体の中を巡る「血液」が、さまざまな要因でスムーズに流れず、滞りを起こした状態を中医学では「瘀血(おけつ)」と呼びます。
この滞りは、痛み・しこり・冷え・色の変化などとして体に表れやすく、長く放置すると体調不良や慢性病の要因になることも。
瘀血の三大症状:あなたはいくつあてはまる?
以下は、一般的に中医学で瘀血がある可能性を示す3つのサインです。
| 症状 | 具体的な表れ方 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 固定痛 (刺すような痛み) | 痛む場所が一定/押すと響く/刺すよう・チクチクする痛み | 生理痛、肩こり、腰痛、頭痛、関節痛などで「定まった部位」が痛むことが多いか? |
| 腫塊・しこり | 皮膚や筋膜の下に「しこり」を感じる、腫れ、硬さがある | 生理のとき血塊が出る・乳腺にしこり・子宮筋腫などの既往歴 |
| 舌質暗紫 (舌が暗紫色) | 舌がくすんだ紫色、舌裏に静脈が浮かぶ | 鏡で舌を見て、全体に暗い赤紫色か?または舌裏の静脈が太くて目立つか? |
もし「ほぼ全部あてはまる」と感じたら、瘀血体質の可能性が高いと考え、生活を見直す価値があります。
瘀血傾向を改善する生活養生
瘀血は「血流の滞り」が基本テーマなので、まずは日常生活で血のめぐりをよくする習慣を取り入れましょう。
| 分野 | 養生ポイント | 補足・注意点 |
|---|---|---|
| 運動・からだの動き | ウォーキング、軽めのストレッチ、ヨガ、ラジオ体操などを毎日少しずつ | 激しい運動より、継続できるゆるやかな運動が◎ |
| 温め・冷え対策 | 足湯、腹部や腰を温める、冷たい飲食の摂り過ぎ抑制 | 入浴はぬるめ・半身浴がおすすめ |
| 食生活 | 血をめぐらせる食材(にんじん、しょうが、ニラ、黒豆、くるみ、ナツメなど)を意識的に摂取 | 油脂過多や揚げ物・冷たい飲料は控えめに |
| 睡眠・生活リズム | 睡眠時間の確保、夜更かし回避、規則正しい生活 | 交感・副交感神経のバランスを整える |
| ストレス対策 | 深呼吸、散歩、趣味、セルフケア、マインドフルネス | 精神的緊張は血流を滞らせやすい |
| 姿勢・デスクワーク対策 | 長時間の同じ姿勢を避ける、時々体を伸ばす、軽く歩く | 筋肉の硬さが血管を圧迫することもあるため |
ポイント: 生活養生だけで劇的に「瘀血を消す」ことは難しいかもしれませんが、上記をコツコツ丁寧に実践することで、体質改善への下地になります。
漢方薬の候補と選び方(体質に応じて使い分け)
瘀血を改善するために使われる代表的な漢方処方にはいくつかあります。ただし、自己判断だけで飲むのは避け、漢方専門薬局で相談することが重要です。
| 漢方処方 | 適応傾向 | ポイント・注意点 |
|---|---|---|
桃核承気 | 下腹部の膨満・便秘を伴う月経痛・更年期障害 | 瘀血+便秘タイプに。瀉下成分を含むため便秘がない場合は注意。 |
| 桂枝茯苓丸 | 月経不順・月経痛・子宮筋腫・下腹部の張り・肩こり | 比較的体力がある女性に多く用いられる代表処方。冷えが強くないタイプに。 |
| 冠元顆粒 | 頭痛・肩こり・高血圧・動脈硬化傾向・慢性疲労 | 血府逐瘀湯を基にした現代型処方。血液循環を改善し、頭の重さやめまい、首肩こりにも用いられる。血流サポート系の代表製品。 |
| 血府逐瘀湯 | 顔色が悪い・頭痛・肩こり・動悸・慢性痛 | 全身の血流停滞や上半身の瘀血傾向に。血行促進・鎮痛効果がある。 |
| 温経湯 | 冷え性・生理不順・不妊傾向 | 冷えが原因で血の流れが滞るタイプに。婦人科系でよく用いられる。 |
よくある質問(Q&A)
Q1. 瘀血と冷え性・虚血とはどう違うの?
A1. 冷え性は“温度”や“体温調節”に関する症状の傾向で、瘀血は“血流の滞り”そのものを指します。瘀血体質の人は冷えを併発しやすいため、両方が重なることも多いです。
Q2. 生活養生だけで瘀血は改善できますか?
A2. 軽度~初期の瘀血傾向なら、生活の見直しでかなり改善が期待できます。ただし長年放置していたもの・重度の瘀血は、漢方や鍼灸など専門療法併用が望ましいケースもあります。
Q3. どのくらいで効果が出ますか?
A3. 個人差がありますが、数週間~数か月の継続が目安です。痛みやしこりの変化、舌の色の改善などを定期的にチェックしましょう。
Q4. 西洋医学の対処法はありますか?
A4. 西洋医学では「しこり(腫瘍)」への対処や、痛みに対する鎮痛・炎症抑制などが中心となります。「瘀血」という概念は使われにくいため、中西融合アプローチが望ましいです。
おわりに
瘀血は、血流の滞りにより体のさまざまな不調を引き起こす要因となることがあります。しかし、体質や生活習慣に合ったケアを行うことで、少しずつ改善していくことが可能です。
当店「みなみ野漢方薬局」では、中医学の弁証論治の考え方に基づき、お客様一人ひとりの症状・体質・生活習慣から瘀血の原因を丁寧に診断し、体に合った漢方薬を調合・ご提案 いたします。
慢性的な痛みや冷え、月経トラブルなどでお悩みの方は、ぜひ安心してご相談ください。
専門知識と経験を活かし、皆さまの体質改善と健康づくりをしっかりサポートいたします。


