十全大補湯は、体力や免疫力の低下が見られる方に広く用いられる漢方薬です。「気血双補剤(きけつそうほざい)」として知られ、消耗した「気(エネルギー)」と「血(栄養)」を同時に補うことで、心身の回復をサポートします。
効能・効果
- 病後・術後の体力低下
- 慢性的な疲労倦怠感
- 食欲不振
- 寝汗(寝汗)
- 手足の冷え
- 貧血
これらの症状は、体力や免疫力の低下を示すものであり、十全大補湯の補気・補血作用が有効です。
処方構成と生薬の役割
- 人参(ニンジン):補気薬であり、疲労や衰弱時に使用されます。
- 黄耆(オウギ):補気薬で、免疫力の向上に寄与します。
- 白朮(ビャクジュツ):補気薬で、消化機能を高めます。
- 茯苓(ブクリョウ):利水作用があり、浮腫の改善に用いられます。
- 当帰(トウキ):補血薬で、血液循環を改善します。
- 芍薬(シャクヤク):補血薬で、筋肉の緊張を和らげます。
- 地黄(ジオウ):補血薬で、腎機能を強化します。
- 川芎(センキュウ):活血薬で、血行を促進します。
- 桂皮(ケイヒ):温陽薬で、体を温めます。
- 甘草(カンゾウ):調和薬で、他の薬の作用を調整します。
これらの生薬は、四君子湯(人参、白朮、茯苓、甘草)と四物湯(当帰、芍薬、川芎、地黄)を基に、黄耆と桂皮を加えた構成となっています。これにより、気と血の両方を補う効果が高まります。
薬効・薬理作用
十全大補湯の主な薬理作用には以下が含まれます
- 体力・免疫力の向上:気と血を補うことで、全身のエネルギーと栄養状態を改善します。
- 抗腫瘍作用:がん治療において、術後の体力回復や免疫力の強化に寄与します。
- 感染抑制:免疫機能を調整し、感染症への抵抗力を高めます。
- 抗がん剤による副作用軽減:抗がん剤による体重減少や白血球減少を抑制します。
これらの作用は、臨床研究や実際の使用経験に基づいて確認されています。
併用と応用
十全大補湯は、他の漢方薬と併用することで、より効果的に使用できます
また、十全大補湯を基にした薬酒「十全大補酒」も存在し、滋養強壮や血行改善を目的としています。自家製薬酒を作成する際は、生薬の小分け販売を行っていますのでお気軽にご相談ください。
十全大補湯と類似処方の違い
十全大補湯は、気血両方を補う「気血双補剤」であり、体力や免疫力の低下が著しい方に用いられます。一方、似た処方として八珍湯や人参養栄湯がありますが、作用や対象が少し異なります。
| 処方名 | 構成・特徴 | 適応の目安 |
|---|---|---|
| 十全大補湯 | 四君子湯(補気)+四物湯(補血)+黄耆+桂皮 | 気血不足が著しく、冷えや寝汗がある方、術後や病後の体力回復 |
| 八珍湯 | 四君子湯+四物湯 | 気血不足はあるが、体力低下や冷えが十全大補湯ほど強くない方、比較的軽度の倦怠感や貧血 |
| 人参養栄湯 | 八珍湯+桂枝・黄耆・大棗など、やや温補に寄せた構成 | 高齢者の虚弱体質や体力低下、消化機能が弱い方、慢性的な疲労に適応 |
- 十全大補湯は、体力・免疫力の大幅な低下や、寝汗・冷えなどの症状が強い場合に選ばれる最も“強力な補気補血剤”です。
- 八珍湯は、十全大補湯から黄耆・桂皮を省略した処方で、補気補血はやや控えめ。比較的軽度の倦怠感や貧血に向きます。
- 人参養栄湯は、八珍湯に温補成分を追加しており、虚弱体質や高齢者向けに消化吸収しやすく調整されています。
このように、同じ“気血補う漢方”でも、体力低下の程度や冷え・消化力・年齢などに応じて処方を使い分けることが重要です。
十全大補湯は、体力や免疫力の低下に対する強力なサポートとなります。しかし、個々の体質や症状により、最適な処方は異なります。当店では、あなたの体質や症状に合わせた漢方薬の選定を行っております。お気軽にご相談ください。

