薬膳について(基本と歴史)
薬膳の基本と中医学について
健康の基本といえば、快眠・快食・快便と言われます。その中でも、少なくとも1日1回、通常3回取り入れている食事。病気の多くは生活習慣に原因があり、食事は重要な要素の一つでもあります。
漢方相談の中で多くの方が
・自分はどんな食事をしたらよいのか
・食べてはいけないものはありますか
・お勧めの食材を教えてください
とご質問があります。
それだけ、健康のためには食事が大切であるということをわかっているのだけれども、近年、情報量が多すぎて何が正しくて、なにが間違いなのかを見極めることが困難となっています。
そこで、健康志向の高い多くの方が気になっている”薬膳”についてまとめてみました。
少しでもご参考になれば幸いです。
薬膳とは何か
薬膳は中国の伝統医学である「中医学」の自然哲学を基本に、食事で病気を予防したり、健康維持・増進に利用したりして食物の性質と経験から積み重ねてきて学問にした「食養学」の考えが発展したものです。
薬膳の定義とは
『中医学の理論に基づき、食材や生薬を組み合わせて作る料理、又は食事』
のことです。ただ単に、生薬を利用した食事のことではなく、中医学理論に基づいて体のバランスを整えるために、食する人の体質や症状、その日の体調、季節などに合わせて作る食事のことなのです。
なんだか難しそうに聞こえますが、私たちが普段食べている食材も中医学理論に当てはめるとどんな時(時期、気候)に、どんな人(体調、体質)が摂るとよいのかということは明確に分かれています。そこに、生薬を必要な分だけ混ぜて、毎日の生活で取り入れていただくことがおすすめの薬膳方法です。
薬膳の歴史
薬膳というものは、新しいものではなく武王が殷(いん)を滅ぼし周王朝を築いたときの周の時代(紀元前10世紀~7世紀)における官僚制度のことが書かれた「周礼(しゅうらい)」に、「食医」(医制として、他「疾医」「瘍医」「獣医」の4つの区分がありました。)という言葉が出てきているところから、すでにその時代には、皇帝や妃の健康維持・養生のために、治療や予防効果のある食事を施していたとが記録に残っているのです。
(国立国会図書館デジタルコレクションより引用)
薬膳の理論は、有名な中医学理論の医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」の「素問」に「五味(辛・甘・酸・苦・鹹)」や五味と五臓の関係(五行説)、薬や食材の配合、使い方などについて記載され、理論として整理されてきました。
黄帝内経は、黄帝と師の岐伯(紀伯)との問答の形で、東洋医学の思想、養生のことを語った古典書です。この本は「素問」と「霊枢」との二部分に別れています。
引用:「まんが 黄帝内経」編訳.張恵悌
最古の薬学専門書である「神農本草経」では植物・果物・動物・鉱物などの生薬と食材が紹介、365種が上品・中品・下品の3ランクに分類され、五味の臨床応用、薬物の産地・採取・炮製・配合・禁忌・服用方法など、用薬の原則といえる基本理論が示され、病名170種も記されています。
「傷寒雑病論」は3世紀初めに名医.張仲景(ちょうちゅうけい)が著した医学書であり、現在は「傷寒論」と「金匱要略(きんきようりゃく)」に分かれて伝わっています。「金匱要略」は循環器、呼吸器、消化器、精神疾患など多くの慢性疾患の治療について、「傷寒論」は急性疾患の治療について著述されていて、「傷寒論」の中に、生薬と食材とを組み合わせて作った薬が多く登場しています。
■材料
当帰・・・・・20g
羊肉・・・・・300g
ショウガ・・・12g
コショウ・・・2g
花椒粉・・・・2g
食塩・・・・・適量
花椒粉:山椒の果皮を乾燥させた香辛料(麻婆豆腐などにも利用します)
■つくりかた
1.羊肉は塊に切って、沸騰した水の中に入れゆがいて血抜きします。
2.当帰は軽く水で洗い、ショウガはスライスにしておきます。
3.土鍋に適量の水と羊肉、当帰、ショウガを入れ、強火で煮立たせアクをとります。
4.弱火にして1時間じっくり煮込みます。
5.羊肉が柔らかくなったら、コショウ、花椒粉、食塩で味を整えます。
お好みでねぎを加えてみてください。
■伝えられている適用
血虚、陽虚体質;貧血傾向で冷えやすく、疲労、めまい、夜間尿のある方に
【参考資料】薬膳アドバイザー養成講座:東京カルチャーセンター、薬膳LAB.
薬膳の発展
薬膳の発展には多くの方が携わっていますが、中国四川省の成都にある同仁堂という漢方店が薬膳レストランを1980年に開いてから、世界に知られるようになりました。
それまでも長い歴史の中で、中国の医学書「千金方」「本草鋼目」などでも紹介され、それまで黄帝や妃、宮廷の人たちだけが利用していた「食養」は、民間にも普及し様々なレシピが残されています。
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