【漢方処方解説】ダイエットに使用される防風通聖散で本当にやせるのか!!

【漢方処方解説】ダイエットに使用される防風通聖散で本当にやせるのか!!

ダイエットに良いとされる漢方薬の「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」。

効能効果にも”肥満症”と記載され、ダイエットを目的として服用されるケースがありますが、漢方薬は随証治療のため、服用者の「証」を決定し、証に適した漢方薬を選択することを基本としますので、安全に正しく服用していただきたく考えております。そこで、防風通聖散という漢方薬について、中医学から見る処方解説と臨床論文データを交えてご紹介いたします。

お願い:漢方薬を服用の際には、必ず専門家の指導のもと服用していただくことを推奨いたします。

防風通聖散

効能・効果

体力充実して,腹部に皮下脂肪が多く,便秘がちなものの次の諸症:
高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘,蓄膿症(副鼻腔炎),湿疹・皮膚炎 ふきでもの(にきび),肥満症

成分

当帰(トウキ)
芍薬(シャクヤク)
川芎(センキュウ)
山梔子(サンシシ)
連翹(レンギョウ)
薄荷(ハッカ)
生姜(ショウキョウ)
荊芥(ケイガイ)
防風(ボウフウ)
麻黄(マオウ)
大黄(ダイオウ)
乾燥硫酸ナトリウム
白朮(ビャクジュツ)
桔梗(キキョウ)
黄芩(オウゴン)
甘草(カンゾウ)
石膏(セッコウ)
滑石(カッセキ)

中医処方解説

各生薬の役割

基礎になっているのは、大黄、乾燥硫酸ナトリウム、甘草の3種類で、「調胃承気湯(ちょういじょうきとう)」という処方になります。
効能効果は便秘
大黄・乾燥硫酸ナトリウムは「瀉下剤(しゃげざい)」という分類に属する生薬でこの処方は「下剤」です。

麻黄・荊芥・防風は「辛温解表薬」
薄荷は「辛涼解表薬」
でどちらも体表面の邪を発汗により取り除く働きになります。
麻黄は、葛根湯・麻黄湯の成分でもあり、防風通聖散が肥満症に良いとされる理由の一つの生薬です。

石膏・山梔子・連翹・黄芩は「清熱薬」に分類されます。
清熱薬は、簡単に言えば身体にある余分な熱を冷ます働きです。

滑石・白朮は利尿・排尿に働きます。
当帰・芍薬・川芎は「補血薬」で、下剤や解毒、排尿等で排泄されすぎてしまうのを防ぐための配合と考えられています。

適応体質

防風通聖散の適応する状態は、体内に炎症などの熱がこもっていることで排便や排尿、その他の生理機能が乱れ、
様々な症状(ほてり、便秘、頭痛、肌荒れ、高血圧、糖尿、感冒症状など)を呈している状態に適した処方となります。
特に、胃腸が丈夫であり、便秘であることはこの処方を使用するにあたって、大切な要素となります。

お腹が弱い方(下痢しやすい、軟便傾向)で胃が弱く、冷え症の方は服用しないようにいたしましょう。

防風通聖散が肥満症に良い根拠とは

はじめに、結論から
防風通聖散は
・体重、体脂肪の減少
・胴囲のサイズ減少
・基礎代謝量増加
・総コレステロール、中性脂肪の減少
・インスリン抵抗性の改善
・メタボリックシンドロームの治療、予防
・血圧改善
などが、研究結果として発表されています。

詳しくは、
エビデンスによる漢方の再構築:メタボリックシンドロームに対する防風通聖散の有効性の検討
日置智津子*,荒井勝彦,高士将典,新井信東海大学医学部東洋医学科東洋医学講座
のミニレビューを閲覧ください。(PDF

脂肪細胞の活性化

生活習慣病やメタボリックシンドロームは、褐色脂肪組織の機能低下や数の減少が原因です。
脂肪細胞には、2種類あり「白色脂肪組織」と「褐色脂肪組織」、白色脂肪組織は細胞内に栄養を中性脂肪として貯蔵し、褐色脂肪組織は脂肪を分解し、熱を産生することで体温の調整に関わっています。

防風通聖散は、白色脂肪組織の脂肪分解を促進し,熱産生組織である褐色脂肪組織を活性化することで内臓脂肪の減少や胴囲サイズの減少、体重減少といった効果を発揮していることが分かっています。その為、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防や改善として期待されている処方と言えます。

最後に、冒頭にも書きましたが、漢方薬は随証治療であり、証に沿った治療をすることが望ましく、そうすることで副作用の発現を抑えていきます。
漢方薬を服用の際には、ご自身の証を見極めていただける専門家の指導のもと服用するようにしてください。

まとめ

防風通聖散は,皮下脂肪が多く,便秘があり,コレステロールや中性脂肪が気になる方に便秘の改善薬として試してみてよい処方と考えます。
間違っていただきたくないのは,防風通聖散を服用するだけで「痩せていく」ことはありませんので,ダイエットを目的としてこれだけで痩せようとしないでください。

ダイエットをしたいのであれば,
①食事の内容,食事のリズムの見直し
②間食,お酒を控える
③30分以上持続する運動を毎日行う
④早寝早起き
以上を最低でも半年は続けることができれば,徐々に適正体重に向かっていくことと考えられます。

「これだけを飲んでおけば痩せられる」という魔法の薬や健康食品はありませんので,誇大広告・宣伝に惑わされないようしてください。