漢方薬が多剤服用の悩みを解決する

漢方薬が多剤服用の悩みを解決する

漢方・中医学の考えである東洋医学と西洋医学は対立する関係ではなく、病の改善に向かい協調する関係でなくてはならない。

ここ数年、医療機関において保健漢方エキス製剤の処方が増え、東洋医学と西洋医学の融合された医療の考え方が一般的となっていることは、病で悩んでいる方にとっても医療関係者にとっても有益な状態であると考えられます。

高齢者の体のお悩みは年を重ねるたびに増え続け、そのたびにお薬が増えていく現状をしっていますでしょうか。

西洋薬は特に対症療法のお薬です。病気の症状を軽減し抑える、進行を遅らせる、二次被害を抑制するという目的であります。

乱暴な表現かもしれませんが、若返りのお薬でない限り飲み続けることで健康になる西洋薬はありません。

多剤服用はなぜおこる

「多剤服用 百害あって 一利なし」

年齢を重ねると、身体には様々な症状や障害があらわれてくるのは多くの方が理解していることです。

その為、複数の病気を持つ高齢者は、症状(病院・クリニック)ごとに薬を処方され服用されていることが多くなっていきます。

2003年にある大学病院などが、高齢者の外来患者を対象にした調査結果では、一人当たり平均3.5種類の病気があり、4~5種類の薬を服用していることが解りました。

厚生労働省の2014年社会医療診療行為別調査によると、60歳を超えると1か月の間に7つ以上の薬を受け取る割合が増え、75歳以上では約4人に一人となります。

あなたは、どのようなお悩みで何種類のお薬を服用されていますか。

高齢者の薬の効き目

悩みの解決・軽減のために薬を服用するのだから何か問題があるのだろうかと思われる方もいます。

お悩みの解決のために服用することを問題としているのではありません。

ですが、高齢者に薬の有害作用が増えていることは事実です。

高齢になるということは、青年期、中年期よりもお薬に対する反応も変わっていきます。それは、身体の機能の低下によって(特に肝臓、腎臓)お薬の排泄や代謝が悪くなることで薬の効き目が強くあらわれてしまうことです。

薬の効き目が強くあらわれるということは、お分かりのことですが、副作用の発現も強くあらわれるということです。

高齢者の疾患は、多くが慢性病と化します。その為、長期服用が必然となりその分副作用の発現のリスクも増えるということを理解する必要があります。

間違った薬の認識

私たち薬剤師という薬の専門家からすると、市販の風邪薬を服用していて治りが悪いから病院やクリニックで処方された薬と併用するということなど「あり得ない」、ことなのですが、

薬のことを詳しく知らない、聞いたことのない方にとっては、早く治すためにはいつもの薬と新しい薬を一緒に服用すれば効果的であると思っている方がいます。

また、ある方は風邪のような症状でいつも通っている整形外科の先生に体調のお話をした時に、いつものシップ剤と鎮痛剤に合わせて風邪薬を処方していただきました。その帰りに耳鼻科に受診し風邪薬を処方してもらうこともあります。

このようなケースでは、多くの場合薬局にてチェックが入るので重複して服用することを防ぐことができますが、
・お薬手帳を持っていない
・問診で整形外科で薬をもらっていることを医師にも薬剤師にも伝えていない
というケースでは、重大な事故につながる可能性があります。

お薬手表は必ず使用しましょう!!
お薬手表の意義は次のとおり整理されます。
○患者自身が自分の服用している医薬品について把握するとともに正しく理解
し、服用した時に気付いた副作用や薬の効果等の体の変化や服用したかどうか
等を記録することで薬に対する意識を高めること
○複数の医療機関を受診する際及び薬局にて調剤を行う際には、それぞれの医療
機関の医師及び薬局の薬剤師に見せることで、相互作用や重複投与を防ぐこと
により、医薬品のより安全で有効な薬物療法につなげること (厚生労働省)

・eお薬手帳(日本薬剤師会):スマホでお薬管理
処方薬は一か所の薬局でまとめて調剤していただくことをお勧めいたします。

多剤服用

多剤服用というのは、前述のケースとは違い加齢に伴い悩み事も増え、そのたびにお薬が増えていくという問題です。

・腰が痛くなってきたので痛み止め

・痛み止めで胃が悪くなったので胃薬

・また痛みが出るのではという不安で眠れないため入眠剤

・日中、気力がなく外出したくない、イライラするため安定剤

それと

以前から服用している、降圧剤と脂質異常症対策薬、骨粗しょう症治療薬となるとあっという間に7種類以上の薬を服用することになります。

先ほども説明した通り、高齢になればなるほど薬の代謝が悪くなり副作用の発現も高くなります。服用する薬の数が増えればそれだけ副作用のリスクも増えることを理解してください。

高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用[PDF](一般社団法人 日本老年医学会

漢方薬の特徴

漢方薬の大きな特徴と言えば、数種類の生薬を組み合わせて作られた処方である。

その組み合わせは、数千年の歳月の中で経験的に理論的に組み合わされたものであり、数百年前に作られた処方が現代病にも役立っていることは周知の事実です。

昔から漢方薬は副作用がないと言われていました。

(松田のひとりごと)
漢方薬の副作用は近年になって取り沙汰されるようになりました。その中には、日本に漢方薬が入る前から副作用について言われてきたものもあれば、現代になって警鐘されているものがあります。そこには食習慣・生活習慣・環境の変化・体質の変化なども関係していると思われますが、このことについて私は漢方薬に対する間違った認識のもと間違った使用方法、エキス剤という簡素化したものの影響、漢方薬の重複投与、西洋薬との相性などが関係していると思っています。その為に、漢方薬について熟知しているものが適切に処方する必要があると考えています。

そこには、専門的な知識のもと正しい使用方法であるため副作用の発現が少なかったのであろうと考えられます。

漢方治療の基本としての考え方は、

「病を治すのではなく病んでいる患者を治す」

ということであり、病気を軽減させることだけを目的としていないことが漢方薬の最大の特徴です。

漢方薬のメリット

漢方薬のもう一つの特徴が、高齢者にとって漢方薬が有効であると言えます。

それは、様々な症状に対して漢方処方1.2種類で対応することができるという点です。その為、服用する薬の種類を減らすことができて副作用の発現も減らすことにつながるのです。

あなたの健康を守るために知ってほしいこと

自分の体は自分が良く知っているのは当然なことですが、病気や薬については専門家にゆだねることが大切です。

体調が悪くなると不安なためすぐに医師の診察を受けることが悪いわけではありませんが、ワンクッションあっても良いのではないでしょうか。

病院・クリニックへ受診する前に、薬剤師に相談してください。

薬剤師の役割は、薬に対しての安全性や健康指導だけではなく、健康に関する相談から適切な治療プラン(市販薬の服用、受診勧奨、養生法)の提案をする役割もあることを知ってください。

現状をお話しすることで、体調がよくなることもあります。

いつも同じ薬剤師に相談することで顔色、表情や歩き方、口調などからもあなたの体調の変化を読み取り健康維持、未病対策のための手助けとなることは間違いありません。

高齢の方は自分で適切な方法を選択することが困難なことがあります。ご家族の方も積極的に関わって、薬害を少なくしていきましょう