更年期障害と腎

更年期障害と腎

更年期障害

男女ともに性ホルモン分泌量の低下が原因となって起こる自律神経失調症に似た症候群を「更年期障害」といいます。

年代的には、男女ともに40歳を過ぎたあたりから、身体症状・精神症状があらわれてきます。
原因となるホルモンは、女性では卵胞ホルモンであるエストロゲン、男性では睾丸ホルモンであるテストステロンです。

男性更年期障害があまり一般的でないのは、女性と比べホルモンの分泌量の変化が緩やかであり、心身の状態の変化が老化現象と認識されてしまうからです。

主な症状

(身体症状)
のぼせ・ほてり、冷え、動悸・息切れ、頭痛・めまい、耳鳴り、発汗異常、血圧の変動、胃腸の働きの乱れ、疲労倦怠
女性では生理不順、男性では男性機能不全(ED)
(精神症状)
イライラ、不安、無気力、うつ、不眠

腎と更年期

中医学では、人の成長・発育、生殖機能、老化などと関係が深い五臓は「腎」であり、更年期は「腎」の衰えであると考えています。

「腎」には、生命の根本となる「精」を貯蔵しています。
「腎」に貯蔵されているため「腎精(じんせい)」と呼ばれ、両親から受け継いだ「先天の精」と飲食物から作られた「後天の精」の補充で「腎精」を維持しています。

腎精の働きには「腎陽」と「腎陰」の2つありそれぞれ
●腎陽:体の各臓腑や組織、器官を働かせ、からだを温める
●腎陰:体の各臓腑や組織、器官を滋養し、潤し、余分な熱を冷まします

更年期になり「腎」の機能が衰え、「精」が不足すると、腎陽・腎陰が不足し、陰陽のバランスも乱れることから、前述した症状があらわれてきます。

腎のその他の働き

「腎」は骨・骨髄とも深い関係があるため、「腎」の衰えは、骨がもろくなる(骨粗しょう症)、足腰が弱くなる、腰が曲がる、記憶力の低下、歯がもろくなるなどの症状が、「髪」「耳」とも関係しているため、白髪、抜け毛、耳鳴り、難聴、めまいなどの症状があらわれやすくなります。

不眠と腎

睡眠と深い関係のある五臓は「心」です。

心は「血」の巡りを管理し、心の陽気が腎陰を温め、
腎は「精」を貯蔵し、腎陰が心の陽気が高ぶるのを抑える関係にあります。
つまり、互いにアクセルとブレーキの役割となります。

「腎(陰)」の衰えは、心の陽気の高ぶりを抑える働きの低下になりますので、動悸や不眠が起こりやすくなるのです。

厚生労働省の行っていた(ここ数年コロナで中止)、「国民健康・栄養調査」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html)の中で「睡眠の状況」に関する調査では、年齢とともに、寝付きが悪い・途中で目が覚める・朝早く目が覚めるなどの悩みが増える傾向があることがわかります。この結果からも加齢による「腎」の衰えが睡眠の質に影響を与えていると考えられるのです。

この調査結果からは、20代でも睡眠の質が悪い調査結果となっていますが、原因として仕事が30%、就寝前のスマホ・ゲームやメールに夢中になることで睡眠が妨げられていると40%以上が回答しています。

睡眠の質の低下は「心」の乱れであり、「心」と「腎」の関係から「心」の乱れや衰えが「腎」を乱す結果、若年層での生殖機能の乱れ(生理不順・不妊・月経困難・精子運動率低下・性機能不全)の原因の一つとして、睡眠の質の低下が考えられます。「腎精」の衰えは加齢だけではなく生活習慣の乱れも原因となるのです。

腎精を補う

腎精を補う漢方薬を「補腎薬(ほじんやく)」といいます。
〇腎陽の不足を「腎陽虚」
〇腎陰の不足を「腎陰虚」
と区別し、体質、症状、舌の状態からどちらがより機能低下を起こしているのかを判断していきます。

●腎陽虚に対する代表的漢方薬:八味地黄丸、牛車腎気丸
●腎陰虚に対する代表的漢方薬:六味地黄丸、杞菊地黄丸、知柏地黄丸、麦味地黄丸

更年期障害の症状や体質に合わせて、腎を補うだけではなく、腎の機能を低下させてしまう気血の不足を補ったり、巡りを改善したり、飲食物から精を作る過程を整えたりと様々な方法を併用することが必要です。

自分に合った漢方薬を服用するためにも、症状体質をくわしく相談して漢方薬を選んでもらいましょう。

更年期は避けることのできないものですが、おかしいなと感じたら早めに対処することで、穏やかな更年期を過ごすことができるのです。
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