【漢方処方解説】加味逍遥散料

【漢方処方解説】加味逍遥散料

月経不順や更年期障害に効果のある漢方薬は様々ありますが、その中から「加味逍遥散料」について、
◆どんな人にお勧めか
◆服用する上での注意・副作用
◆同じような名称の漢方薬との違い
について解説していきます。

こんな症状でお悩みの方に

「加味逍遥散料」の煎じ薬の効能または効果は以下の通りです。

「加味逍遥散料」
体力中等度以下で,のぼせ感があり,肩がこり,疲れやすく,精神不安やいらだちなどの精神神経症状,ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:
冷え症,虚弱体質,月経不順,月経困難,更年期障害,血の道症,不眠症 

中医学では、和解剤に分類され中医処方解説(伊藤良・山本巌監修、神戸中医役研究所編著)では、

「逍遥散」
1)ゆううつ感・いらいら・怒りっぽい・頭痛・胸脇部が張って苦しい・脇痛・腹痛などの肝気鬱結(※1)の諸侯に、頭がふらつく・頭がボーとする・目が疲れる・四肢のしびれ感・皮膚につやがない・動悸・眠りが浅い・多夢などの血虚(※2)の症候と、食欲がない・疲れやすい・倦怠感・浮腫・下痢傾向あるいは下痢と便秘が交互に来るなどの脾虚(※3)の症候をともなうもの。女性では、月経痛・月経前に乳房が張る・月経周期が一定しない・月経量が少ない・あるいは無月経などがみられる

2)精神的緊張や情緒変動とともに発生する、腹痛・腹鳴・下腹部の下墜感・下痢などの症候で、甚しければ1日に何度も生じる

「加味逍遥散」
逍遥散の適応症に、いらいら・のぼせ・ほてり・口渇・頭痛・微熱・ねあせあるいは出血などの熱症(※4)を伴うもの

【用語解説】
(※1)肝気鬱結(かんきうっけつ):五臓の肝はストレスの緩和・調和の働きがあり、その働きが停滞している状態。つまりはストレスが多く蓄積あるいはストレスが許容以上大きく心身に負担となっている状態
(※2)血虚(けっきょ);気血水の「血」が不足する状態を血虚といいます。「血」は血液そのものの働き・月経調整と精神の調和に関係してます。
(※3)脾虚(ひきょ):脾の働きが弱っている状態。五臓の脾は、飲食物の消化・吸収・運搬を管理し、身体に必要な気血水を作っています。
(※4)熱症(ねっしょう):熱症状のこと、ほてり、熱感などの症状

血の道症とは

月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性ホルモンの変動に伴って、イライラや不安、うつなどの精神神経症状や頭痛、腹痛、便秘、食欲不振、めまい、むくみなど症状が起こる状態を「血の道症」と言います。

服用者の目安

加味逍遥散の特徴は、
月経調整作用のある「当帰(トウキ)」「芍薬(シャクヤク)」
精神的ストレスを緩和する「柴胡(サイコ)」「薄荷(ハッカ)」
血行促進作用のある「牡丹皮(ボタンピ)」「芍薬」

の配合です。

これらのことから、普段から血行が悪く、ホルモンの変化や精神的ストレス・自律神経の変化によって引き起こされる様々な症状に効果が期待できる漢方薬です。
(身体症状)
・頭痛
・肩こり
・めまい
・耳鳴り
・倦怠感
・冷え
・不眠
(精神症状)
・イライラ
・不安
・神経過敏
(婦人科症状)
・月経不順
・無月経
・多膿疱性卵巣
・子宮内膜症
・子宮筋腫
・生理痛

立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花

昔から美しい女性のことを「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」と表現すますが、加味逍遥散には芍薬と牡丹(皮)が使用されているため、この処方が婦人の悩みによく使用されています。男性が服用しても問題ありませんが・・・・・。
また、配合されている当帰は「女性の宝」「子宝生薬」として、女性の美容と健康に欠かせない生薬です。

ホットフラッシュ

服用者の目安として、ホットフラッシュ(突発的なほてりと発汗)がありますが、配合されている山梔子(さんしし)・牡丹皮がその症状に対して効果があります。

服用する上での注意・副作用について

加味逍遥散を服用する場合、注意しておくことがあります。

注意するべき副作用

①偽アルドステロン症、ミオパチー:
低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがある。
症状:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
②肝機能障害:AST(GOT)、ALT(GPT)、Al‐P、γ‐GTP 等の著しい上昇を伴う肝機能障害。
症状:発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる
③腸間膜静脈硬化症:長期服用により、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満等が繰り返しあらわれる

これらの症状があらわれた場合には服用をすぐに中止し、医師または薬剤師に相談してください。

その他の副作用

・下痢
・吐き気
・嘔吐
・胃部不快感
・食欲不振
・発疹
・発赤
・かゆみ
等があらわれることがあります。その場合すぐに医師または薬剤師にご相談ください。

解説

①の偽アルドステロン症、ミオパチーは、多くの漢方薬に配合されている「甘草(カンゾウ)」が原因として発生する副作用です。発生原因としての多くが甘草の服用量が多くなっていることが原因となります。

その発端の一つは、「漢方薬の多剤服用」。よく見受けられるのが、基本となる漢方薬に、こむら返りがあるから「芍薬甘草湯」を1日3回同時に服用させているケースや数種類の漢方薬をすべて満量で処方しているケースです。

その他、甘草は甘味料としても食品に添加されていることで、漢方薬と食品で摂取する甘草成分が体の許容を超えてしまうことで発生します。

複数の漢方薬を服用する場合には、その配合量やバランスを考慮する必要があるため、漢方処方の生薬構成を熟知している専門家より処方していただくことをお勧めします。

芍薬甘草湯は、こむら返りに即効性のある漢方薬です。予防として使用することもありますが、漠然と1日3回指示された通り服用することをおやめください。副作用の発現が危惧されます。あくまで一時しのぎ、頓服としてご利用ください。

③腸間膜静脈硬化症は、含有されている「山梔子(サンシシ)」の長期間服用が原因となります。
日本漢方生薬製剤協会「漢方薬の副作用・安全性の情報」(https://www.nikkankyo.org/seihin/seihin2.htm)で詳しく確認できますが、

・漢方薬服用歴の有る患者は147例(87.0%)、そのうちサンシシ含有漢方薬の服用患者は119例(81.0%)
・サンシシ含有漢方薬の服用期間:5年以上92.6%、10年以上69.5%の患者が服用

と分析されています。
このことが注意喚起され、添付文書の改訂が平成30年2月13日に指示されています。このことからも、これまでこの副作用が全くなかったといえませんが、近年の漢方薬の使用方法や病名処方に問題があるのではないかと①のことも含め考えさせられます。

これらの副作用があらわれた場合にはすぐに服用を中止し、医師または薬剤師にご相談ください。

類似漢方処方解説

加味逍遥散料には類似処方があります。

加味(かみ)逍遥散とあるので、「逍遥散」という処方に何かが加味されているということです。
加味されている生薬は、「山梔子」「牡丹皮」の2つ、これらを加えることで、逍遥散の症候にのぼせやほてりがある場合には、「加味逍遥散」が適しているということです。

さらに、加味逍遥散料加川芎地黄(別名:加味逍遥散料加四物湯)は、加味逍遥散に「川芎」「地黄」を加えた処方であります。
これら2つの生薬を加えることにより、加味逍遥散の症候に、四物湯の適応症状がある場合に用いられます。

四物湯
体力虚弱で,冷え症で皮膚が乾燥,色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの次の諸症:月経不順,月経異常,更年期障害,血の道症,冷え症,しもやけ,しみ,貧血,産後あるいは流産後の疲労回復
 

中医学的解説

逍遥散は、普段より血色が悪い傾向のある方で「気血両虚(※5)」の傾向があり、ストレスや精神疲労、ホルモンバランスなどの変化によってあらわれる「イライラ、月経不順、月経痛、PMS、肩こり・頭痛、動悸、不眠、ふらつき、耳鳴り」など様々な症状を、気血の巡りを安定させ、精神の緊張をほぐし、リラックスさせることで症状を起きにくい状態にしていこうという漢方処方です。

加味逍遥散は、症状にほてりや熱感、皮膚のかゆみなど「熱」症状が加わっている場合に適用され、加味逍遥散料加川芎地黄は、さらに「血虚(※2)」が加わっているか、その兆候が多く見受けられる場合に適応となります。

(※5)気血両虚(きけつりょうきょ)とは、気血が普段よりも不足している状態で、気は元気の素、血は血液や自律神経・ホルモンの調整の働くためそれらが不足している傾向のある方。

これらの処方の選定とする目安は、和解剤というのが基本にあるので、ストレスや精神疲労、自律神経の過敏状態が原因として起こる不定愁訴(特に婦人科系)がある場合には、これらの処方の選定の基準となります。

体質に合った漢方薬を服用してください。

漢方薬は本来、病気の起こり(発病までの流れ)から処方を選定することを基本としているため、現在の症状や病名だけで漢方薬を選ぶことはとても乱暴な方法です。漢方処方の構成や適応、類似処方との関係性、処方生薬の性質(寒熱温涼・五味・帰経)を熟知して選定してもらわないと間違った漢方薬を服用し続けることで副作用の発現が高まってしまいます。

漢方薬を服用する際には必ず漢方処方・生薬構成・中医学的効能を熟知している専門家より選んでもらってください。