【漢方処方解説】小柴胡湯加桔梗石膏
コロナウイルスの発生・蔓延に伴い、様々な治療方法がネットであふれてくるようになり、感染予防や感染した時、感染後の症状の対策として漢方薬で対応したいというご相談を受けることは多いのですが、ここ最近は”小柴胡湯加桔梗石膏”の取り扱いはありますかという問い合わせが増えてきました。
漢方薬は、随証治療といって「証」に合わせて治療をするため、病名によって処方を選ぶ考え方をしていません(漢方医学では病名は重要ではなく、病んでいるその人の症状を判断することを重視)。その為、”小柴胡湯加桔梗石膏”が適しているかどうかは専門家に相談して確認していただきたいのですが、この処方がどんなタイプ(証)に使われているのかを知っていただき健康管理に少しでも役に立てられれば幸いです。
小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)
【成分及び分量又は本質】
日本薬局方 サイコ 7.0g
〃 ハンゲ 5.0g
〃 オウゴン 3.0g
〃 タイソウ 3.0g
〃 ニンジン 3.0g
〃 ショウキョウ 1.0g
〃 カンゾウ 2.0g
〃 キキョウ 3.0g
〃 セッコウ 10.0g
【効能又は効果】
比較的体力があり,ときに脇腹腹 からみぞおちあたりにかけて苦しく,食欲不振や口の苦味があり,舌に白苔がつき, のどがはれて痛むものの次の諸症:
のどの痛み,扁桃炎,扁桃周囲炎
処方解説
小柴胡湯加桔梗石膏は、他の処方解説でもご紹介したように、漢方処方名に「加」とある場合は、主になる処方(小柴胡湯)に生薬(桔梗と石膏)を加えていますという所から命名されています。
つまり
「小柴胡湯」 + 「桔梗、石膏」 = 「小柴胡湯加桔梗石膏」
となります。
その他、同様に
・葛根湯+川芎、辛夷=葛根湯加川芎辛夷
・桂枝湯+竜骨、牡蛎=桂枝加竜骨牡蠣湯
・白虎湯+人参 =白虎加人参湯
等があります。
このことから、小柴胡湯加桔梗石膏は小柴胡湯の「証」で、桔梗石膏の効能を加えている処方であることがわかります。
小柴胡湯
【効能及び効果】
体力中等度で,ときに脇腹腹 からみぞおちあたりにかけて苦しく,食欲不振や口の苦味があり,舌に白苔がつくものの次の諸症:
食欲不振, はきけ,胃炎,胃痛,胃腸虚弱,疲労感,かぜの後期の諸症状
【処方分類・証】
和解剤(わかいざい)という分類処方になり、その中でも『半表半裏証(はんぴょうはんりしょう)』に用いる処方です。
表・裏というのは、病邪がどこに存在しているのかを判断することで、
「表」体表面など、身体の浅い部分に
「裏」身体の深くまで(五臓)に
病邪が侵入していると判断します。
半表半裏は、主に感冒時にあらわれる証で、病邪が表と裏の間(中間)に存在している状況で、傷寒論では「少陽」と呼ばれる部位に病邪が存在していると考えます。
半表半裏証で見られる症状は、
往来寒熱(悪寒と熱感が交互にやってくる状態)、胸脇苦満(脇腹の張り)、口の苦み、咽の渇き、胸やけ、悪心(吐気)、腹痛、食欲不振、動悸、咳、尿量減少などとなります。
桔梗、石膏
桔梗 3.0g
石膏 10.0g
で構成された処方で
【効能及び効果】
咳嗽あるいは化膿するもの
【処方の特徴】
桔梗は,秋の七草のひとつで紫色のかわいらしい花を咲かせる多年草の根。
鎮咳(咳止め)、袪痰(痰を取り除く)、排膿(膿を出す)などの働きがあり、抗菌作用はありませんが身体の菌をやっつける作用(マクロファージの貪食作用)を高める働きが認められています。
その為、扁桃炎、ニキビ、中耳炎、副鼻腔炎などの化膿性炎症に用いられます。
石膏は鉱石で、清熱薬に分類され消炎作用・解熱作用の効果があります。
この2つを組み合わせることによって、咳を鎮め、熱を抑え化膿を除く働きとなります。
目標の証は・・・
上記の2つを組み合わせているので、半表半裏証で咳、喉の腫れ、熱、痰、膿などに侵されている状況に用います。
実際に相談でこちらの処方を選ぶときには、(※注)感冒中・後の状況(特にこじらせた風邪や病邪が強い風邪)で、風邪がスッキリ治らず(熱が上がったり下がったり)、またぶり返すかもしれない状況であり、咳と痰がつらく、ひどいとのどが腫れて痛くなっている状況の時に使用しています。
銀翹解毒散・涼解楽も喉の痛みや腫れに使用するのですが、こちらは「表証」に対して使用するので、咽んい痛みや腫れた感じがあり、風邪のひきはじめやこれから症状が悪化するかもしれないという状況の時に使用します。
コロナ関連で、小柴胡湯加桔梗石膏が注目を集めているのは、感染後のスッキリ治らない症状(咳、喉の腫れ、痰)に有効だったためではないかと考えられますが、漢方薬も医薬品ですので間違った使用方法ではよい結果を得られませんので必ずご相談のうえ服用するようにしてください。
漢方薬を正しく使用して日々の健康管理にお役立てください。
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