突然の激しい不安や動悸、息苦しさに襲われるパニック症や過呼吸。「また起きるのではないか」という予期不安から、外出や日常の行動が制限されてしまう方も少なくありません。
西洋医学では抗不安薬などを用いた治療が一般的ですが、
・薬を徐々に減らしていきたい
・根本的な体質から見直したい
という方
におすすめしたいのが漢方治療(弁証論治:自分の体質・原因に合った治療法)です。
なぜパニック症・過呼吸が起きるのか?
パニック症や過呼吸の発作が起きるとき、体の中では一体何が起きているのでしょうか。
当店では、これを単なる「メンタルの問題」ではなく、自律神経の過敏な変化(気滞)が、一瞬にして全身の血流や血圧を激しく乱す(瘀血)ことで起きる「ドミノ現象」であると考えています。
始まりは、自律神経の「過敏なスイッチ」(気滞)
精神的なストレスや過労が重なると、体をコントロールしている自律神経(中医学では主に五臓「肝」が関係します)が過度に緊張し、エネルギーの巡りが一瞬で乱れます(肝の疎泄失調による「気滞」の発生)。
これが、発作の前に感じる「喉のつかえ感(梅核気)」や、胸がギューッと詰まるような前兆の正体です。
連動して起きる「激しい血流・血圧の乱れ」(瘀血)
漢方には「気が巡れば血も巡る」という原則がありますが、その逆も然りです。
自律神経がパニックを起こすと、一瞬にして全身の血管が収縮し、血流の悪化や急激な血圧の変動(急性の瘀血状態)が引き起こされます。
異常事態に、各臓器が悲鳴を上げる(気逆・症状化)
急激な血流の乱れによって、脳や各器官は「酸素が足りない!」「異常な圧力がかかっている!」と錯覚し、パニック(気の逆流)を起こします。
気の滞りは、下降すべき気が逆流する現象を引き起こします。この状態を「気逆(きぎゃく)」とよび、主に以下のような状態を引き起こします。
- 肺気逆(はいきぎゃく): 呼吸器がパニックを起こすと、激しい動悸とともに、空気を懸命に吸い込もうとして過呼吸(過換気)になります。
- 胃気上逆(いきじょうぎゃく): 消化器がパニックを起こすと、激しい吐き気や胃のせり上がり感となります。
- 肝陽化風(かんようかふう): 血流の乱れが脳に急激に及ぶと、激しいめまい、ふらつき、頭のドクドク感に襲われます。
慢性化を招く「心身の栄養不足」(血虚・気虚)
この激しい自律神経の乱れ(気滞)と血流の乱れ(瘀血)を繰り返すと、心身を支えるエネルギーや栄養(気血)が激しく消耗されてしまいます。
脳や心を潤す「血(けつ)」が不足する(心血虚・肝血虚)と、発作が起きていない平時でも「またあのおそろしい状態になったらどうしよう」という強い予期不安や不眠が消えなくなってしまうのです。
状態に合わせた「段階的な漢方アプローチ」
このように原因の連鎖が明確だからこそ、当店ではその時の状態に合わせて、最適な漢方薬を選定します。
- 発作期(急性期): まずは自律神経の昂ぶり(気滞)を解きほぐし、突き上げるエネルギー(気逆)を速やかに引き下げる漢方(半夏厚朴湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、苓桂朮甘湯など)を用います。
- 慢性期・予期不安期: 過敏になった自律神経を鎮めつつ、血流の乱れ(瘀血)を改善し、さらに消耗した心身の栄養(血)を補う漢方(加味逍遥散、抑肝散、加味帰脾湯など)で、「そもそも発作が起きない強固な土台」を創り上げます。
おすすめ養生法:自律神経をリセットする「腹式呼吸」
漢方薬で体の内側からバランスを整えることと並行して、日々の生活の中でご自身でも自律神経をコントロールする術を身につけることが、根本改善への大きな近道となります。
そこでおすすめしたいのが、いつでもどこでも道具なしでできる「腹式呼吸」です。
なぜ腹式呼吸が効果的なのか?
パニック発作や過呼吸が起きているときは、交感神経が過剰に興奮し、浅く速い呼吸(胸式呼吸)になっています。これにより、さらに気が突き上げ(気逆)、血管が収縮して血流が乱れる(瘀血)という悪循環に陥ります。
人間の体の中で、自律神経(交感神経・副交感神経)を唯一、自分の意志でダイレクトにコントロールできるのが「呼吸」です。
ゆっくりと深く息を吐く腹式呼吸を行うと、横隔膜が上下に大きく動きます。横隔膜の周辺には自律神経が密集しているため、ここを刺激することで副交感神経の働きを急速に活性化させ、交感神経の異常な興奮をグッと抑え込むことができます。つまり、ご自身の力で「気滞」をほぐし、「瘀血」による血流の乱れをリセットできるのです。
自律神経を整える腹式呼吸のステップ
「少し胸がザワザワするな」「喉がつまるな」と感じたときや、夜寝る前などに、以下のステップを数回繰り返してみてください。
- まずは「吐く」ことからスタート
息を吸うことよりも、「吐き出すこと」が最優先です。口をすぼめて、お腹をペタンコにへこませながら、体の中の悪い気をすべて吐き出すイメージで、7〜8秒かけてゆっくりと息を吐ききります。 - 鼻から優しく「吸う」
完全に吐ききると、意識しなくても自然と空気が入ってきます。3〜4秒かけて、吸った空気がお腹に溜まり、風船のように膨らむのを意識しながら鼻から優しく吸い込みます。 - 「吐く:吸う=2:1」の意識で
「吸う時間の2倍かけて吐く」のがポイントです。これを4〜5回繰り返すだけで、上がっていた気が下へと静まり、手足の血管が広がってジワリと温かくなってくる(血流が戻ってくる)のを感じられるはずです。
パニック発作の最中は、パニックの渦中にあってうまく呼吸をコントロールできないことも多いです。そのため、「発作が起きていない平時のとき」に日常のルーティンとして練習しておくことをおすすめします。普段から副交感神経にスイッチを入れる訓練をしておくことで、万が一予期不安に襲われたときにも、お守りのようにあなたを助けてくれます。
当店の漢方治療の流れ
パニック症や過呼吸の治療において、最も重要なのは「じっくりとお話を伺うこと」です。どのような時に不安を感じるか、普段の睡眠や胃腸の状態などを丁寧にお聞きし、最適な漢方薬を選定します。
- 丁寧なカウンセリング(初回:約40分)
現在の症状だけでなく、体質、生活習慣、過去の経過などを詳しく伺います。 - 体質・病態の分析
漢方特有の視点から、なぜ今その症状が出ているのか、原因をわかりやすくご説明します。 - オーダーメイドの漢方薬をご提案
お客様の体質に合わせた最適な漢方薬(エキス剤または生薬)を調合・処方いたします。 - アフターフォローと生活養生のご相談
お薬の服用を始めてからの変化を確認しながら、食事や呼吸法、セルフケアのアドバイスも行います。
よくあるご質問(Q&A)
- Q西洋医学の抗不安薬や睡眠薬を服用中ですが、併用できますか?
- A
はい、併用可能です。自己判断で西洋薬を急にやめてしまうと、離脱症状(リバウンド)で症状が悪化することがあります。まずは漢方薬を併用して体調を底上げし、状態が安定してきたら、主治医の先生と相談しながら少しずつ西洋薬を減らしていく(減薬・断薬)というステップが最も安全です。
- Q効果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか?
- A
突発的な動悸やのどのつかえ感などの症状に対しては、服用後数十分~数日で効果を実感できるものもあります。しかし、パニック発作が起きにくい体質へ根本から変えていくためには、一般的に3ヶ月~半年程度、じっくりと継続して服用いただくケースが多いです。
- Q漢方薬を飲んでいれば、発作は完全に起きなくなりますか?
- A
漢方薬は発作の頻度を減らし、もし発作が起きても「いつもより軽く済む」「早く落ち着く」という状態へ導きます。この「自分でコントロールできる」という自信が、予期不安を解消する最大の近道になります。
過呼吸やパニック症は、決して「心が弱いから」起きるわけではありません。ストレスの連鎖によって、体の中のエネルギーバランスがコントロールを失っている状態です。
「この苦しみを誰もわかってくれない」と一人で抱え込まず、まずはそのお悩みをお聞かせください。あなたの体が発しているサインを正しく読み解き、本来の穏やかな毎日を取り戻すために、全力でサポートさせていただきます。どうぞ安心してお気軽にご相談ください。

