甲状腺の治療中でも、まだ不調が続いている ― QOLを高める漢方という選択肢

甲状腺と体のバランス
甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」は、体内のほとんどすべての臓器に作用し、新陳代謝を促進したり、臓器の働きを活性化したり、発育を助けたりする重要なホルモンです。
このホルモンが「多すぎる」「少なすぎる」と、体にさまざまな不調が現れます。そのため、甲状腺ホルモンの分泌量は、脳の視床下部と下垂体によって厳密にコントロールされています。
甲状腺機能の異常には主に2つのタイプがあります
■ 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている状態です。主な症状は以下の通りです。
・イライラしやすい
・不安感が強い
・脈が速くなる(頻脈)
・息切れしやすい
・手のふるえ
・体温が上がる・暑がりになる
・汗をかきやすくなる(発汗過多)
・下痢気味になる
・食べても体重が減る など
■ 甲状腺機能低下症(橋本病など)
甲状腺ホルモンが不足している状態で、以下のような症状が現れます。
・気分が落ち込みやすい(抑うつ傾向)
・体がだるく疲れやすい
・集中力や記憶力の低下
・脈が遅くなる
・体温が低下し、寒がりになる
・便秘になりやすい
・体重が増加しやすい など
◆自律神経との関わりと症状◆
状態 | 自律神経 | 主な症状 |
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甲状腺機能亢進 | 交感神経が過剰 | 動悸・不眠・不安・イライラ |
甲状腺機能低下 | 副交感神経が過剰 or 自律神経全体が低下 | 疲労・うつ・冷え・眠気 |
治療中なのに、なぜつらさが残るのでしょうか?
薬で甲状腺ホルモンの数値は安定しているのに、
・疲れが抜けない
・イライラ・不安が続く
・体重が戻らない
・夜、眠れない
といったお悩みが続く方も少なくありません。
実は、ホルモンの数値が整っても、心や体のバランスがすぐに回復するとは限らないのです。その理由には、以下のような要因があります。
▷数値は正常でも、体調が整ったとは限らない
投薬治療により「数値は正常」と言われても、自分の体調が整ったとは限りません。
ホルモンは全身の代謝や臓器、自律神経、気分にまで影響を及ぼすため、
数値が正常でも「違和感」や「不調感」が残ることがあります。
▷自律神経や体内リズムが乱れたまま
甲状腺ホルモンは、自律神経のバランスや体内時計にも関わっています。
長期間のホルモンの乱れで崩れたバランスは、薬で数値が整っても、
すぐに元通りにはなりにくいのです。
▷体質や内臓のアンバランスが回復していない
中医学では、甲状腺の不調は以下のような体内バランスの崩れによって起きると考えます。
・「気(エネルギー)」や「血(栄養)」の不足
・「肝」「心」「腎」などの臓腑のアンバランス
・「熱」や「痰(たん)」などの停滞
といった体内の偏りがあると考えます。
こうした全身のバランスが整っていないと、“なんとなくつらい”症状が残りやすいのです。
▷ 心のストレス・不安感も影響
甲状腺ホルモンは気分の浮き沈みや不安感とも深く関係しています。
病気の経過や治療への不安が心身に影響し、回復を妨げることも少なくありません。
このような背景から、睡眠薬や抗不安薬が追加されていくと、かえって症状が複雑化し、本来の回復が遠のいてしまうこともあります。
そこで注目される「漢方」という選択肢
漢方では、「ホルモンの数値」ではなく「あなた自身の体質や心身のバランス」に着目します。
一人ひとりの状態に合わせて、自然な回復力を引き出しながら、体全体を整えることが可能です。
漢方の視点 ー 「全体を診る」アプローチ
中医学では、病名に対して薬を選ぶのではなく、体質と症状の現れ方を総合的に見て、
その人の「証(しょう)」を見極めて処方を行う【弁証論治】という考え方を重視します。
人によって、体質も回復のスピードも異なります
たとえば、風邪を患っている人と同じ電車に乗っていても、風邪をひく人もいればひかない人もいます。
体質は、先天的な素質だけでなく、生活習慣や環境によっても左右されます。
同じ病名でも、全員が同じ治療でよくなるとは限らないのです。
「まだつらい…」と感じているあなたへ
甲状腺ホルモンの治療を受けていても、不調が残る方は少なくありません。
そんなときこそ、漢方の視点であなたの体全体を見つめ直し、
本来の元気を取り戻すための一歩を踏み出してみてください。
西洋医学との併用も可能です
漢方薬は、西洋医学の治療と併用されることが多く、医療現場でも補完的な役割として活用されています。現在、病院での治療や薬を続けている方でも、体質や症状に合わせて漢方を取り入れることは可能です。
「いまの治療に影響がないか心配…」という方も、どうぞご安心ください。
漢方では、お一人おひとりの体調や服用中のお薬なども丁寧に確認しながら、ご相談に応じてまいります。
不安な点やご質問がありましたら、どうぞお気軽におたずねください。
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