生姜(しょうが・しょうきょう)
- 2020.05.15
- 漢方トピック
漢方処方によく使用される生薬に、「生姜」があります。これには、どんな働きがあるのか漢方薬に良く配合される理由は何か、似たような名前の生薬に「乾姜」とあるがその違いは何か。など生姜に関する基礎知識をご紹介します。
生姜の基本情報
植物名:ショウガ「生姜」
別 名:ハジカミ
生薬名:生姜(ショウキョウ)、乾姜(カンショウキョウ)
インドを中心とした熱帯アジア原産の多年草の植物の根。日本には弥生時代に伝来したと推定されています。
地中にごつごつした根茎(料理や生薬として使用する部分)があり、そこから葉が筒状に直立に伸びています。緑色のこの部分を茎と思いがちですが葉になります。
食用生姜
食用される生姜は、収穫時期などによっていくつか分けられています。
根ショウガの収穫後すぐに出荷されるものを「新しょうが」、霜が降りる直前の11~12月まで収穫せずに畑においたものを「ひねしょうが」と分けられます。
「ひねしょうが」は、皮が薄茶色で香りや辛みが強く、「新しょうが」に比べ硬く、そのまま食べるのではなく、すりおろして薬味に使ったり、肉や魚料理の下味などに利用されます。
「葉ショウガ」は、初夏にやわらかい若い根茎を利用したもので、東京都あきる野市の二宮神社で毎年9月9日に「しょうが祭り」がありますがその時に食べられる生姜で、小ぶりな根茎でみずみずしく辛味が少ないのが特徴、味噌をつけていただきます。
「矢ショウガ」は、葉ショウガよりも早く若い根茎を切り取って収穫します。根茎があまり膨らんでいないもので甘酢漬けが焼き魚などによく添えられています。
漢方生薬の生姜
漢方薬の原材料として使用される生姜は、「生姜」と「乾生姜」とがあります。
9~11月ごろに採取して水洗いして乾燥させて使用するものを「生姜(しょうきょう)」。皮を除き、蒸して乾燥させたものを「乾生姜(かんしょうきょう)」「乾姜・干姜(かんきょう)」といいます。
中医学的な効能の違い
生姜:
①発汗によって寒邪(体を冷やす悪者)を追い払う
②胃腸のはたらきを活発にし、嘔吐を止める
③キノコ・魚介類の毒素を分解する
乾姜:
①胃腸を温め、消化機能を高める
②陽気(からだを温めるはたらき)を回復させる
③肺を温め、体内の余分な水分をとる
乾姜は生姜よりも体の内側から温める働きがあり、身体の表面を温め寒邪をはらう働きは生姜の方が優れています。
漢方処方の中での役割
乾姜が配合されている処方は、大建中湯、人参湯、小青竜湯などがあります。大建中湯は、西洋医療でも使用されていることが多く、腸閉塞の再発予防や腹部膨満感、便秘などに使われます。
小青竜湯は、花粉症に伴う鼻水・くしゃみの対策として主に使用されています。効能としては五臓の肺を温めで肺の冷えを改善することで鼻水やくしゃみを抑えていきます。
生姜は、使用されている処方が多くその配合の理由としては、①他の生薬の毒性を緩和する ②他の生薬の働きの補助 ③生姜の効能である胃腸のはたらきを活発にし、嘔吐を止める働きなどがあげられます。
漢方処方は、2.3種類の生薬が組み合わされたものから20種類以上の生薬を組み合わせた処方があります。ひとつひとつの生薬に個性はありますが、他の生薬と組み合わさることでより自分の個性が引き出たり、他の生薬の個性を高めたり、個性が強くならないように抑えるなど、漢方処方の生薬の組み合わせには様々な意味合いがあります。
その為、漢方薬同士でも組み合わせてよいものから、組み合わせることで良さを打ち消してしまう場合、却って悪さをしてしまう場合もありますので漢方薬を服用の際には漢方の専門家にご相談ください。
生姜の仲間
ショウガ科の多年草の植物の仲間で有名なのが「ウコン」。お酒が好きな方やカレーが好きな方は聞いたことや服用したことがあると思います。ウコンは健康食品として健康飲料や粉末が販売されています。
ウコンの期待されている効果としては、血行促進や黄疸を解消する作用があるため肥満体質やお酒をよく飲まれる方、高血圧や動脈硬化が心配な方の健康補助食品としてお勧めです。
そのほか、莪朮(がじゅつ)という生薬があります。別名で紫ウコンと呼ばれるように、ウコンの根茎が黄色に対して莪朮は薄紫色をしています。
莪朮も健康食品として使用されていますが、恵命我神散(けいめいがしんさん)(当店ではお取り扱いがございません)というお薬が有名でこれには、莪朮の他、真昆布末と添加物としてウコン、生姜も配合されショウガ3兄弟(勝手に命名)が配合され作られています。
ショウガ科の仲間は他にも観葉植物や香辛料として多く存在しているようです。
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