水太り体質のダイエットとして「防已黄耆湯」は効果があるのか
体力中等度以下で,疲れやすく,汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み,むくみ,多汗症,肥満症(筋肉にしまりのない,いわゆる水ぶとり)
と効能があり,水太り体質の人向けのダイエット漢方として有名な「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」について,ご紹介いたします.
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
配合成分
防已(ボウイ)
黄耆(オウギ)
白朮(ビャクジュツ)
生姜(ショウキョウ)
大棗(タイソウ)
甘草(カンゾウ)
効能効果
体力中等度以下で,疲れやすく,汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み,むくみ,多汗症,肥満症(筋肉にしまりのない,いわゆる水ぶとり)
目標とする体質(中医学)
治療目標となる主症状は,むくみや関節痛
体質的な特徴は,疲れやすい,風邪をひきやすい,汗をかきやすい,消化器系が弱いなど
基礎となる病的体質・原因体質
▢脾虚気虚:五臓「脾」の働きが弱い
主な症状:少食,おなかの張り,疲れやすい,胃内停水
・脾の運化機能が低下しているため,栄養の消化や吸収が低下し気血の生成が不足し,津液(水)の輸送障害が発生することで「水湿」が発生する(このことを脾虚生湿といいます.)
▢肺気虚:五臓「肺」の働きが弱い
主な症状:汗をかきやすい,寒気,風邪をひきやすい,色白
・肺の水道調整や宣発作用が低下し,衛気が不足により防衛力の低下を引き起こすことで病邪の侵入を許しやすくなると同時に固摂作用が低下することで,出血や発汗傾向がみられる
病状の発生機序
脾・肺気虚の状態の所に「※風邪(ふうじゃ)」が侵入し,虚証により発生している「水湿」と結びつくことによって「風水」となり,それが停滞することで「むくみ」を発生させます.
また,発生した「水湿」は経絡に停滞することで「しびれや痛み(関節痛)」を発生させます.
※風邪(ふうじゃ)とは、細菌やウイスル,アレルギー物質(花粉,ハウスダスト,動物の毛など)や激しい寒暖差や急激な気圧な変動など身体の生理機能を乱す要素のこと |
効能(中医学)
防已黄耆湯は,中医学の基本的な考え「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」である,病邪を取り除き正気を補うことを考えられた処方です.
防已・白朮で「水湿」を除くこと(袪邪)により「むくみや関節痛」を改善し
黄耆・大棗・甘草で「正気」を補うこと(扶正)により,疲労感,多汗など気虚症状を改善します.
この場合,「袪邪」の後は「扶正」を行うことを中心にして繰り返さないように体質改善(脾虚又は肺気虚の改善)をすることが「未病先防(みびょうせんぼう)」となります.
防已(ボウイ)
ツヅラフジ科のシマハスノハカズラの根.日本では同科のオオツヅラフジの蔓性の根茎および茎を防已(漢防已)としています.
日本薬局方「本品はオオツヅラフジSinomenium acutum Rehder etWilson (Menispermaceae)のつる性の茎及び根茎を,通例,横切したものである.」
オオツヅラフジに似た植物に,ツヅラフジ科アオツヅラフジがあります。別名:カミエビ,生薬名:木防已でつる性木本。民間薬として神経痛,関節炎,リウマチ,痛風などに鎮痛薬や消炎薬としての利用や膀胱炎、むくみに用いられています.
みなみ野漢方薬局では,日本産のオオツヅラフジを使用しています.
【分類】
利水滲湿薬(りすいしんしつやく)
【効能】
①利水消腫:浮腫,関節の水などの水湿停滞を除く
②袪風止痛:風湿の関節痛,むくみの改善
黄耆(オウギ)
マメ科のキバナオウギ,ナイモウオウギなどの根.
日本薬局方「本品はキバナオウギAstragalus membranaceus Bunge又はAstragalus mongholicus Bunge (Leguminosae)の根である.」
【分類】
補気薬(ほきやく)
【効能】
①補気昇陽:脾肺の気虚を補う
②補気摂血:気虚による不正出血を抑える(帰脾湯)
③補気行滞:気虚からの血の滞りを改善
④固表止汗:表虚による発汗の改善
⑤利水消腫:気虚の水湿停滞による浮腫の改善
まとめ
防已黄耆湯は,脾肺気虚の体質の状態で「風邪」が侵襲することで体内に「水湿」が発生し,「むくみ,関節痛」の症状があらわれている状態を改善する処方です。
目標となる「脾肺気虚」の判断は,汗をかきやすい、疲れやすい、胃腸が弱い,胃内停水(水分を取ってしばらくしてもポチャポチャ音がする状態),寒暖差に弱い,アレルギー体質,尿量が少ないなどです
ダイエットに良いのか
ダイエットの定義にもよるのですが,防已黄耆湯は「水湿」を除き「正気」を補う処方なので,排尿がスムーズとなりむくみが減少することで多少体重は減少すると考えられます.
ただし,そのむくみの原因が「水湿」によるものであり,脾肺気虚体質であることが目標となりますので,むくみがあればこの処方と決めつけないように気をつけて下さい.
ご自分のむくみの原因や体質を診断してほしい場合には,必ず漢方(中医学)に精通した専門家にご相談ください。
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