肝斑・マスク肝斑に効果のある漢方薬
夏場に紫外線によって悪化しやすい「肝斑」、コロナ感染対策でのマスク生活が原因の「マスク肝斑」について、中医学から診る原因と漢方薬による対策方法についてご紹介いたします。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、30歳から50歳くらいまでの女性に発症しやすく、主に頬骨周囲に左右対称で境界がはっきりしている淡褐色のシミ。その他に、口回り・こめかみから頬にかけて・ほほの脇にできるタイプの肝斑などもあります。
肝斑は、紫外線によって夏場に悪化し、冬場には軽減していますが、なぜできるのかが明確に分かっていません、ただし約42%くらいの女性は妊娠をきっかけとして発症し、経口避妊薬の服用や閉経後のホルモン補充療法によって発症する場合があること、更年期に発症し閉経後は薄くなったりすることがあるので、女性ホルモンが深く関与しているのではないかと考えられています。
シミ・肝斑のできる仕組み
皮膚は紫外線によって、メラノサイト(色素細胞)が活性化されメラニンを生成し皮膚が茶色に見えるようになります。通常は皮膚の新陳代謝(ターンオーバーは約4週間)によって、日焼けなどは元の皮膚の色に戻るのですが、皮膚の新陳代謝が低下した状態であったり、メラニンを過剰に作り続けるようなサイクルができてしまうといつまでも元の皮膚の色に戻らない状態となってしまいます。これがシミとなります。
肝斑は、紫外線のほかに女性ホルモンや外部からの刺激、ストレスなどによって発症していますが、これら様々な刺激が表皮細胞(ケラチノサイト)に影響を与えそこからプラスミンやプロスタグランジンが生成されます。これらは炎症物質とも言われ、これらがメラノサイトを刺激することでメラニンを過剰に産生していると考えられるので、肝斑やシミは慢性炎症であると考えられいます。
マスク肝斑
近年、「マスク肝斑」という言葉を耳にします。これは皮膚がマスクによって擦れることによってその摩擦熱や傷により炎症を引き起こし、これが肝斑を悪化させると考えられています。
感染防止としてマスクはエチケットとなっていますが、声を発しない場面・外を歩いている間はマスクを外してあげましょう。
中医学から診る肝斑・シミ
漢方薬の効能に「しみ」が記載されているのが
桂枝茯苓丸・桂枝茯苓丸料加薏苡仁・甲字湯・当帰芍薬散・当帰芍薬散加人参・四物湯・加味逍遥散合四物湯、葛根紅花湯
桂枝茯苓丸
比較的体力があり,ときに下腹部痛,肩こり,頭重,めまい,のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:
月経不順,月経異常,月経痛,更年期障害,血の道症,肩こり,めまい,頭重,打ち身(打撲症),しもやけ,しみ,湿疹・皮膚炎,にきび
桂枝茯苓丸料加薏苡仁
比較的体力があり,ときに下腹部痛,肩こり,頭重,めまい,のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:
にきび,しみ,手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎),月経不順,血の道症
甲字湯
比較的体力があり,ときに下腹部痛,肩こり,頭重,めまい,のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:
月経不順,月経異常,月経痛,更年期障害,血の道症,肩こり,めまい,頭重,打ち身(打撲症),しもやけ,しみ
当帰芍薬散
体力虚弱で,冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく,ときに下腹部痛,頭重,めまい,肩こり,耳鳴り,動悸などを訴えるものの次の諸症:
月経不順,月経異常,月経痛,更年期障害,産前産後あるいは流産による障害(貧血,疲労倦怠,めまい,むくみ),めまい・立ちくらみ,頭重,肩こり,腰痛,足腰の冷え症,しもやけ,むくみ,しみ,耳鳴り
当帰芍薬散料加人参
体力虚弱で胃腸が弱く冷え症で貧血の傾向があり 疲労しやすくときに下腹部痛 頭重 めまい 肩こり 耳鳴り 動悸などを訴えるものの次の諸症:
月経不順 月経異常 月経痛 更年期障害 産前産後あるいは流産による障害(貧血 疲労倦怠 めまい むく) めまい・立ちくらみ 頭重 肩こり 腰痛 足腰の冷え症 しもやけ むくみ しみ 耳鳴り
四物湯
体力虚弱で,冷え症で皮膚が乾燥,色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの次の諸症:
月経不順,月経異常,更年期障害,血の道症,冷え症,しもやけ,しみ,貧血,産後あるいは流産後の疲労回復
加味逍遥散合四物湯
体力中等度以下で,皮膚があれてかさかさし,ときに色つやが悪く,胃腸障害はなく,肩がこり,疲れやすく精神不安やいらだちなどの精神神経症状,ときにかゆみ,便秘の傾向のあるものの次の諸症:
湿疹・皮膚炎,しみ,冷え症,虚弱体質,月経不順,月経困難,更 年期障害,血の道症
葛根紅花湯
体力中等度以上で,便秘傾向のものの次の諸症:あかはな(酒さ),しみ
これらの処方の特徴は
・『桂枝茯苓丸・甲字湯・桂枝茯苓丸料加薏苡仁』は「活血化瘀剤」
・『当帰芍薬散・当帰芍薬散料加人参・加味逍遥散合四物湯・四物湯』は「補血剤」
・『葛根紅花湯』は「清熱剤」
と大きく分類することができます。
活血化瘀剤(かっけつかおざい)
これは瘀血という血流循環の停滞や出血が起こっている状態を改善する処方。
つまりは血行を促進して皮膚に停滞している状態を改善し新陳代謝の促進と同時にホルモンバランスを整える働きもあります。
日ごろから、肩こり、頭痛、月経痛、月経不順、経血に塊が混ざる、アザができやすいなどの症状がある方は「瘀血体質」となります。
(瘀血度チェック➡)
補血剤(ほけつざい)
血の働きが悪くなる「血虚」は皮膚の乾燥、冷え、新陳代謝の低下などが起こるため「血」を補うことによって身体を整える処方。
加味逍遥散は、ストレスによる血の停滞(瘀血)も改善するため、加味逍遥散合四物湯は「活血化瘀」「補血」両方の働きを持っている処方です。
疲れやすい、貧血傾向、ストレスが多い、冷え症、月経不順、無月経などがある方は「血虚体質」となります。
(血虚とは➡)
清熱剤(せいねつざい)
炎症を鎮める働きの処方。葛根紅花湯は、鼻の頭が赤くなる赤鼻(酒さ鼻)や酒さ様皮膚炎などの皮膚の炎症を改善する代表処方。
以上のことから、中医学では肝斑・シミは「瘀血」「血虚」「炎症」が関係すると考えます。
しみと効能効果に記載してあるのは上記の処方になりますが、「瘀血」「血虚」「炎症」を改善する処方は他にも数多くありますので、あなたの体質・症状に合った漢方処方で改善・予防してください。
西洋医学では、肝斑に対してレーザー治療やトラネキサム酸などの内服や外用があり、効果も認められています。
ただし、中医学では上記のように様々な体質が発症しやすい条件を作っていると考えていますので、月経不順や月経困難症、無月経、冷え症、肩こりなどで悩まれている方は、漢方薬で肝斑と一緒に身体のお悩みも解決してあげることがおすすめです。
予防
できてしまったシミや肝斑を完全になくすことは難しいので、しっかり予防することが大切です。
予防方法についてご紹介いたします。
①UVケア
なんといっても紫外線から身を守ることは必須となります。夏でも冬でもUVケアは大切です。
UV-Aはメラノサイトを刺激し、UV-Bは炎症を引き起こすのでどちらも防ぐことが大切です。
②ストレス対策
血行不良の一番の原因はストレス、ストレスは活性酸素を発生させ、活性酸素は一酸化窒素と反応して血流を悪くさせてしまいます。
ストレスを溜めないように気を付けましょう
③糖質の取りすぎ
高血糖は血行不良を生じさせます。甘い物・糖質を摂ってはいけないのではなく一度に多く摂りすぎないことが大切です。
糖質は酸化作用がありますので、抗酸化作用のある野菜や果物などを積極的にとることをお勧めいたします。
④適度な運動
血行を促進させる働きは筋肉の運動が大切です。ストレッチやウォーキング、ヨガなど筋肉に負荷をかける運動ではなく筋肉をほぐす運動がお勧めです。
⑤適度なスキンケア
スキンケア商品についてはあまり詳しくないので、「シミ対策 スキンケア」で検索してみたりお友達に実体験を聞いて自分に合ったスキンケアを見つけて下さい。
ただし、顔の皮膚はとても繊細にできているので「マスク肝斑」でもご説明したように、皮膚は擦るだけでも炎症や傷がついてしまいます。お肌にストレスをかけないことも大切です。
女性は美容を意識すると健康にも気を遣うようになります。
ある美容学校の前に「美容には定年はありません」みたいなことが書いてあって、なるほどと感心したことを覚えています。
健康に気を遣うことは美容にもつながっています。
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