漢方・中医学から診る「うつ病・不安神経症・パニック症・適応障害・双極性障害・不眠症」の漢方治療

漢方・中医学から診る「うつ病・不安神経症・パニック症・適応障害・双極性障害・不眠症」の漢方治療

うつ病・不安神経症・双極性障害・パニック症・不眠症・適応障害など様々な「こころ」が関係する悩みがあります。

漢方医学・中医学では、これらの疾患をどのように捉えて、改善のためにはどのような治療があるのかをご紹介いたします。お悩みの症状・体調が回復する一助となれば幸いです。

もう少し詳しく知りたい・話を聞きたいという場合は、メールmail@minamino-kanpou.com)又は電話でお気軽にご相談ください。
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「こころ」と「心」

現代医学では「こころ」と言っているのは心臓の心ではなく、脳にある偏桃体や海馬といった大脳辺縁系という所で、情動の表出、食欲、性欲、睡眠欲、意欲、などの本能、喜怒哀楽、情緒、神秘的な感覚、睡眠や夢などをつかさどっており、そして記憶や自律神経活動に関与しています。

特に扁桃体は、神経細胞の集まりで情動反応の処理と短期的記憶において主要な役割を持ち、情動・感情の処理、直観力、恐怖、記憶形成、痛み、ストレス反応、特に不安や緊張、恐怖反応において重要な役割を担っています。

一方、中医学では五臓の「心」が偏桃体と同様に意識・感情・思考などの精神的な活動を管理する働きを担っています。

漢方基礎理論:五臓「心」

心血の不足(心血虚)

中医学では、五臓の「心」の精神的活動を管理する働きの低下が不安神経症・うつ病・双極性障害・パニック症・不眠症・適応障害などを引き起こしている原因の一つと考えます。この精神活動を管理する働きが低下している状態で多く見受けられる状態が「心血虚(しんけっきょ)」と言われる心血の不足。

心血が充実しているときには、食欲、意欲、性欲、睡眠欲、集中力、記憶力があり、自律神経系も整って安定している状態です。しかし、気配り、気遣いやストレス、悲しみ・悩みやショック、慢性疾患、疲労などがあるとそれにより心血を消耗していきます。

一時的な消耗は毎日の食事や睡眠、五臓の肝腎の補助によって回復いたしますが、大きな消耗や慢性的な消耗、睡眠不足が続くと、心血の補充が追い付かず、慢性的な心血不足を引き起こしてしまいます。

慢性的な心血の不足は心気の働きも低下させます。心気の不足は意欲の失調・食欲不振・性欲低下を引き起こし。心血の不足は不安感・恐怖心・睡眠障害・神経過敏を引き起こしてしまいます。

心血の不足による神経過敏・自律神経の乱れはちょっとした不安や心配にも大きく反応するようになり、心血をさらに消耗することとなります。つまり、心血不足は放置しておくと悪循環となり病状が悪化していきます。

<マズローの5段階欲求>
アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていると考案しました。ピラミッドの一番底辺にある土台が「生理的欲求」。これは生命活動を維持するために不可欠な、必要最低限の欲求を指しています。睡眠欲、性欲、食欲、物欲などが生理的欲求です。

心血不足はこの「生理的欲求」や「安全の欲求」が満たされにくい状態であると考えることができます。

養心安神(ようしんあんじん)

ポッカリ空いてしまった心の隙間は、補充してあげることで安定させていくのですが、この補充する漢方生薬の種類を「養心安神薬」と呼びます。この養心安神薬を使い心血を補う代表処方が「帰脾湯(きひとう)」です。

帰脾湯(きひとう)

【成分】
人参・茯苓・当帰・甘草・大棗・白朮・黄耆・遠志・木香・生姜・竜眼肉・酸棗仁(加味帰脾湯は柴胡・山梔子を加える)

【効能・効果】
体力中等度以下で,心身が疲れ,血色が悪いものの次の諸症:貧血,不眠症,神経症,精神不安
(加味帰脾湯:体力中等度以下で,心身が疲れ,血色が悪く,ときに熱感を伴うものの次の諸症:貧血,不眠症,精神不安,神経症)

【処方解説】
処方の中心は「四君子湯(しくんしとう)」の脾胃を整える処方(人参、白朮、茯苓、大棗、甘草、生姜)。血の不足となる原因には消耗が大きい場合と補充が少ない場合のどちらか一方あるは両方となりますが、治療の基本は血の生成を整えることにあります。そして心血を補う当帰、竜眼肉、酸棗仁、遠志をくわえることによって過度の不安、睡眠障害、自律神経の乱れなどの精神的活動を整えます。

加味帰脾湯は、帰脾湯に山梔子と柴胡を加え熱症(いらいら、ほてり、のぼせ)がある場合に使用します。

そして、体質や付随する症状によって、抑肝散、加味温膽湯、逍遥散、酸棗仁、半夏厚朴湯、苓桂朮甘湯など様々な処方を使い分けていく必要があります。
漢方薬を服用する際には、ご自分の体質や病気の流れ(体調不良までの流れ)を把握し、それに見合った漢方薬を処方していただくようにいたしましょう。

日常生活で注意すること

人は誰にでも心のどこかに隙間があります。日常生活が充実しているときにはその隙間が気にならないのですが、なにかストレスを強く感じた時や大きな悩みが生じたとき、災害や事故・犯罪など巨大な不安を感じた時にはその隙間が目立ってくるようになります。

そんな時には、誰かに寄り添っていただくことが大切です。不安感を持ちやすい方や心配性の方は誰かに頼ることが苦手な方が多いように感じます。話をするだけでもいいので、不安や心配を打ち明けて重圧を少しでも軽減するようにいたしましょう。1歩踏み出すだけで大丈夫ですよ、いつでもお気軽にご相談ください。