西洋医学と東洋医学(中医学)「ふたつの医学で守る、ひとつの健康」

西洋医学と東洋医学(中医学)「ふたつの医学で守る、ひとつの健康」

異なる視点から「病」を捉える

病気になったとき、私たちが望むことは何でしょうか?
「つらい症状を早く抑えたい」「根本的に治したい」「再発を防ぎたい」──人によって優先順位は違っても、健康を取り戻したいという願いは共通しています。

西洋医学と東洋医学(中医学)は、どちらも私たちの健康を支える大切な医療ですが、病気へのアプローチには大きな違いがあります。

特に、東洋医学における「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」という考え方は、西洋医学の「対症療法」とは異なる視点から、身体を整えていきます。

西洋医学:「原因」と「症状」にアプローチする対症療法

西洋医学は、病気の原因や症状を明確に特定し、それに直接働きかける「対症療法」を得意とします。

▶原因に対してピンポイントに治療

例:細菌感染には抗生物質、炎症には消炎剤、腫瘍には外科手術など。

▶つらい症状の速やかな緩和

例:発熱には解熱剤、痛みには鎮痛剤などで苦痛を和らげます。

▶科学的根拠と客観的データに基づく治療

標準化された治療プロトコルが整備されており、診断と治療の流れが明確です。

<例> 風邪をひいた場合

発熱、喉の痛み、鼻水などの症状に対して、解熱剤、鎮痛剤、咳止め、鼻炎薬などが処方され、ウイルスの増殖を抑えるための治療は限定的です。

東洋医学:「体質の偏りを整える」随証治療と扶正袪邪

一方、東洋医学では、体の不調を「バランスの乱れ」として捉えます。
治療は「随証治療(ずいしょうちりょう)」と呼ばれ、その人の体質・病状・季節・生活環境などを総合的に見てアプローチします。

▷体全体の調和を重視

症状を単体で捉えるのではなく、全身のバランスの崩れとして診断。

▷四診による診断と「証(しょう)」の把握

望診・聞診・問診・切診を通じて体の状態を分析し、その人に合った治療方針(証)を立てます。

▷「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」という基本思想

 「正気(せいき)=体に備わる回復力・抵抗力」を助け、「邪気(じゃき)=病因や外からの悪影響」を取り除くことを目指します。

「扶正袪邪」のアプローチとは?

■扶正(ふせい):正気を助け、抵抗力や回復力を強化する

  • 漢方薬で気や血を補う

  • 食養生、休養、睡眠、運動などの生活改善

■袪邪(きょじゃ):体に悪さをする邪気を追い出す

  • 発汗、排便、利尿、清熱作用のある漢方薬

両方のアプローチを組み合わせることで、体力が落ちているときはまず正気を補い、その上で邪気を取り除くなど、柔軟な治療が可能です。

<例>風邪の場合

風邪にかかりやすい体質を見直し、正気を補う漢方薬や、寒さや湿気といった邪気を追い出す薬を用いるなど、根本的な改善を図ります。加えて、食事・睡眠・入浴法などの生活指導も行われます。

西洋医学と東洋医学、両者の強みを生かす「統合医療」

項目 西洋医学 東洋医学
得意分野 急性疾患、救急医療、外科的治療、精密検査、診断
慢性疾患、未病、体質改善、全身のバランス調整
治療の視点 病気の原因や症状に直接アプローチ
体全体のバランスと自己治癒力の向上
アプローチ 対症療法
随証治療、扶正袪邪

西洋医学と東洋医学は、異なるアプローチを持つからこそ、それぞれの得意分野を活かし、連携することでより効果的な医療を提供できます。急性期の重篤な病気には西洋医学が力を発揮し、慢性的な不調や体質改善、病気の予防には東洋医学が貢献するなど、両者を上手に活用することが、真の健康への道しるべとなります。

まとめ:あなたの健康を支えるために

西洋医学の「対症療法」と東洋医学の「扶正袪邪」という考え方は、一見異なるものに見えますが、どちらも私たちの健康を守るための大切な手段です。
ご自身の体の状態や症状に合わせて、適切な医療を選択し、時には両方を組み合わせることで、より健やかな毎日を送ることができます。

症状だけに注目するのではなく、体の声に耳を傾け、自分に合った医療を選ぶこと。
必要に応じて、両方の医学を上手に取り入れること。

それが、本当の意味で健康な未来を築く第一歩です。