中医学の診断と治療の基本「弁証論治」とは?

漢方基礎知識

漢方相談では、最初にお客様のお話をじっくり伺います。
「どこが悪いのか」「どんな症状があるのか」だけでなく、
・いつから
・どのようなきっかけで
・どんな時に悪化するのか、軽くなるのか
・体質や生活習慣、食事の傾向
など、細かな点までお聞きします。

これは単なる問診ではなく、中医学でいう「弁証論治(べんしょうろんち)」のための大切な過程です。

中医学の基本「弁証論治」とは 

  • 弁証(べんしょう)
    四診(望診、聞診、問診、切診)を通じて、患者の状態を総合的に分析し、「証(しょう)」を導き出します。
  • 論治(ろんち)
    導き出された証に基づいて、適切な治療法を決定します。

つまり弁証論治とは、

からだの“サイン”を読み解き、その人に合った治療を導き出す方法といえます。

同じ「頭痛」でも、
・ストレスで気が上がっているタイプ(肝陽上亢)
・冷えによる血行不良タイプ(瘀血・陽虚)
・胃腸が弱くエネルギー不足のタイプ(気虚)
では、処方がまったく異なります。

「体質を見極める」中医学的カウンセリングの裏側

弁証論治のカウンセリングでは、問診のほかに、
・顔色や舌の色
・声のトーンや話し方
・脈の状態(脈診)
なども参考にします。

体の内側で起きている変化は、必ずどこかに“現れ”として表れています。
その小さな変化を見逃さず、今の体質や気血水のバランスを探っていくのが、漢方薬局で行う中医学的カウンセリングの特徴です。

  • 望診(ぼうしん):顔色、舌の状態、姿勢などを観察します。
  • 聞診(ぶんしん):声の調子、呼吸音、咳の音、口臭などを聞きます。
  • 問診(もんしん):症状の詳細、病歴、食事、睡眠、生活習慣などを質問します。
  • 切診(せっしん):脈の状態や腹部の触診などを行います。

弁証論治⇔カウンセリングを繰り返す

 漢方治療では、初回のカウンセリングで伺った体の状態に基づいて処方を行いますが、それで終わりではありません。漢方薬を服用していただき、その後の変化を確認しながら、治療を進めます。
この「弁証論治」と「カウンセリング」の繰り返しによって、より正確で効果的な治療へと導いていきます。

病名ではなく「あなた自身」を診る

病院では「胃炎」「不眠症」「自律神経失調症」などと診断されますが、
漢方では病名よりも“なぜそうなったのか”を重視します。

たとえば同じ「不眠」でも、
・心と肝の熱が高ぶって眠れない
・血や陰が不足して眠りが浅い
・ストレスで気が巡らず眠れない
など、原因は人それぞれです。

だからこそ、同じ病名でも処方が違う。
これが弁証論治の最大の魅力であり、オーダーメイド治療の原点です。

治療の原則

弁証論治に基づく治療では、以下の原則が重要です

  • 治病求本:病気の根本原因を追求し、対処療法にとどまらず、根本的な治療を行います。
  • 同病異治:同じ病名でも、患者の状態や体質により治療法が異なることを認識します。
  • 異病同治:異なる病名でも、共通する病理状態があれば、同じ治療法が適用されることがあります。

みなみ野漢方薬局の取り組み

当店では、お客様一人ひとりの体質や生活背景を丁寧に伺い、
「今のあなたに合う」漢方を一緒に考えていきます。

病名や検査結果だけでは見えない“体の声”を聴くこと。
それが、大切にしている中医学的カウンセリングです。

「なんとなく不調」「原因がわからない体の変化」
そんな時こそ、中医学の視点で一度見直してみませんか。

まとめ

  • 弁証論治は、中医学における「診断」と「治療」を一体化した考え方
  • 患者の体質や症状に合わせてオーダーメイドで治療を行う
  • 四診で体の状態を観察・分析し、「証」を導くことが出発点
  • 同じ病名でも人によって治療法が異なる「同病異治」、異なる病でも治療法が同じ場合がある「異病同治」が基本原則
  • 弁証論治を理解することで、中医学的な健康管理や病気の根本的な改善につなげられる

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