漢方薬は処方名が同じであれば効果は同じなのか

漢方トピック

【結論】

  • 処方名が同じでも、剤型(煎じ薬・エキス顆粒・錠剤など)、エキス濃度、生薬の品質、抽出方法、賦形剤(添加物)などの違いにより、実際に体感する“効き方”に差が出ることがあります。
  • 一方で、基本的な効能・効果の範疇(適応)は変わらないため、使用時は”どのように”飲むか・”どのメーカー”を選ぶか・個々の体質や併用薬を含めた相談が重要です。

はじめに

お客様からよくいただくご質問の一つに「同じ処方名の漢方薬が複数メーカーから出ているが、どれも同じ効果なのか」というものがあります。本稿では、代表的な処方(例:補中益気湯)を例にとり、メーカー間で何が異なり、それが効き方にどう影響する可能性があるかをわかりやすく整理しました。

『処方名』と『日本薬局方』の関係

漢方処方名(例:補中益気湯)は古典処方に基づく名前・配合概念であり、日本薬局方や各製薬会社はその処方名に沿って製剤(煎じ薬やエキス剤)を作ります。日本薬局方に収載されている生薬量や組成は、製剤の基準として重要な情報です。

日本薬局方の収載情報

【製剤名】補中益気湯
【成分及び分量又は本質】
日本薬局方 ニンジン  ・・・・4.0g 日本薬局方 ビャクジュツ・・・・4.0g
日本薬局方 オウギ   ・・・・4.0g 日本薬局方 トウキ   ・・・・3.0g
日本薬局方 チンピ   ・・・・2.0g 日本薬局方 タイソウ  ・・・・2.0g
日本薬局方 サイコ   ・・・・1.0g 日本薬局方 カンゾウ  ・・・・1.5g
日本薬局方 ショウキョウ・・・・0.5g 日本薬局方 ショウマ  ・・・・0.5g
(全 量・・・22.5g)
[効能又は効果]
体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒

補中益気湯のメーカー別比較例


メーカー剤型1日分の
エキス含有量(g)
原生薬
換算量
服用
回数
特徴・備考


ツムラ顆粒5.028g相当3回定番エキス顆粒。服用しやすく保存性良好


小太郎細粒5.025g相当3回エキス細粒。溶けやすく飲みやすい。生薬の品質に定評あり。


クラシエ丸剤7.030g相当2回丸剤で飲みやすく、高齢者や小児向け



自社煎じ薬30g生薬
そのまま
2~3回伝統的煎じ薬。即効性を重視する方向け


ツムラ
(OTC)
顆粒4.024g相当3回医療用よりややエキス量少なめ、服用しやすい。


クラシエ丸剤6.026g相当2回医療用より少し少なめ。味・服用しやすさ重視。

剤型の違い(煎じ薬、エキス顆粒、錠剤、丸剤など)

  • 煎じ薬(生薬を煎じる):伝統的な飲み方で、生薬そのものを煎じて飲むため、成分の取り込み方が最も原初に近いと考えられます。
  • エキス顆粒/細粒:乾燥した抽出エキスを顆粒にしたもの。保存性・服用しやすさに優れますが、煎じ薬と成分量や比率が異なることがあります。
  • 錠剤・丸剤:製剤化の都合で賦形剤(添加物)が入ることが一般的で、原料換算量が少なくなる場合や、服用時の溶け方が効き方に影響することがあります。

エキス濃度って何を示すのか

「エキス濃度」とは、製剤に含まれる水製乾燥エキスの重量(g)を示すことが多く、各社は1日分や1包あたりのエキス含有量を公表しています。

同じ処方でも『含まれるエキス量』が異なれば、原生薬換算での生薬投与量に差が出ます。これが効き方の違いの一因になります。

賦形剤(添加物)の違いと注意点

錠剤や顆粒を作る際には、流動性・打錠性・保存性を向上させるために賦形剤や崩壊剤、光沢剤などが用いられます。これらは製剤としての長所を作る一方で、アレルギー源になる可能性や溶解性の違いによる吸収差を生むことがあります。

効果に差が出ると考えられる主な理由

  • 原料(生薬)の質の差:産地、採取時期、加工方法により有効成分量に差が出ます。
  • 抽出法・製造技術:抽出温度や時間、濃縮方法が異なればエキス組成も変わります。
  • エキス濃度・含有量の違い:製品ごとのエキスg数や原生薬換算量が異なると、単純な投与量が変わります。
  • 剤型や賦形剤による溶解・吸収の差:錠剤は崩壊剤の有無や設計次第で溶け方が変わり、顆粒と比べて体内への到達速度が変わる場合があります。
  • 個人差・併用薬:消化吸収能力や他薬剤の有無で体感は変わります。

結果として、同じ処方名でも”体感”(効き目の出方・速さ・持続性)には差が出得る、というのが現場での実感です。

薬局としての実務的な対応

  • 当店ではメーカーごとに効き方や飲みやすさに差があると考え、処方によってはメーカーを厳選してご提供しています。
  • 服用後の経過観察を大切にし、前に使っていた同一処方の他社製品と比較して実感差がある場合は、配合や製剤を見直すことを検討します。

Q&A

Q1. 同じ処方ならどのメーカーでも安心して良いですか?
A. 広い意味では効能の範囲は同じですが、実際の効き方や飲みやすさには差が出ることがあります。気になる方は相談してください。

Q2. エキス濃度が高ければ良いのですか?
A. 一概には言えません。濃度だけでなく生薬の質、溶けやすさ、患者さんの体質などを総合的に見る必要があります。

まとめ

  • 処方名が同じでも「剤形」「エキス濃度」「生薬の質」「賦形剤」「抽出法」などの違いにより、効き方に差が出ることがあります。
  • 重要なのは「処方名」だけで決めず、実際の製剤(剤形・メーカー)や患者さん個々の反応を見ながら選ぶことです。当店ではその点を重視して製品選定・相談を行っています。

相談予約・店舗案内

みなみ野漢方薬局
〒192-0917 東京都八王子市西片倉2-12-12
: 042-638-8860
定休日:水曜、第一日曜(年末年始の他臨時休業があります)
営業時間:午前10時~午後7時
管理薬剤師:松田哲男
mail@minamino-kanpou.com
https://x.com/minamino_kanpou
: https://lin.ee/PYnf0bm

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