いきいき元気 第6回 現代人を救う「丹参(たんじん)」
「人は血管から老いる」といいます。そのため、血液サラサラや血管力など血液の粘度や血管の強さそして柔軟性が大切であることは広く知られているところです。
漢方薬の原料である「生薬(しょうやく)」は、後漢(西暦25年~220年)の時代に記された薬物学の原典「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」に365種が収載されています。
その中から、血管や血液の健康管理に役立つ生薬「丹参(たんじん)」についてご紹介いたします。
上品
神農本草経には、効能に基づいて上品・中品・下品に分類され、上品は「いくら服用しても、また長期服用しても、からだに害がないのはもちろんのこと、心身を軽やかにして、エネルギーを増強し、老化のスピードを遅らせ寿命を延ばせるもの」とされています。
「丹参(たんじん))」はもちろん”上品”にランクされ、血液を補い、血行を良くし、鎮痛・鎮静・精神安定などの作用があり、婦人病を中心に幅広く用いられてきました。
四物湯に匹敵
「当帰・芍薬・センキュウ・地黄」の4種類で構成された漢方処方「四物湯(しもつとう)」。イスクラ婦宝当帰膠Bにも含まれ、婦人病の聖薬として有名ですが、丹参の効果は、単独でも四物湯に匹敵するといわれています。
血管を広げ、血の汚れを改善
丹参は、様々な大学の先生方の研究により様々な効能が報告されています。その中の主なものをご紹介いたします。
①動物実験によって、丹参抽出液には心筋の収縮を抑制し、エネルギーの消耗を減少させる作用のあることが確認されています。つまり心臓への負担を軽減させるということです。
②冠状動脈を拡張し、冠状動脈の血流量をふやす。
冠状動脈とは、心臓自体に酸素や栄養を運ぶ大切な血管のことです。
③狭心症と心筋梗塞に効果。
これらのことから、丹参には冠状動脈を拡張して血液量を増やす作用があるので中医学では心臓病の治療や予防に用いています。
④微小循環を改善
血管は大動脈から枝分かれして細い動脈となり、最終的には毛細血管となって身体の末梢部の細胞を潤しています。丹参はこの末梢の血行も改善してくれるので、血管の抵抗を軽減することができます。
⑤腎臓動脈の血流量を増加させ、ある程度の血圧降下作用を持っているので、高血圧の治療に役立つ。
⑥血液中の脂肪分を低下させる
動脈硬化が高血圧や脂質異常症によって促進されるのはご存じのとおりです。丹参には血液中のコレステロールや中性脂肪を除去する作用もあり、降圧作用とあいまって、動脈硬化の予防と改善に力を発揮します。
⑦血液の粘度を下げ、赤血球の流動性をよくする
⑧血液凝固を防ぐ作用
血液に対する影響として最も重要なのが、血液を固まりにくくする作用です。血液の凝固は、血液中の血小板という成分の凝集によって起こります。丹参にはこの血小板の凝集を抑える作用があるので、血管を詰まらせる心臓病や脳梗塞の元凶となる血栓の形成を抑制します。
まとめ
丹参は、単独で使用することが少なく、他の製剤の主要な薬剤として使用されその働きを十分に発揮します。
丹参を用いた製剤には、心臓や血管に働くだけでなく、老化抑制作用、糖尿病改善作用、脳虚血による学習・記憶障害の改善作用、コレステロール改善作用など様々な働きが証明されています。
「人は血管から老いる」
血管が丈夫であることは、細胞の隅々まで血液が行き渡り、大切な酸素や栄養を運び老廃物を回収する働きが十分に行われるということです。
健康で元気な生活のためにも「丹参」は大切な生薬だということがわかります。
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