「衛気」を高める。風邪でもないのにくしゃみ、鼻水が・・・寒暖差アレルギー
3月末ごろから4月中旬まで、9月中旬から10月初めごろまでは、朝晩・日中の温度差が大きくなる季節の変わり目です。
人間の体温は36度5分前後になるように保たれています。気温が下がると毛穴や汗腺が塞がり熱が逃げるのを防ぎます。逆に気温が高い時には汗腺から汗を出して皮膚表面を濡らし、汗が蒸発する時に身体から熱を奪うことで体温の上昇を防いでいます。
このように体温をコントロールするのに皮膚が大きな役割がありますが、皮膚が自発的に行っているのではなく脳の指示によって自律神経を通して皮膚表面が変化しているのです。
もっと詳しく知りたい方は、名古屋大学大学院医学系研究科 統合生理学サイト「体温調節の仕組」がお勧めです
寒暖差アレルギー
寒暖差アレルギーは、季節の変わり目にくしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が現れるもので、大きな温度の変化に対して鼻の粘膜の血管が広がりむくむことがきっかけとなる鼻炎の種類の一つでアレルギーの病気ではありません。
西洋医学では寒暖差アレルギーを血管運動性鼻炎とも呼んでいます。
健康な人の場合、約7度までの温度変化であれば適切に対応できるようですが、7度以上の温度差となると上記の寒暖差アレルギーが発症しやすいと考えられています。
この反応は、アレルギー物質が原因ではなく自律神経バランスの乱れで起こしているため、ストレスや疲労、睡眠不足や生活習慣の乱れによっても同様の症状を引き起こすことがあります。
寒暖差アレルギーの対策は、温度変化を少なくして血流をよくすることが大切です。その為にも外出の際には外出先の気温、帰宅時の気温などをチェックして上着の用意をいたしましょう。そして、自律神経を整えておくことが大切です。
衛気(えき)
鼻の粘膜や皮膚には「衛気」という身体を「外敵(ウイルス、細菌、花粉、ホコリ、化学物質、外気温の変化など)」=「邪気」から守る働きがあります。
しかし、不規則な生活や生活習慣の乱れ、睡眠不足、ストレスの蓄積、自律神経系の乱れによって「衛気」の働きは低下してしまいます。その為、外気温の変化が7度以下であっても体温調整がうまくいかなくなり寒暖差アレルギーが引き起こされます。
この「衛気」の低下は邪気から身を守る力が弱まるだけではなく、身体の内側から必要なものが漏れ出ないようにする力も低下してしまいますので疲労感、少し動くと汗が出る、不正出血といった症状も起こりやすくなります。
衛気を高める
衛気の不足を「衛表不固」と表現し、気虚の一種となります。その為、気虚を改善させる「補気剤」には衛気を高める働きがあります。
【補気剤】
補中益気湯
玉屏風散・イスクラ衛益顆粒
六君子湯
参苓白朮散
黄耆建中湯
など
この中でも特に玉屏風散(ぎょくへいふうさん)・イスクラ衛益顆粒(えいえきかりゅう)は「衛気虚」に用いる処方です。
玉屏風散とは、身体の表面に屏風を立てて、外からの邪気を防ぐ効果があるというのが名前の由来で免疫機能を回復させる切り札として中国で広く使われています。
花粉やウイルス、ハウスダスト、ストレスなどの外邪から身を守る衛気の働きが強くなれば、アレルギー反応、サイトカインストームなどの過剰防衛反応が起こりにくくなり、正常な対処によって身体を安定した状態へ導いてくれます。
また、衛気が強くなるということは自律神経系の安定にも関わるため、自律神経が乱れやすい方には衛気を補うことが養生につながります。
治療の秘訣としては、衛気を補うだけではなく衛気が弱くなっている原因である体質も一緒に整えていくことが大切です。
衛気を整え、季節の変わり目や感冒流行期を乗り越えましょう
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