中医学で整える心と体の健康 陰陽の調和が、健やかな日々を育む

中医学で整える心と体の健康 陰陽の調和が、健やかな日々を育む

中医学には、五臓・気血水・病邪など、人体や自然界の状態を理解するための基本理論がありますが、それらを根本的に支えている理論が「陰陽論(いんようろん)」です。

陰陽のバランスによって自然界が成り立ち、同様に人の身体も陰陽のバランスによって支えられていることが、陰陽の考え方を知ると分かってきます。

陰陽の考え方

自然界や人体におけるすべての現象を「陰」と「陽」という二つの相反する要素で説明することができます。「五臓のどこが弱っているのか」「気血水のどのバランスが崩れているのか」「病邪はどんな性質か」なども、陰陽の視点で整理して考えることができます。

陰陽の例

興奮 亢進
抑制 衰退

陰陽は対立しながらも互いに影響し合う2つの要素から成り立ち、陰陽は絶えず増減し、ある一定の段階になるとそれぞれ反対方向に転じるとされています。

さらに、陰陽に分けた事物はさらに陰陽に分けることができます。例えば昼間は陽で夜が陰ですが、昼間の陽は、午前が陽・午後は陰と分けることができます。

陰陽の関係性と法則

陽と陰には、主に次の4つの関係性があります。

①陰陽の対立

陰と陽は互いに対立する性質を持っていますが、この対立がバランスを生みます。
例:体温の上昇(陽)と冷却(陰)のバランス。

②陰陽の依存(陰陽互根)

陰と陽は互いに依存することで成り立ちます。どちらかが一方のみ(単独)で存在することができない。
例:昼(陽)があれば夜(陰)があり、活動(陽)があれば休息(陰)も必要です。

③ 陰陽の消長

陰と陽は常に変動しながらも、一定のバランスを保とうとします。
例:昼が長くなれば夜は短くなり、冬が深まれば夏に向かっていく。

④ 陰陽の転化

陰が極まれば陽に転じ、陽が極まれば陰に転じます。
例:極端に疲れると眠くなる(陽の活動が陰の静けさに転じる)。

陰陽はこれらの関係性により、ある一定の適応範囲に収まるようになっています。

中庸(ちゅうよう)

ある一定の適応範囲のことを中医学では中庸と言い、人にとって偏りがなく、バランスが取れている状態を指します。

西洋医学では「恒常性(ホメオスタシス)」として重視され、自律神経系・ホルモン系・免疫系の相互作用によって維持されていると考えます。

西洋医学の考えを陰陽に分けると次のように分けて考えることができます。

西洋医学の概念 陽(活動・興奮・熱・動的) 陰(抑制・沈静・冷・静的)
自律神経 交感神経 副交感神経
ホルモン 甲状腺ホルモン(代謝亢進) メラトニン(睡眠促進)
血流 血圧上昇・血管収縮 血圧低下・血管拡張
心臓機能 心拍数増加・心収縮力増大 心拍数低下・心拡張
呼吸 早く浅い呼吸 深くゆっくりした呼吸
消化機能 食欲亢進・消化酵素分泌促進 食欲減退・消化抑制
筋肉の状態 緊張・収縮 弛緩・リラックス
精神状態 興奮・覚醒・アクティブ 落ち着き・睡眠・鎮静
免疫機能 急性炎症・発熱 慢性炎症・免疫低下
代謝 異化(エネルギー消費) 同化(エネルギー蓄積)
神経伝達物質 ノルアドレナリン・ドーパミン セロトニン・GABA
体温調整 発熱・体温上昇 体温低下・冷え
感情 怒り・興奮・ストレス 落ち着き・安定・抑制

陰陽バランスが乱れると

病気になる・体調が悪いというのは、陰陽バランスが乱れた状態であると言えます。風邪は誰もが一度は患う疾患ですが、風邪のひきやすい方と風邪をひきにくい方との違いは、身体が丈夫かそうでないかと表現されますが、中医学では陰陽のバランスが乱れているか整っているか、または許容範囲や適応範囲が広いか狭いかで判断することができます。

陰陽バランス(気血バランス)の乱れによってあらわれる体の変化(サイン)から、どのような症状があらわれるのかを一覧にすると次のようになります。

バランスの乱れ 主な不調のサイン 具体的な症状
陰虚(陰が不足し、陽が過剰) のぼせ・ほてり 顔が赤くなりやすい、寝汗、口の渇き、皮膚の乾燥、喉が渇く
  イライラ・不眠 夜眠れない、夢をよく見る、落ち着かない
  疲れやすい 体が火照るのにだるい、午後になると疲労感が増す
陽虚(陽が不足し、陰が過剰) 冷え・寒がり 手足や腰が冷える、寒がり、温めると楽になる
  低血圧・むくみ 朝がつらい、むくみやすい、動くと疲れやすい
  胃腸機能の低下 食欲がない、軟便・下痢しやすい、消化不良
気滞(気の流れが滞る) ストレス・イライラ 気分の浮き沈みが激しい、怒りっぽい、ため息が多い
  胸のつかえ・喉の違和感 胸が苦しい、喉に何か詰まっている感じ(梅核気)
気虚(気の不足) 疲れやすい 少し動いただけで疲れる、息切れしやすい
  免疫低下 風邪をひきやすい、治りにくい
  集中力の低下 ぼーっとする、すぐに疲れる
血虚(血の不足) 貧血・めまい 立ちくらみ、ふらつき、顔色が悪い
  不眠・爪のもろさ 寝つきが悪い、爪が割れやすい、髪が抜けやすい
瘀血(血の滞り) 肩こり・頭痛 肩が凝る、頭が重い、刺すような痛み
  生理不順・冷え 生理痛がひどい、血の塊が出る、手足が冷たい

陰陽バランスを整える漢方薬

西洋医学と中医学の大きな違いは、バランスの乱れをどのように整えていくのかにあると考えます。
例えば、血圧が高くなっている場合。西洋医学では、高血圧を 「血圧が基準値より高い状態」 と定義し、主に 「血圧を下げること」 を目的とした治療を行います。例えば血管を拡張させる・心臓の負担を減らす・余分な水分を排出して血圧を下げる・血圧上昇物質を抑制する作用の薬剤を使用して血圧を下げていきます。

中医学では、高血圧を 「体内のバランスの乱れ」 の結果と考え、「原因にアプローチして体質を改善する」 ことを重視します。つまり、高血圧を「結果」ではなく「体質の乱れ」として捉え、原因ごとに異なる対策をするのが中医学(漢方治療)となります。

体内のバランスを整えることには、高血圧だけではなくバランスの乱れによって発生している体の不調全体を整えていくため、慢性頭痛、肩こり、耳鳴り、むくみ、めまい、動悸、便秘などの体調不良も改善していきます。

病気に対してのアプロ―チではなく、病人に対してアプローチするのが中医学の考えであり、漢方治療の最大の特徴です。西洋医学は病気の悪化・進行を防ぐ、つらい症状の緩和にとても有効な治療です。

しかし、慢性病に対して対症療法だけを続けていても良くならないことがあります。そのような状態から抜け出すためには体質から見直して整えていくことも合わせて行うことが有効であると考えます。

漢方相談・問診が大切

漢方において最も重要なのは、「お一人おひとりの体質や症状に合った処方を選ぶこと」 です。西洋医学では同じ病名であれば同じ薬を処方することが一般的ですが、漢方では「同じ症状でも原因が異なれば異なる処方が必要」と考えます。そのため、詳細な問診を通じて、お客様の体質や生活習慣をしっかり把握することが重要になります。

当薬局では、画一的な処方ではなく、「お客様の体質・症状・生活習慣に合わせたオーダーメイドの提案」 を行っています。

  • 現在の体調や不調の原因を見極める
  • 生活習慣や食事のアドバイスも含めた総合的なケアを提供
  • 症状の変化に応じて、処方を調整しながら最適な状態を目指す

漢方は、「今のあなたに合ったもの」 を選ぶことで、本来の力を最大限に発揮します。まずはしっかりとお話をお伺いし、あなたに最適な漢方をご提案いたします。お気軽にご相談ください。