にきび(尋常性痤瘡)・おできの漢方薬

にきび(尋常性痤瘡)・おできの漢方薬

漢方治療のすすめ

10代から30歳代までの男女の顔面、背中、胸などに発症する皮膚疾患「にきび」。
時々できてはすぐに治るケースもあれば、慢性的に発症を繰り返し、時に悪化して皮膚が凸凹して痕が残り、外見的にも精神的にも悩ませる疾患です。

多くの方が、洗顔剤やスキンケアに力を入れていますが、漢方の世界では、「皮膚は内臓の鏡」というように皮膚表面に症状があってもその原因は身体の内側にあると考えます

西洋治療では抗生物質やビタミン剤、レチノイドでの治療が一般的ですが、漢方治療は身体全体の働き(体質)、生活習慣や生活リズム、ホルモンバランス、環境、ストレスなどをお伺いします。漢方薬だけでも西洋治療と合わせて行うことでも、繰り返さない体質改善に役立ちます。

思春期に発症しやすい「にきび」ですが、思春期以降でも発症することは珍しくなく、ホルモンバランス、生活習慣の乱れ、ストレス、不適切なスキンケアなどが原因して起こるため、生活習慣の改善と体質を整えることが大切です。

漢方治療の考え方

漢方治療は体質改善が基本です。
ニキビに限らず、病気の発症は3つ、
・病邪の力が強く発症するもの(例えばウイルス、細菌などが体内に侵入して発症するもの)
・防衛力、抵抗力が低下して発症(五臓や気血水の働きの低下が原因)
・体内に邪が発生しそれが原因するもの(内生の邪、五臓、気血水の働きの低下によって発生する邪)
対処方法や治療方法は以下の通り、

扶正袪邪

治療の基本は「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」。
「扶正」とは、正気を補い、働きの低下している五臓、気血水と整えること
「袪邪」とは、身体の内側から正気の働きを阻害しているものや、外部から正気の働きを阻害しているものを取り除くこと
「扶正」と「袪邪」を病状を見ながら使い分けて治療します

ニキビ治療の場合、
・病邪の勢いが強い(ほてりや炎症が強い、膿が多い、痛みがある)場合には、病邪を取り除く「袪邪治療」を中心として、「扶正治療」は補助的に行います。
・慢性的に繰り返している、治りが悪い場合には、「扶正治療」を中心として、症状が強く現れた時に「袪邪治療」を補助として行います。

五臓「肺」

中医学では、皮膚は五臓「肺」に分類します。
五臓「肺」の働きは、
・呼吸によってきれいな気を取り込み、汚れた気を排泄
・全身に栄養や潤いを与える。特に皮膚の潤いや防衛力には五臓の肺の働きが重要
・水分代謝を調整し、発汗や排尿に関係
・六腑「大腸」と関係し、排便をスムーズにする働き
・鼻と通じている

特に、肺は体表面の防衛力である「衛気(えき)」の働きに影響を与えているため、肺の働きが低下すると感染症やアレルギーが発症しやすくなります。

「衛気」を高める。風邪でもないのにくしゃみ、鼻水が・・・寒暖差アレルギー

漢方治療(処方)例

「扶正(気虚)」

気虚は、皮膚の防衛力や治癒力に影響を与え、特に「衛気」の働きの低下や不足がニキビの悪化や治療に大きく関係しているため、衛気を補うことが大切です。その代表漢方薬は『玉屏風散(衛益顆粒)』

また、衛気は飲食物から作られる気(水穀の気)や呼吸から取り入れた気(清気)と先天の気から作られているため、特に消化器官の働きが整っていない場合は、消化器官の働きを整え、正気の生成を高め、衛気を補う漢方薬『補中益気湯』、下痢や胃もたれ、消化不良、悪心、むくみなど症状によって、参苓白朮散、香砂六君子湯、加味平胃散、半夏瀉心湯などを使い分けていきます。

「扶正(血虚)」

肌の乾燥やホルモンの変動によって症状が変化するような場合は「血虚」が関係しているため、血を補う生薬を中心にした「十全大補湯」「婦宝当帰膠」「温経湯」などの処方で血を補い、皮膚の組成を整え防衛力、治癒力を高めます。

「袪邪(湿・熱)」

特に赤ニキビと言われる赤みが強く、時に痛みを伴い炎症の強いニキビや膿を伴う場合などは、「熱邪」や「湿邪」「湿熱の邪」が停滞しているため、それを取り除く「黄連解毒湯」「十味敗毒湯」「清上防風湯」「荊芥連翹湯」「竜胆瀉肝湯」「温清飲」「五味消毒飲」「防風通聖散」などが使われます。

「袪邪(瘀血)」

瘀血は、血の滞りであり皮膚再生の妨げ、正気の働きの低下、末しょう循環障害を引き起こし、その発生原因は、ストレスや飲食、運動不足、加齢(腎虚)などで、冷え症同様に万病の元と言われます。
瘀血を改善する漢方薬は、「冠元顆粒」「桂枝茯苓丸加薏苡仁湯」「通導散」「桃核承気湯」「血府逐瘀湯」「芎帰調血飲」などを使用します。

にきび、皮膚病治療に限らず、症状の変化を見ながら「扶正」と「袪邪」をバランスよく行う治療が漢方治療です。

大腸を整えよう

皮膚は内臓の鏡、特に大腸と皮膚は表裏の関係であり、大腸の働きや環境に乱れが生じると五臓「肺」に影響を与え、皮膚や呼吸器の疾患が発生しやすくなります。

特に便の異常(軟便、コロコロ便、水様便など)や排便異常(残便感、排便困難、便意がないなど)を改善することで、にきびを含む皮膚疾患が改善されやすくなります。

現代医学でも、腸内細菌のバランスが免疫疾患、アレルギー疾患と深くかかわっていることが判明し、乳酸菌や食物繊維の摂取を推奨しています。逆に皮膚の炎症が大腸の炎症を招くという「皮膚-腸相関」のメカニズムも解明されています(https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2018/11/6/28-49380/)。

皮膚の状態を安定させるためには表裏の関係でもある大腸の働きや環境を整えることを意識することが大切です。

自分に合った(便の状態が良くなる)乳酸菌飲料やヨーグルトを見つけることをお勧めいたします。

ホルモンバランス

特に女性の場合には月経周期によって皮膚の質感が変化することがあります。しかしすべての人にその変化を感じされるのではなく、特に「血虚」「瘀血」といった体質の方は、ホルモンの変動によって皮膚の症状が変化しやすい傾向にあります。

月経不順、月経困難、PMSなどがある場合には、皮膚症状を改善させるためにも婦人科系を整える体質改善を行いましょう。

食事のバランス、その他の養生

「食事」バランスよく規則正しくすること、間食はなるべく控える、よく噛んで、腹八分に抑える
「食事内容」排便の質(硬さや色)を見ながら、食物繊維の摂取を意識する
排便チェック大正製薬様サイト):https://brand.taisho.co.jp/colac/benpi/023/

「ストレスケア」ストレスは気の働きを低下させ瘀血や血虚を招きます。特に女性ではストレスによる影響が大きいため、ストレスケアが大切です。
逆に、血虚や瘀血がストレス反応を高めてしまいますので、その場合は体質改善が大切です。

「運動」皮膚は皮脂と汗がバランスよく混じることで皮膚を保護し、皮膚環境を整えています。適度に発汗することは皮膚環境を整えることに大きく役立ちます。

「スキンケア」ひどい乾燥肌の場合や髭剃り後などは保湿が大切です。洗顔は朝晩の2回で十分です。皮脂のべたつきが気になるからと言って何回も洗顔することは逆に皮脂の分泌を促進してしまいますので注意が必要です。洗顔剤はよく泡立てて、ぬるま湯でしっかり洗い流しましょう。

「睡眠」睡眠中に傷ついた細胞を修復し整えるホルモンが分泌しています。睡眠不足や夜更かし、不規則な生活は皮膚だけでなく身体全体のバランスを乱してしまいますので睡眠時間をしっかり確保していきましょう。

【ニキビケア、情報サイト】

●日本皮膚科学会;ニキビQ&A(https://minamino-kanpou.com/post-2917/


 

みなみ野漢方薬局では、一人ひとりの症状・体質、生活習慣を詳しくお伺いして、身体に合った漢方薬を選び調合いたします。お気軽にご相談ください。