「病院から〇〇湯と〇〇散を同時に処方されていますが、一緒に服用しても大丈夫でしょうか?」
このようなご相談をいただくことがあります。
まず大前提として、最も確実で安心できる方法は 処方した医師や調剤した薬局の薬剤師に確認すること です。それでも「漢方の専門家の視点からも意見を聞きたい」という方に向けて、併用についての考え方をわかりやすく解説いたします。
基本は「一つの処方」で完結する漢方治療
漢方医学では、症状や体質に合わせて一つの処方を選び、体全体のバランスを整えることを基本としています。
処方の中に含まれる生薬は互いに調和するように組み合わされており、一つの処方で「全体をととのえる」ことが理想です。
それでも複数の処方を組み合わせることはある
実際の臨床現場では、2~3種類の処方を同時に用いることも珍しくありません。
- 体質や症状が複雑で、一つの処方では十分に対応できない場合
- いくつかの「証」(漢方での診断基準)が同時に存在する場合
- そもそも一つの処方自体が、複数の基本処方を組み合わせて作られていることが多い
このような理由から、複数処方の併用は漢方において必ずしも異例ではありません。
複数の基本処方で構成されている漢方処方
漢方の処方は、一つの方剤だけで完結しているのではなく、いくつかの基本処方を組み合わせたり、既存の方剤に生薬を加えて応用したりする形で発展してきました。こうした組み合わせの工夫によって、より幅広い症状に対応できるようになっています。
代表的な例としては次のような処方があります。
・温清飲 … 「四物湯」+「黄連解毒湯)」
・柴朴湯…「小柴胡湯」+「半夏厚朴湯」
・柴苓湯…「小柴胡湯」+「五苓散」
また、既存の処方に数種類の生薬を加えて応用した「加味処方」も数多く存在します。
・柴胡清肝湯…「温清飲」+7つの生薬
・半夏厚朴湯…「小半夏加茯苓湯」+厚朴+蘇葉
・八味地黄丸…「六味地黄丸」+桂皮+炮附子
・加味逍遥散…「逍遥散」+山梔子+牡丹皮
・抑肝散加陳皮半夏…「抑肝散」+陳皮+半夏
処方名のなかに「加」や「合」がある場合、処方に加えている又は組み合わせているという意味になります。
このように、漢方処方そのものが「複数の処方」や「生薬の追加」によって構成されていることからも、複数を組み合わせて使うという考え方は、漢方の伝統的な特徴のひとつといえるでしょう。
複数服用のときに注意すべきポイント
ただし、併用する際には以下の点に十分注意する必要があります。
1.必ず医師・薬剤師に相談をすること
→ 用量や服用のタイミングを調整する必要がある場合があります。
2.体質や症状によって効果や副作用が異なること
→ 例えば、水分代謝に関わる処方を重ねると、むくみやすくなることもあります。
3.他の薬との相互作用に注意
→ 漢方薬どうしだけでなく、西洋薬との飲み合わせにも配慮が必要です。
甘草の重複と「偽アルドステロン症」に注意
漢方薬には「甘草(かんぞう)」という生薬が多くの処方に含まれています。甘草は胃腸の調子を整え、他の生薬との調和をとる働きがありますが、複数の処方を同時に服用すると甘草の量が重なり、過剰摂取になることがあります。
甘草を多く摂りすぎると、体内のカリウムが減少し、血圧上昇・むくみ・手足のだるさなどを引き起こす 「偽アルドステロン症」 という副作用が知られています。重症化すると頭痛や筋力低下、不整脈などにつながることもあるため注意が必要です。
そのため、複数の漢方薬を併用する際には「合計でどのくらい甘草が含まれているのか」を確認し、必要に応じて医師や薬剤師に相談することが大切です。
治療方針を確認
漢方薬の利点は、複数の症状や疾患があっても少ない処方で改善できることです。
その利点をうまくいかせず、身体にあらわれている症状ひとつひとつに対して西洋薬のように漢方薬を選び服用することはお勧めできません。
漢方治療は、病気の原因となっている体質である「証」を見極め改善させます。そうすることで身体にあらわれている様々な症状は、原因となる体質が改善されれば必ず良くなります。いろいろと組み合わせすぎると、治療の方向性を見失うこととなりかねません。
治療方針を明確にして、その都度現れる症状をどのようにとらえるのかをカウンセリングでしっかり見極めて、正しい漢方治療を進めてください。
まとめ:漢方薬の効能効果よりも配合生薬
漢方薬は基本的に一つの処方で使うことを原則としていますが、状況によっては複数を組み合わせることもあります。
ただし、その可否や調整は個々の体質や症状によって変わりますので、自己判断せず、必ず医師・薬剤師・漢方専門家にご相談ください。
安心して治療を続けられるよう、気になる点があればお気軽に当薬局までご相談ください。
店舗情報
みなみ野漢方薬局
〒192-0917 東京都八王子市西片倉2-12-12
: 042-638-8860
定休日:水曜、第一日曜(年末年始の他臨時休業があります)
営業時間:午前10時~午後7時
:mail@minamino-kanpou.com
:https://x.com/minamino_kanpou
: https://lin.ee/PYnf0bm



