血虚(けっきょ)って何だろう?/女性特有の病気の原因の多くは「血虚」が関係しています。

血虚(けっきょ)って何だろう?/女性特有の病気の原因の多くは「血虚」が関係しています。

女性の悩みの多くは「血虚(けっきょ)」と呼ばれる体質が関係していますが、血虚とはいったい何のことだろうか、貧血と同じことなのであろうか、血虚になるとどんな症状が起こるのか、どうしたら改善できるのか、そんな疑問を解決。

血虚のことを理解して、その対策を考えていきましょう。

まずは、血虚体質のチェックをしてみよう

血虚体質チェックリスト

血虚と呼ばれる体質は、様々な症状を引き起こします。あなたはいくつ当てはまりますか。

□ 顔色が悪い □ 四肢のしびれ感
□ 皮ふにツヤがない □ 筋肉がぴくぴくする
□ 唇があれる □ 筋のけいれん(こむら返り)
□ 爪がもろい □ 冷え症
□ 目がかすむ □ 眠りが浅い
□ 目が乾く □ 抜け毛が多い
□ 目がくらむ □ めまい、立ちくらみ
□ 頭がぼーとする □ 疲れやすい
□ ふらつく □ 気力低下
□ 動悸 □ 不安感がある
□ むくみ □ イライラ

4つ以上当てはまれば「血虚体質」である可能性があります。

女性特有の悩みも血虚体質が原因

女性特有の症状である月経の状態は、「血」の働きが大きく関係しているため漢方相談では月経周期、経血量・質、月経痛、PMSなどの状態の変化をとても重要視しています。

□月経周期の遅れ □経血量の減少 □無月経 □不正性出血

さらに

□内膜症 □筋腫 □嚢腫 □更年期障害 □不妊症

でお悩みな場合は、

「血虚体質」が関係しているかもしれません。

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血虚と貧血は同じことなのか

「血虚」とは何か

中医哲学では、人の体を構成している物質的要素を「気・血・水・精」に分けて考えています。(気・血・水・精について)

その中の「血」の働きが
低下した状態
不足した状態
のことを「血虚」と呼んでいます。

血の役割は

・体全体を潤し養う
血は栄養を豊富に含み、経絡(気血水の通り道)を使って全身を巡り必要とされる栄養を与え、潤しています。このことを血の”需要作用”といいます。

・精神活動のエネルギー源
血は、思考力・判断力・感情などの精神活動のエネルギー源にもなっています。その為、血の働きが不足すると精神的に不安定となり、感情をうまくコントロールすることができなくなることもあります。

・血が不足すると精も不足する
血の一部は「精」に変化するため、血の不足は「精」の不足も生じさせます。「精」は生殖器系の働きを担っている重要な物質です。不足すると生殖器系障害が起こりやすくなります。

・津液(水)とのバランスが大切
血と津液は互いに変化しあう関係です。血の不足は津液の不足を引き起こし、津液の不足は血の不足を誘発します。

血虚=貧血ではありません

中医学では、検査値や診断で貧血と言われていなくても、自覚症状や舌の色などによってあてはまる体質・症状があれば「血虚」と考えます。

貧血について理解する

貧血の症状の多くが血虚にみられる症状であるため混同しがちなのですが、貧血であることは血虚でありますが、血虚体質であることが西洋医学での貧血ではあるとはかぎりません。

血虚を改善する方法は

血虚を改善する漢方薬「補血剤(ほけつざい)」

血虚を改善するために「血」を補い働きを助ける漢方薬を補血剤といいます。

当帰

補血剤の代表生薬が「養血薬(ようけつやく)・補血薬」に分類される「当帰(とうき)」と呼ばれるセリ科の植物の根を乾燥させたもの、その他、熟地黄、何首烏、白芍薬、阿膠、桑椹、竜眼肉が同類生薬です。

補血剤は、これらの生薬を組み合わせて作られたもので、
基本処方は
四物湯(しもつとう):当帰・白芍薬・センキュウ・熟地黄
になります。

血虚体質を改善するためには、この四物湯を基本方剤として血虚になってしまった原因となる体質も一緒に改善することを目標とします。

血虚になる原因は

血虚は、様々な症状を引き起こしている原因でありますが、血虚になった原因を改善しないことには根本的改善になりません。

血虚の状態は、
①血の働きが低下
②血が不足している

①血の働きが低下する原因は(血行不良の原因)
血は、気の働きによって活躍しているものなので、気の働きの不足・停滞によって循環が悪くなり、血のもつ滋養作用が低下してしまいます。この気の不足を「気虚(ききょ)」、気の滞りを「気滞(きたい)」と呼びます。

気虚になる原因は、過労、老化、栄養不良、慢性疾患、薬剤など様々なことが原因として発生します。

気滞の原因の多くは、ストレス、過労、慢性疾患、暴飲暴食、運動不足などで発生。

血の働きの低下は「気虚」「気滞」が主な原因です。

②血が不足してしまう原因は(血の製造量、機能の低下)
血は、気と津液が結合して作られるほか、腎精と呼ばれる生命の源となるエネルギーが変化して作られています。

気と津液・腎精は、飲食と呼吸によって作られますので、ダイエットなどの栄養不足や消化器障害、腎機能低下が原因となり、血の材料を吸収、生成できていないと血は作られません。五臓の関係からすると、「脾」「肺」「腎」の働きが低下することで血を作る働きが低下して血虚を引き起こしてしまいます。

また、出血は直接的に血の不足を引き起こしていますので、月経期は血虚の状態であると言えるのです。その為、もともと血虚体質の人は、経血を引き起こしてしまうと血虚がひどくなるために、体は月経を止めるか出血量を抑えることで身体を守ろうとするのです。さらに、妊娠中や授乳中は血を多く消耗しますので、血虚体質が不妊の原因となると考えているのです。

血虚を改善する漢方薬

血虚を改善するためには、その原因を把握して改善する必要があります。

2つの主な原因を改善するためには、
①血の巡りを良くする(血行不良の改善)
②血の生成を整える(血の製造、機能の改善)
ことが必要となります。

①血の巡りを良くする
気の不足が血の巡りを悪くしている場合、気を補うことで血の働きを良くします。
その代表処方は、十全大補湯、人参養栄湯

血の巡りは気の不足以外にも、気の停滞(気滞)であるストレスが原因することもあります。この場合は気の巡りを改善させます。
その代表処方は、加味逍遥散合四物湯、加味逍遥散

気滞は、血の滞りの瘀血(おけつ)を発生させてしまいます。
瘀血になると、肩こり、頭痛、倦怠感、イライラ、のぼせ、経血に塊が混じるなどの症状があらわれます。
この場合には、瘀血を改善する処方が有効です。
代表処方:桂枝茯苓丸、冠元顆粒

②血の生成を整える
血の生成には五臓の「脾」「肺」「腎」が関係しています。

「脾」の働きの低下を「脾胃気虚(ひいききょ)」と呼びます。
脾胃の働きを整える代表処方;六君子湯、補中益気湯、啓脾湯、加味平胃散、香砂六君子湯、参苓白朮散

「腎」が関連して血の生成が悪くなっている状態には補腎剤という漢方薬を使用します。
代表処方;六味地黄丸、八味地黄丸、都気丸、杞菊地黄丸、参馬補腎丸、参茸補血丸

 

血虚を改善するための漢方薬は、原因も含めて改善することで根本的な改善が期待できます。血を補うことはもちろん体質改善をしっかり行いましょう。