中医学で整える心と体の健康 第6回 気滞とは?ストレス社会で増える不調と漢方的アプローチ
- 2025.02.18
- 中医学で整える心と体の健康
- 自律神経

現代社会は便利になった一方で、精神的・肉体的ストレスは増加しています。そして総理府が行った調査によると半数以上の人が何らかのストレスを抱えているという結果になりました。自覚症状(不快な症状)はなくても、ストレスが蓄積しているかもしれません。
中医学では、ストレスは「気」の流れを滞らせる「気滞」を引き起こし、様々な不調につながると考えます。「気滞」による症状の特徴、よく使われる漢方薬、日常のストレス対策についてご紹介いたします。
気とは何か
「気(き)」とは、生命活動を支えるエネルギーのような存在であり、中医学では「気・血・水」のうちの最も基本的な要素と考えられています。気は目に見えませんが、体を動かし、内臓を働かせ、生命を維持する力とされています。
気の主な働き
気にはさまざまな働きがあり、主に以下のような役割を果たします。
✅推動作用(すいどうさよう):体の成長や血流、消化吸収を促進する
✅温煦作用(おんくさよう):体を温め、適切な体温を維持する
✅防御作用(ぼうぎょさよう):外邪(ウイルス・寒さなど)から体を守る
✅固摂作用(こせつさよう):血や汗、尿などの流出を防ぐ
✅気化作用(きかさよう):体内の物質を変化させ、新陳代謝を促す
気滞とは
「気滞(きたい)」とは、気の流れが滞った状態を指します。
中医学では、「気」は体内をスムーズに巡ることで健康が保たれると考えられています。しかし、何らかの原因でこの流れが悪くなると、身体や心にさまざまな不調が現れるのです。
気滞の主な症状
気が滞ると、以下のような症状が現れます。
【精神的な症状】
・イライラしやすい
・気分の落ち込み
・不安感が強い
・憂うつ感
【身体的な症状】
・胸や喉のつかえ感
・ため息が多くなる
・胃の膨満感、ゲップが出やすい
・頭痛や肩こり
・月経不順や生理痛
気滞の主な原因
① 精神的ストレス・情緒の乱れ
長期間のストレスや怒り、不安、悲しみなどの感情の乱れが、気の流れを阻害します。特に「肝の気」が関係し、ストレスを受けやすい人は気滞になりやすいです。
② 運動不足
気は動くことで巡る性質があります。長時間座りっぱなしの生活や運動不足は、気の停滞を招きやすくなります。
③ 不規則な食生活
暴飲暴食や、冷たいもの・脂っこいものの摂りすぎは、胃腸の働きを弱め、気の巡りが悪くなります。食後の膨満感や胃もたれが続く場合、消化器系の気滞が関係しているかもしれません。
④ 長時間の同じ姿勢・血流の悪化
デスクワークやスマホの長時間使用により、筋肉の緊張が続くと、気の巡りが滞ります。特に肩こりや頭痛を感じやすい人は、気滞の可能性があります。
⑤ 環境の影響(気候・湿気・寒さ)
湿気の多い環境や、寒さによって気の流れが悪くなることもあります。梅雨時期や冷房の効きすぎた室内で、体が重だるく感じるのは、気滞の影響かもしれません。
気滞を改善するには?
✅「気を巡らせる」生活習慣
・適度な運動(散歩・ヨガ・気功)
・呼吸法やストレッチ、ツボ押しでリラックス
・ストレス発散のための趣味やリラックス時間の確保(副交感神経を優位にする)
✅ 食養生による気滞の改善
・気の流れを良くする食材を摂る(みかんの皮・陳皮、しょうが、紫蘇、ネギなど)
・カフェインや刺激物の過剰摂取を避ける
・深酒を避ける
✅ 漢方の活用
・気の巡りをスムーズにする漢方薬を活用
(加味逍遥散、香蘇散、半夏厚朴湯、柴胡疎肝湯など)
気滞は「瘀血」の原因でもある
気は血・水の巡りよくするエネルギーでもあります。気の流れが滞れば、結果として血・水も巡りが悪くなり滞りを生じます。
特に血の滞りである「瘀血(おけつ)」は万病の元とも言われ、高血圧、糖尿病、脳梗塞、認知症、癌、アレルギー、免疫異常、不妊症など様々な疾患を引き起こすと考えられています。
私は気滞症状があると「瘀血」も少なからず伴っていると考えています。その為、気血両方の巡りを改善する漢方薬の組み合わせをよく利用しています。
ストレスの適応力には個人差がある
お客様との相談の中で、「ストレスはないよ」と返答を頂くことがありますが、身体に不調があるということは、精神的以外の肉体的ストレスは感じている結果であるということになります。
ストレスに対する許容幅(適応力)は、生まれつきの気質・体質、生活習慣、経験などによって異なるため、人それぞれ違います。
例えば、
・許容幅が広い人 → ストレスを感じにくく、環境の変化に柔軟に対応できる
・許容幅が狭い人 → 些細な変化でも大きな負担となり、体調を崩しやすい
この許容幅(ストレス耐性)は、精神的なものだけでなく、身体的な適応力(免疫力や自律神経の調整力)とも関係があります。
どんなに適応力が高い人でも、ストレスや疲労が積み重なると、許容幅は狭くなっていくため、同じストレスに対しても影響を受けやすくなります。
現代社会はストレスの多い環境ですが、気滞を意識し、気の巡りを改善することで不調を軽減できます。生活習慣の見直し、食養生、漢方の活用を取り入れながら、心身のバランスを整えていくことが大切です。 🌿
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