前回は五臓シリーズ第一回として「心」について解説しました。今回は「肝」。
肝は五臓の中で「将軍の官」とも呼ばれ、全身の気や血の流れを調整する重要な臓です。とくに精神活動やストレス反応、女性の月経とも深く関わります。
肝の主な働き
疏泄作用:気の流れを調える
中医学でいう肝の最大の特徴は「疏泄作用」。これは気(エネルギー)の流れをスムーズにする働きです。
- 情緒を安定させる
- 消化吸収を円滑にする
- 気血の巡りを助ける
ストレスでイライラしたり、胸やお腹が張る感じがするのは、肝の疏泄がうまく働いていない「肝気鬱結」の状態と考えられます。
蔵血作用:血を貯え、必要時に配分
肝には「血を蔵する」働きもあります。
- 睡眠中には血を肝に蓄える
- 運動時や活動時には血を全身に送り出す
- 女性の月経や妊娠に大きく関与する
このため、肝の不調は月経不順や生理痛、不妊など婦人科系の問題として現れることも多いです。
表裏関係:胆とのつながり
肝と胆は表裏の関係にあります。胆は「決断を司る」とされ、肝の疏泄作用を助けます。胆の働きが弱まると優柔不断になりやすく、肝の不調とリンクして精神面の不安定さを生みます。
五官・五華・五情との対応
| 分野 | 対応 | 意味 |
|---|---|---|
| 五官 | 目 | 目の充血・かすみ目・ドライアイは肝血不足や肝火上炎のサイン |
| 五華 | 爪 | 爪の色・艶・割れやすさは肝血の状態を反映 |
| 五情 | 怒 | 怒りやすさ・イライラは肝気の停滞や上昇に関係 |
肝が弱ったときに現れる症状
肝の疏泄や蔵血が乱れると、次のような症状が出やすくなります。
- 肝気鬱結:イライラ、胸脇部の張り、げっぷ、喉のつかえ感
- 肝火上炎:頭痛、めまい、顔のほてり、目の充血、不眠、怒りっぽい
- 肝血虚:めまい、爪が割れやすい、かすみ目、不眠、こむら返り、月経量が少ない
- 肝陽上亢:高血圧、耳鳴り、頭痛、肩こり
養生の視点:肝を守る方法
- ストレス発散:軽い運動・趣味・深呼吸で気の巡りを整える
- 目を休める:長時間のスマホやPC使用は肝血を消耗するため注意
- 食養生:酸味(梅、山査子、酢など)は肝を補佐し、緑の野菜は肝の働きを助ける
- 睡眠の確保:夜更かしは肝血の回復を妨げる
まとめ:五臓「肝」について
- 「肝」は五臓の中で 気の流れを調え、血を貯える臓。
- 主な役割は
1.疏泄作用(気の巡りを整え、精神・感情・消化を調整)
2.蔵血作用(血を蓄え、運動や月経時に全身に供給)
3.胆と表裏関係(決断力や精神の安定に影響) - 目、爪、怒りなどに症状が表れやすい。
- 肝の機能が乱れると、イライラ、胸や脇腹の張り、頭痛、目の充血、月経不順、めまいなどが現れる。
- 養生のポイントは、ストレス発散・目の休養・緑の野菜や酸味の摂取・十分な睡眠。
- 他の臓(心・脾・肺・腎)と連携して働くため、全身の調和を意識することが大切。


