中医学では、自然界の変化や気候が体に与える影響をとても重視します。
その中でも「六淫（りくいん）」とは、風・寒・湿・暑・燥・火（熱）といった気候の変化が、体のバランスを崩す原因になると考えられています。
本来、これらは季節に応じて変化する自然のエネルギー「六気（りくき）」ですが、
その変化が過剰になったり、体の抵抗力（正気）が弱まったりすると、「六淫」として体に悪影響を及ぼすようになります。
六淫の種類と特徴
| 種類 | 特徴 | 体への影響・代表的な症状 |
|---|---|---|
| 風邪 （ふうじゃ） | 変化が速く、他の邪気と結びつきやすい | 頭痛、鼻水、関節痛、アレルギー、かゆみなど |
| 寒邪 （かんじゃ） | 冷えによって体を収縮させる | 冷え、腹痛、関節痛、血流の滞りなど |
| 湿邪 （しつじゃ） | 重く停滞しやすく、下半身に影響しやすい | むくみ、倦怠感、胃もたれ、関節の重だるさ |
| 暑邪 （しょじゃ） | 強い熱をもつ夏特有の邪気 | のぼせ、めまい、発汗過多、脱水、熱中症など |
| 燥邪 （そうじゃ） | 乾燥による潤い不足 | 皮膚や喉の乾き、咳、便秘、肌荒れ |
| 火邪・熱邪 （かじゃ・ねつじゃ） | 炎症や熱を引き起こす | 発熱、炎症、口内炎、のぼせ、怒りっぽさ |
六淫の影響を受けやすいときとは？
六淫の影響を強く受けるのは、正気（せいき）＝体の防御力が弱っているときです。
睡眠不足、食生活の乱れ、過労、ストレスなどが続くと、体の抵抗力が低下して「邪気」が侵入しやすくなります。
また、季節や環境の変化にも敏感になり、ちょっとした気温差でも不調を感じやすくなることがあります。
これが「未病（みびょう）」と呼ばれる、病気の一歩手前の状態です。
六淫を防ぐための養生法
六淫による不調を防ぐには、日常の中で次のような工夫を意識するとよいでしょう。
- 風邪対策：季節の変わり目は衣類で温度調節を。首・背中・足首を冷やさないように。
- 寒邪対策：温かい食材（生姜・シナモンなど）で内側から温める。
- 湿邪対策：食べ過ぎや冷たい飲食を避け、消化を助ける。
- 暑邪対策：水分とミネラルをこまめに補給。強い日差しを避け、休息をとる。
- 燥邪対策：加湿器や潤い食材（梨・蜂蜜・白きくらげなど）で乾燥を防ぐ。
- 火邪対策：辛い物やアルコールを控え、緑豆や苦瓜（にがうり）などで熱を冷ます。
まとめ
- 六淫とは、自然界の「風・寒・湿・暑・燥・火（熱）」の六つの外的要因。
- 体の抵抗力（正気）が弱まると、これらが「邪気」として体に侵入し不調を起こす。
- 養生の基本は、「季節に逆らわず、自然に調和して暮らす」こと。
- 邪気を防ぐだけでなく、正気を高めること（扶正）が、健康維持と未病予防の鍵。
自然の変化とうまく付き合うことが、中医学の養生の原点です。
日々の気候を感じながら、体をいたわる生活を心がけましょう。