乾癬(かんせん)に対する漢方治療について

皮ふ疾患

乾癬に対する漢方治療は、皮膚の表面に現れている症状だけでなく、
「なぜその症状が出ているのか」という体質的な原因(根本)に目を向けることを大切にしています。

西洋医学では、ステロイド外用薬や免疫調整薬などによる炎症コントロールが治療の中心となりますが、
漢方ではそれに加えて、「血(けつ)」の状態や「内臓の熱・巡り」といった体の内側のバランスに注目し、
症状が起こりにくい体づくりを目指して治療を組み立てていきます。

漢方における乾癬の主な考え方

乾癬は経過が長く、時期によって皮膚の状態や体の反応が変化する病気です。
漢方では、現在の状態を見極めるために、主に以下の4つの病態を考えます。

血熱(けつねつ):炎症が激しい進行期

発症初期や、ストレス・不摂生などをきっかけに悪化している時期に多く見られる病態です。
体内に過剰な「熱」がこもり、それが血液にまで及び、皮膚に強い炎症として現れている状態と考えます。

  • 皮膚は鮮やかな赤色で、新しい発疹が次々と現れ、痒みが強いのが特徴です。
  • 治療では「清熱涼血(せいねつりょうけつ)」を基本に、血液の熱を冷まし、炎症の勢いを鎮めます。

湿熱(しつねつ):分泌物やジュクつきを伴う時期

脂っこい食事、甘いもの、アルコールなどの影響を受けやすい病態です。
水分代謝がうまくいかず、体内に「熱」と「湿(余分な水分)」が停滞している状態と捉えます。

  • 赤みとともにジクジクした滲出液を伴ったり、厚いかさぶた(痂皮)や独特の臭いを伴うこともあります。
  • 「清熱利湿(せいねつりしつ)」を用いて、熱を冷ましながら余分な水分を体外へ排出します。
  • このタイプは、食生活や生活習慣の見直しによって改善しやすい病態でもあります。

血瘀(けつお):症状が固定化した時期

乾癬が長引き、皮疹が厚く固定化している状態です。
中医学では「久病入絡(病が長引くと細部に入り込む)」と考え、血流の滞りが生じていると捉えます。

  • 皮膚は暗い赤色や紫がかった色になり、改善しにくくなります。
  • 血流を改善することで皮膚の新陳代謝を促し、古い皮疹が少しずつ入れ替わる環境を整える治療を行います。

血虚風燥(けっきょふうそう):乾燥が強い時期

皮膚を潤す栄養である「血」が不足し、乾燥が進んでいる状態です。

  • 赤みは淡くなり、皮膚が薄く乾燥し、白い粉状の鱗屑が落ちやすくなります。
  • 夜間に痒みが強くなる傾向がありますが、これは夜は血が消耗しやすく、皮膚の潤いが不足しやすいためと考えられています。
  • 治療では「養血潤燥(ようけつじゅんそう)」を行い、皮膚のバリア機能回復を目指します。

乾癬は、これら複数の病態が重なり合っていることも少なくありません。当薬局では、今のあなたの皮膚が『熱』を求めているのか、『潤い』を求めているのか、それとも『巡り』を求めているのかを、漢方の視点で見極めます。

よく用いられる漢方薬

※以下は一例です。同じ乾癬でも、体質や症状により使用する漢方薬は大きく異なります。

血熱

  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう): 全身の強い熱感と赤みを鎮めます。
  • 消風散(しょうふうさん): 痒みが激しく、熱を持って盛り上がっている場合に多用されます。
  • 槐角丸(かいかくがん): 涼血止血作用があり、特に出血しやすい鮮紅色の皮疹に。
  • 五味消毒飲(ごみしょうどくいん):赤みが非常に強く、触れると熱を持っていて、時には膿(うみ)を伴うような激しい炎症に

湿熱

  • 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう): 下半身に強い症状が出やすい、炎症の強い湿熱に。
  • 茵蔯五苓散(いんちんごれいさん): むくみを伴い、熱を水分とともに流したい場合に。
  • 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう): 化膿傾向があったり、水ぶくれ(膿疱)を伴う場合に。

血瘀

血流を改善することで、皮膚の新陳代謝を促し、古い皮疹が少しずつ剥がれ落ち、新しい皮膚へと置き換わる環境を整えます。

  • 桂枝茯苓丸: 皮膚の微小循環を改善し、炎症の慢性化を防ぎます。
  • 通竅活血湯: より頑固な色素沈着や、血行不良が顕著な場合に検討します。
  • 冠元顆粒(丹参製剤): 血行促進とともに抗酸化作用も期待でき、補助的に用いられることが多いです。

血虚風燥

  • 当帰飲子(とうきいんし): 皮膚の乾燥と痒みを止める代表薬。高齢者の乾癬にも多用されます。
  • 四物湯(しもつとう): 血を補う基本処方。他の処方と組み合わせてベースアップを図ります。
  • 温清飲(うんせいいん): 血熱(黄連解毒湯)と血虚(四物湯)が混在し、乾燥しつつも赤みが引かない頑固な症状に。

※ここに挙げた漢方薬はあくまで一例です。
実際には、皮疹の状態・体質・年齢・併用薬などを総合的に判断し、処方を決定します。
同じ「乾癬」という診断名でも、使用する漢方薬は人によって大きく異なります。

漢方治療とあわせて大切にしたい生活習慣

漢方では「医食同源」を重視するため、薬を飲むだけでなく、以下の習慣も見直しの対象となります。

  • 食事: 辛いもの、アルコール、脂っこいものは体内に「熱」を溜めやすいため、控えることが推奨されます。緑黄色野菜や苦味のある野菜(ゴーヤ、セロリなど)は、体内の余分な熱を逃がす助けになります。
  • ストレス: 漢方では「肝(かん)」の働きが乱れると皮膚に影響すると考えます。リラックスする時間が重要です。
  • 睡眠: 夜の睡眠は「血」を蓄え、皮膚を修復する大切な時間です。

喫煙と乾癬のリスク

西洋医学的な疫学調査において、喫煙は乾癬の発症および悪化の明確なリスクファクターとされています。

  • 微小循環への悪影響: ニコチンによる血管収縮は、漢方で言う「血瘀(けつお)」を助長し、皮膚の再生を妨げます。
  • 活性酸素の発生: 喫煙は体内に大量の活性酸素を生み出し、免疫系を刺激して炎症を遷延させます。
  • 治療効果の低下: 非喫煙者に比べ、喫煙者は薬の効きが悪いというデータもあります。再燃しにくい状態を目指すなら、まずは「禁煙」が最大の治療の一歩となります。

漢方治療をお考えの方へ

乾癬の治療は、効果を実感するまでに数ヶ月単位の時間がかかることが一般的です。
また、自己判断で現在行っている西洋医学的治療(外用薬など)を急に中止すると、
症状が悪化する(リバウンド)こともあります。

漢方療法は、表面の炎症を抑えるだけでなく、
体質や生活背景を整えることで、症状が出にくい状態を目指す治療です。

みなみ野漢方薬局では、皮膚の状態だけでなく、これまでの経過や生活習慣も丁寧にお伺いし、
今のあなたに必要な漢方治療と養生をご提案いたします。

「今の治療に限界を感じている」「再発を繰り返している」
そのような方も、どうぞお気軽にご相談ください。

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