漢方で夏の暑さ対策

漢方で夏の暑さ対策

暑さが厳しくなる夏には、熱中症や夏バテに注意が必要な時期となります。
近年は、コロナの影響もあり「マスク生活」が続いていますが、このことが熱中症や夏バテのリスクを高めてしまうので注意が必要です。
夏の暑さや体調不良を乗り切るための漢方の知恵をご紹介いたします。

暑邪(しょじゃ)

夏の暑さによって引き起こされる病変を「暑邪」といいます。
外気温が高くなると発汗が起こりますが、中医学で汗の中には
「津液(しんえき)」と「気(き)」
が含まれているため、発汗によりこれらが消耗されてしまいます。

「津液」「気」が消耗すると、潤いやエネルギーが不足するため
・のどの渇き
・冷たいものがほしくなる
・ほてり
・尿量減少
・倦怠感
・めまい
・発熱
・頭痛
などの不調が起こりやすくなります。

対策としては・・・
汗が出続けるのは身体に熱がこもっているためなので、体内の熱を冷ますことがポイントとなります。

【暑邪を発散させて身体の熱を冷ます食材】
・スイカ
・冬瓜
・きゅうり
・トマト
・れんこん
・そば
・菊花茶
などです。
一度に食べ過ぎると胃腸が冷えてしまい、それによって食欲不振、倦怠感が引き起こされますので、自分の体格や体質に合わせた適度な量を補給しましょう。

また、普段からこまめな水分分補給と、栄養補給が大切です。
発汗が多い場合には塩分も適度に補給しましょう。

湿邪(しつじゃ)

暑邪の影響から冷たいものの摂取が増えてくると「脾胃」に負担がかかり、外気の「湿邪(湿気)」とともに身体の中で「湿邪」が発生し、
・むくみ
・食欲不振
・からだがだる重い
・下痢
・腹痛
・吐き気
・頭重
などの症状が引き起こされてしまいます。

胃腸の不調を感じた場合には、身体の中にたまった「湿」を取り除くことが大切です。
対策は・・・
【湿を取り除き、脾胃を整える食材】
・しょうが
・ねぎ
・みょうが
・シナモン
・大根
・サンザシ
・陳皮

胃腸の不調を感じた時の水分補給は温かいもの、食事は消化の良いものを心がけてください。

漢方薬で対策

熱中症・夏ばて・夏の体調不良でよく使われる代表的な漢方薬をご紹介します。

生脈散

「生脈散」は「津液」「気」を補う代表処方で、配合されている「五味子(ごみし)」には、津液を補いながら汗を止める働きを持っているため夏のスポーツの時や外出、夜間の脱水対策としても使用されます。また、配合されている「麦門冬」には、咳にも効果的なので、慢性の咳、慢性気管支炎などにも用いられます。
「気」(元気)と「陰」(潤い)が不足しやすい方(特に女性と高齢者)には、年間を通して養生できる中医処方です。

体調が乱れる前から、生脈散を服用していると夏を元気に過ごすことが期待できます。

補中益気湯・参苓白朮散

補中益気湯は、夏の疲れだけでなく、普段から疲れやすい方、胃腸が弱い方、自律神経が乱れやすい方、胃下垂がある方にお勧めの処方。
夏バテ対策として、煎じ薬で「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」を調合するのですが、エキスが欲しいという方に生脈散と合わせて服用いただいています。

参苓白朮散は、胃腸障害の中でも下痢症状が中心にある時に使用します。慢性的に便が緩い方には特におすすめの中医処方。胃腸が弱い皮膚病の方や、他の漢方薬で下痢をしてしまう場合などにも使用します。

五苓散

湿による尿量減少や口渇に対する代表処方。
湿によって体内の水分バランスが乱れている状態を利尿という形で下痢・むくみ・口渇を緩和させていきます。
夏場の発汗過多や二日酔いでの軽度の脱水、冷飲食による下痢の症状緩和として用いられます。利尿促進作用があるため、脱水時には使用しないようにしましょう。

藿香正気散(かっこうしょうきさん)

頭痛、発熱・悪寒、下痢、倦怠感など夏の風邪に使用する代表処方。

その他、体調や体質に合わせて漢方薬を調整いたしますので、お気軽にご相談ください。