花粉による鼻水、くしゃみの改善に小青竜湯

花粉による鼻水、くしゃみの改善に小青竜湯

花粉症の症状改善のためによく使われる小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、その小青竜湯の成分や効能効果、中医学から見る小青竜湯の適応タイプ(体質・症状)、類似処方との違いなどについてご紹介いたします。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

青龍とは

小青竜湯の名前の、青龍(せいりゅう)は中国の神話で天を司る神様の一つ、他に朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)、白虎(びゃっこ)の全部で四つの神がいて、それぞれ東・南・北・西の方意を守り、人々を守護するとされています。

青龍は、東の河川に住み太陽の昇る東方を守る神です。五行説において東は五臓の「肝」、季節である五季は「春」、五行は「木」、五臓の病因となる邪である五悪は「風」となります。

  中央 西
五臓
五季 土用
五行
五悪 湿
五色

イラストにはありませんが、中央は、四神の長である黄龍(麒麟)が位置します。黄龍(麒麟)は、最も高貴な存在である皇帝の権威を象徴する神獣になります。そして、五臓の脾・土用・土・湿と深く関係します。

成分・分量

マオウ   3.0g
シャクヤク 3.0g
カンキョウ 3.0g
カンゾウ  3.0g
ケイヒ   3.0g
サイシン  3.0g
ゴミシ   3.0g
ハンゲ   6.0g

効能・効果

体力中等度又はやや虚弱で,うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の諸症: 気管支炎,気管支ぜんそく,鼻炎,アレルギー性鼻炎,むくみ,感冒,花粉症

中医学処方解説

適応症・処方の特徴

辛温解表・温肺化痰・平喘止咳・利水

シャクヤク・カンゾウを除いたすべての生薬が、温める性質の生薬で、そのほとんどが五臓のに働きかけます。

また、桂皮・芍薬・甘草・乾姜・麻黄の組み合わせは、麻黄湯(麻黄・甘草・桂皮・杏仁)や桂枝湯(桂枝・芍薬・甘草・大棗・生姜・甘草)に近いことが分かります。

麻黄湯・桂枝湯・小青竜湯・葛根湯・五苓散・小柴胡湯などはどれも「傷寒論」に解説されている処方。
傷寒論は、漢代の医学家張仲景によって著された代表的な医書であり、漢方医学の基本的な原則や治療法を解説しています。

傷寒論には、風邪(かぜ)の原因となる「寒邪(かんじゃ)」に対する治療法や病気の進行の考え方などが紹介されているので、漢方の風邪薬を選別する医療者にとっては知っておかなければならない理論です。

その為、小青竜湯は麻黄湯や桂枝湯のように身体に寒邪が侵入したことであらわれる症状(鼻水・くしゃみ・咳・痰)を改善するために、身体(主に肺)を温め病邪を取り除くことが中心の処方となります。

麻黄湯や桂枝湯との違いは、細辛・五味子・半夏といった生薬が加わっていることから次のような働きがあります。

細辛(サイシン)

細辛は麻黄・桂枝と同分類の辛温解表剤(体表面を温め風寒表邪を取り除く方剤)ですが、痛竅作用を持つため、鼻炎や副鼻腔炎による鼻づまりを改善します。
※中医学では身体にある9つの竅(あな)「両目・両耳・口・2つの鼻孔・生殖器・肛門」など外界へ通じる器官を『九竅』。この穴の通りをよくすることを痛竅と言います。

五味子(ゴミシ)

五味子は、麦味参顆粒にも配合されている生薬で、過度な発汗や寝汗を抑制したり、下痢を鎮めたりする働きがあり、麻黄・桂皮・細辛の発汗作用が過度にならないように調整する他に、鎮咳作用を持ち合わせています。

半夏(ハンゲ)

半夏は身体を温め水湿(身体に滞っている水)の巡りを改善し、嘔吐、咳・痰を鎮める働きがあります。
配合処方で有名なのは、六君子湯で基礎となる処方は二陳湯ですが、胃内停水を整える基本処方となります。

よって

小青竜湯を使用するタイプの花粉症には、その体質の基礎には水分代謝の働きの弱さがあり、花粉などの刺激によって体表面からの発汗作用が閉塞し、血中の水分量が増加することやアレルギー反応により鼻やのどの粘膜からの水分の分泌が亢進することによって、鼻水や痰が多くなっているタイプに適しています。

類似漢方処方

類似漢方処方は
麻黄附子細辛湯(麻黄・細辛・附子):腎の働きが弱く、冷えが強い体質に
苓甘姜味辛夏仁湯(茯苓・半夏・杏仁・五味子・細辛・乾姜・甘草):小青竜湯から麻黄・桂皮を除き杏仁・茯苓を加え鎮咳・袪痰作用を中心とした症状に向いている
麻黄湯、桂枝湯、葛根湯:身体の体表面を温め寒邪(表証)を取り除くことが中心となります。それぞれの違いについては「麻黄湯VS.葛根湯」をお読みください。

他の鼻炎薬

花粉による症状は、鼻水・くしゃみ・鼻づまり・目のかゆみ・皮膚のかゆみ・目の充血・咳・痰など様々な症状は人によって違いがありますが、これはその人の基礎となる体質によってあらわれる症状に違いが生じているためです。

あらわれてる症状から体質を判断することもできますし、花粉症がない時期の体質の特徴や生活習慣などから判断することもできます。

その体質や症状の特徴から、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯、六君子湯、衛益顆粒、麻杏甘石湯など様々な漢方薬を症状体質に合わせて使用しますので、漢方に精通した専門家にご相談し安全に安心して漢方薬を服用してください。

扶正袪邪

病気の改善には予防が一番です。
小青竜湯が適応のタイプは、水分代謝が悪いことが主な原因です。水分代謝を停滞させる生活習慣の原因は、『暴飲暴食』!!
特に飲酒は控えるようにいたしましょう。
また、胃腸虚弱で水分代謝が悪くなっている体質の方は、脾胃を整える漢方薬を普段から服用して、脾胃の働きを助けてあげることをお勧めいたします。

残念なお知らせ

現在(2023.3.3)、八つ目製薬株式会社製造の「イスクラ鼻淵丸」は諸事情により在庫がなく、販売できておりません。
次の入荷は未定であり、数年かかるかもしれないと聞いております。
代替えの漢方処方を探していますが、とても難しい状況となっています。
入荷し販売再開の際にはTwitterでご報告いたします。

 

目の疲れ・充血・かゆみに漢方茶