更年期障害と腎
更年期障害
男女ともに性ホルモン分泌量の低下が原因となって起こる自律神経失調症に似た症候群を「更年期障害」といいます。
年代的には、男女ともに40歳を過ぎたあたりから、身体症状・精神症状があらわれてきます。
原因となるホルモンは、女性では卵胞ホルモンであるエストロゲン、男性では睾丸ホルモンであるテストステロンです。
男性更年期障害があまり一般的でないのは、女性と比べホルモンの分泌量の変化が緩やかであり、心身の状態の変化が老化現象と認識されてしまうからです。
主な症状
心は「血」の巡りを管理し、心の陽気が腎陰を温め、
腎は「精」を貯蔵し、腎陰が心の陽気が高ぶるのを抑える関係にあります。
つまり、互いにアクセルとブレーキの役割となります。
「腎(陰)」の衰えは、心の陽気の高ぶりを抑える働きの低下になりますので、動悸や不眠が起こりやすくなるのです。
厚生労働省の行っていた(ここ数年コロナで中止)、「国民健康・栄養調査」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html)の中で「睡眠の状況」に関する調査では、年齢とともに、寝付きが悪い・途中で目が覚める・朝早く目が覚めるなどの悩みが増える傾向があることがわかります。この結果からも加齢による「腎」の衰えが睡眠の質に影響を与えていると考えられるのです。
この調査結果からは、20代でも睡眠の質が悪い調査結果となっていますが、原因として仕事が30%、就寝前のスマホ・ゲームやメールに夢中になることで睡眠が妨げられていると40%以上が回答しています。
睡眠の質の低下は「心」の乱れであり、「心」と「腎」の関係から「心」の乱れや衰えが「腎」を乱す結果、若年層での生殖機能の乱れ(生理不順・不妊・月経困難・精子運動率低下・性機能不全)の原因の一つとして、睡眠の質の低下が考えられます。「腎精」の衰えは加齢だけではなく生活習慣の乱れも原因となるのです。
腎精を補う
腎精を補う漢方薬を「補腎薬(ほじんやく)」といいます。
〇腎陽の不足を「腎陽虚」
〇腎陰の不足を「腎陰虚」
と区別し、体質、症状、舌の状態からどちらがより機能低下を起こしているのかを判断していきます。
●腎陽虚に対する代表的漢方薬:八味地黄丸、牛車腎気丸
●腎陰虚に対する代表的漢方薬:六味地黄丸、杞菊地黄丸、知柏地黄丸、麦味地黄丸
更年期障害の症状や体質に合わせて、腎を補うだけではなく、腎の機能を低下させてしまう気血の不足を補ったり、巡りを改善したり、飲食物から精を作る過程を整えたりと様々な方法を併用することが必要です。
自分に合った漢方薬を服用するためにも、症状体質をくわしく相談して漢方薬を選んでもらいましょう。
更年期は避けることのできないものですが、おかしいなと感じたら早めに対処することで、穏やかな更年期を過ごすことができるのです。
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