つの処方が取り上げられている理由は何かを知りたいというお問い合わせがありました。
この2つの処方は、補気剤に分類されています。
中医学では「気」は体を元気にする・生理機能を整える・精神を安定させる・外敵から身体を守る・体を温めるなどの働きがあります。
新型コロナウイルスやインフルエンザ・花粉など外から身体に侵入しようとするものを中医学では「外邪」と呼んでいますが、外邪から身体を守る働きが「気」にあるため予防として気を補う処方である補中益気湯と十全大補湯が注目されているのです。
防衛作用
外邪から身体を防衛する働きを「気の防衛作用」と呼びます。これは気を体表面(鼻や皮膚・気管支などの粘膜)に巡らせることで、外からの邪気が侵入するのを防ぐ働きがあります。この働きをする気を「衛気(えき)」といいます。
この「衛気」が不足すると粘膜が弱くなり、邪気が侵入、カゼをひきやすい、熱が出やすい、すぐに寒気がする、カゼが治りにくい、気温の変化で体調不良になるなどの症状が現れます。この状態を「衛気虚」と言います。
衛気虚を改善する黄耆(おうぎ)
十全大補湯や補中益気湯の共通する「衛気」を補う働きは主に、黄耆(おうぎ)という生薬にあります。
黄耆はマメ科の植物の根で、人参、白朮、山薬、大棗などと同じく身体を元気にする「補気薬(ほきやく)」に分類されています。人参が体内の元気づけに用いるのに対し、黄耆は皮膚や粘膜を強化する働きがありますので、「衛気」を補う代表生薬になります。
ほかにおススメの漢方薬は
玉屏風散・衛益顆粒
中国古典文献「丹渓心法」には、衛気の働きを強める「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」という処方が記載されています。体の表面に屏風を立てて、外からの邪気を防ぐ効果があるというのが名前の由来で免疫機能を回復させる切り札として中国で広く使われてきました。
配合生薬は3種類
黄耆(おうぎ)
白朮(びゃくじゅつ):キク科の植物の根、胃腸を強化してエネルギー補充を促進
防風(ぼうふう):せり科の植物の根、外邪(特に風邪)を体外に追い出す働きがあります。
当店では「イスクラ衛益顆粒(えいえきかりゅう)」として販売しています。
90包(30日分) 9.000円(税抜)
●効能効果:身体虚弱で疲労しやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、ねあせ
帰脾湯・加味帰脾湯
帰脾湯(きひとう)・加味帰脾湯(かみきひとう)にも、衛気を補う「黄耆」や白朮が配合されています。
これらの処方の分類としては、十全大補湯と同じ「気血」を補うものですが、胃腸の働きを整えて精神不安や不眠などを改善する働きがあるので、胃腸が虚弱で睡眠障害や不安症がある場合には、こちらの処方をお薦めしています。
当店では、煎じ薬・エキス剤として販売しています。
自分に合った漢方薬を選んでもらう
漢方薬は強力な作用がないため、比較的安心して服用できるお薬ですが自分の体質に合っていない場合には、却って病状が悪化する場合がありますので、服用の際には必ず専門家にご相談して服用するようにしてください。
最後に
ここに挙げた漢方処方は、ウイルスを直接攻撃するものではありません。あくまでも
ご自分が感染している可能性がある場合には、お住いの保健所にまずはご連絡ください。
みなみ野漢方薬局では、対面相談販売のほか、メール相談・電話相談で詳しく症状をお伺いし、身体に合った漢方薬をご自宅まで配送する相談体制を整えています。お気軽にご相談ください。
リンク
・厚生労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
・都道府県別の感染者数(累計・NHKまとめ)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/
-
前の記事
コロナウイルス対策について 2020.03.30
-
次の記事
生姜(しょうが・しょうきょう) 2020.05.15