不正性器出血に効果のある漢方薬

不正性器出血に効果のある漢方薬

はじめに

ここで紹介する漢方処方は一例であり、漢方薬の選定の基本は個人の体質・症状に合わせて治療法を決定することです。漢方薬を服用の際は必ず漢方に精通した専門家にご相談ください。

不正性器出血

「不正性器出血」は、女性の生殖器からの異常な出血を指します。不正性器出血は、月経周期外の出血や、月経周期内での異常な出血を含みます。

不正性器出血の原因としては、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮頸部ポリープ、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣嚢腫などの病気が挙げられます。また、妊娠中の出血や更年期障害に伴う出血、排卵期に起こる中間期出血なども、不正性器出血の一種です。

不正性器出血が起こることで、異常な出血量や出血の長期化により、貧血や体力低下、生活の質の低下などの影響が出ることがあります。不正性出血の原因の中には病気でないものもありますが、前述した原因の中にある子宮頸がんや子宮体がんなどの重篤な病気のサインである場合もあるため、まずは早期に専門医である婦人科医師による検査を受けることが重要です。

不正性器出血の原因と代表漢方処方(中医学)

中医学で月経は、五臓の心・肝・脾・腎および衝脈・任脈によって調整されています。

それぞれの働きは
・心は血脈を主り、血を全身に送り出し巡らせています。
・肝は血の巡りの管理と血の貯蔵を行っています。
・脾は消化・吸収・運搬によって気血を作り、主に血の巡り(統血)を管理しています。
・腎は天癸を生じ生殖機能を高める働きがあります。
・衝脈、任脈は月経、妊娠、分娩を主っています。

中医学での不正性器出血の原因となるのは、これら五臓の働きの低下や滞りと考えています。

統血作用の低下

統血作用というのは脾の働きの一つで、血が血管の外に漏れ出ないようにすることで、この統血作用が低下することで異常出血が起こります。このことを脾不統血(気不摂血)と呼びます。

脾不統血の主な原因としては、過度なストレスや過労、食事の乱れ、過度なダイエット、消化器官の疾患などが挙げられます。また、加齢によって脾の機能が低下し、脾不統血を引き起こすこともあります。

脾不統血の症状には、不正性器出血の他に、胃腸障害、胃もたれ、消化不良、食欲不振、下痢、貧血、動悸、息切れ、めまい、手足の冷え、月経不順や無月経などがあります。また、体力や抵抗力の低下、疲れやすさ、ストレス耐性の低下、不眠なども見られることがあります。

代表漢方処方は、帰脾湯、補中益気湯、六君子湯、香砂六君子湯など脾胃を整え血の働きを助ける処方を使用します。

冷え

出血の原因には、冷えによって血の巡りが悪くなる「瘀血」が発生することで出血を起こすことがあります。
身体が冷える原因は、環境要因もありますが主には虚寒という身体を温める気(陽気)の働きが弱くなった「陽虚」が原因します。

これも、脾不統血同様に、過度のストレスや疲労、生活環境、加齢、慢性疾患などが原因し、手足の冷え、しもやけ、腰痛、めまい、貧血、月経不順などの症状があらわれ、不妊症、更年期障害、月経困難症、PMSの原因の一つにもなります。

漢方処方は、冷えを取り除くことと瘀血を取り除くことで、温経湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散などを使用します。

瘀血

冷えによる瘀血の場合は冷えを取り除くことが肝心ですが、瘀血による冷えの場合は瘀血を改善することが大切になります。

冷えにより瘀血との違いは、冷えが中心の場合、体質が虚弱で寒冷を嫌う傾向になり、瘀血体質の場合は冷えよりも頭痛、肩こり、イライラ、月経痛、肌荒れなどの瘀血を中心とした症状となります。

瘀血を改善する、桂枝茯苓丸、血府逐瘀湯、芎帰調血飲、加味逍遥散などを使用します。

腎陽虚

冷えの原因である陽虚の中でも五臓の腎の働きが低下している状態を「腎陽虚」と言います。
主には加齢によって腎の働きが衰退し、身体を温める働きが低下している状態です。その為、頻尿、排尿困難、夜間尿、腰痛、むくみ、しびれ、難聴、耳鳴りといった症状が伴います。

漢方処方は冷え対策の処方も使用しますが、頻尿や夜間尿など泌尿器系の症状も現れる場合には、八味地黄丸、牛車腎気丸を使用します。

血虚

血虚は血の働きの低下や不足の状態を指しています。貧血、めまい、疲労、冷え、月経不順、無月経、動悸、不眠、不安、うつ、皮膚の乾燥などの症状があらわれます。

血虚は女性に一番あらわれやすい病証です。原因として考えられるのは、毎月の月経期の出血による血の消耗、筋肉量が少ない、肝の蔵血機能が低い、ストレスの蓄積、無理なダイエット、肥満などが考えられます。

代表処方は、婦宝当帰膠、十全大補湯、当帰補血湯、芎帰膠艾湯など

 

血虚(けっきょ)って何だろう?/女性特有の病気の原因の多くは「血虚」が関係しています。

止血剤

漢方処方には止血剤に分類する処方があります。
代表処方は「芎帰膠艾湯」、血虚を改善する補血剤である四物湯が配合されていますが、もぐさの原料でもある艾葉(がいよう)も配合されていることからより止血効果を発揮します。

その他、田七人参も止血剤として使用され、他の漢方薬と併用いたします。

以上が薬局で対応する際の漢方薬を選ぶポイントになりますが、当店では不正性器出血が他の病気が引き金となっていないかどうか確認するために、まずは婦人科に相談し感染症や炎症、腫瘍などの病気が原因でないことを診断していただくことを強くお勧めしています。

更年期における不正出血や原因不明の不正出血は、体質を整えることで改善することができますのでお気軽に安心してご相談下さい。

 

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