いきいき元気 第1回「未病先防」

いきいき元気 第1回「未病先防」

平成11年4月から平成12年2月まで「週刊読売」に見開きで連載された「中医師によるやさしい中医学講座 いきいき元気血液健康学」と、平成14年に「週刊読売」の後継誌である「YomiuriWeekly」に紹介された三編の「丹参(たんじん)」や丹参製剤についての原稿をまとめた小冊子より、ピックアップしてご紹介いたします。

原稿を執筆されたのは、当時来日中であった北京首都医科大学中医学元教授 叢法滋先生(そうほうじ先生)。先生は循環器病をご専門とされ、最新の西洋医学情報にも造詣が深く、中医学的な瘀血(おけつ)の考え方が西洋医学による活性酸素や免疫についての考え方と重なる部分が多いことを指摘し、中医学の活血化瘀(かっけつかお)の対策法が現代人の健康を救う重要な医療技術であることを強調しています。

15年以上も前に執筆された情報ですが何度読み返しても「そうだな」と考えさせられ、そのままの文章を掲載することはいろいろと問題があると考えましたので、私が咀嚼してなるべく多くの方にお伝えできれば幸いです。

第1回「未病先防」

中国最古の医学書「黄帝内経」には

「聖人は己病を治さず未病を治す」

と書かれています。これは「聖人とは、すでに病気にかかっている人は治癒しない、完全に病気になってしまう前に治療するものである。」つまり、病気の人を治すのではなく、病気になる一歩手前の「未病」の人を治すのが名医であるといっています。

病気にかかる前に防ぎ、すでに病気にかかってしまっている場合は悪化を防ぐ。

が健康を維持する、病気と向き合う中医学の一貫した考え方です。

健康とは

1978年9月12日 WHOの「アルマ・アタ宣言」の中で「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり単に疾病のない状態や病弱でないことではない」と示し、病気を予防することが大切であることが伝えられました。

健康について考えるときに私がいつもお客様にお話しているのが「血気盛ん」という言葉です。中医学では身体を構成している要素を「気血水」としていますが、健康な状態とはその「気血」が充実して躍動している状態であると考えています。

この「気血」は身体的な健康だけではなく精神面の健康にも携わっているため、血気盛んというのは「身体的・精神的に充実している状態である」と解釈することができます。そのため、どのような疾患であれ、どんな精神的な悩みであっても「気血」を充実させ正常に働かせることを基本的な目標としています。

健康診断や様々な検査で異常が見つからないが、身体的・精神的に苦痛を感じている状態は「未病(病気の一歩手前)」です。西洋医学では、未病の方の治療ができません(合併症予防はできますが)。それができるのは漢方薬や食養生、鍼灸など東洋医学です。

身体や精神にいつもと違う状態が起こっているのは、身体からの悲鳴・信号なのです。身体からの訴えに耳を傾け、認知して適切に対処することで悪化を防いでいきましょう。

不正袪邪

「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」で病気に打ち勝つ

以前にも、ブログでご紹介させていただいた内容ですが、こちらでも簡単にご紹介します。

中医学では病気になる原因の一つに「邪気(じゃき)」、身体を守る要素を「正気(せいき)」と考えています。悪者が「邪気」で、正義の味方が「正気」と考えてください。

病気になるのは「邪気」が身体に侵入、あるいは内部から発生して「正気」と戦って勝っている状態です。通常ならば「正気」は必ず勝つシナリオですが、「邪気」がいつもよりも強い場合や「正気」が減少していて「邪気」を追い払うことが困難な場合に「邪気」が勝って病気となるのです。

そのため、中医学では「正気」を充実させ「邪気」を払いのける身体の状態を維持することが大切であると考えています。

薬を飲んでるから大丈夫?

降圧剤、血糖降下剤、睡眠薬、安定剤など症状・状態を安定させているから大丈夫と考えていませんか?

安定しているのはお薬のおかげであって病気が治っているのではないことを理解してください。少し悪い言い方になるかもしれませんが、お薬で病気をごまかしているにすぎないのです。

もし、西洋薬で病気を改善したのであれば、降圧剤を飲み続ける必要があるのでしょうか。やめるとほとんどの方が血圧が上がるため、お薬をやめることができません。つまり高血圧は治っていないのです。

動脈硬化や心筋梗塞などの2次被害を防ぐためには降圧剤は大切です。でも服用しているから大丈夫と高を括ると悪化させる要因が改善されていない限り、必ず悪くなります。

身体に表れている症状や精神状態を冷静に見つめて、これから起こる病気をしっかり防ぐことを考えていきましょう。