妊娠しやすい体を育てる ― 不妊症に対する漢方の役割 ―

婦人病・不妊相談

不妊治療は近年大きく進歩し、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)といった高度生殖医療が一般的になりました。
その一方で、「検査では異常がないのに授からない」「治療を続けて体が疲れてしまった」「ホルモン治療の副作用がつらい」といったお悩みも多く聞かれます。

こうした中で注目されているのが、西洋医学と漢方(中医学)を組み合わせた統合的なアプローチです。
漢方では、妊娠を「体のバランスが整った自然な結果」と考え、月経や体調の乱れを整えながら、妊娠しやすい体質を育てることを目的とします。

不妊を引き起こす中医学的な原因

漢方では、不妊は単なる生殖機能の問題ではなく、体全体の気・血・水のバランスの乱れとしてとらえます。主な体質パターンには次のようなものがあります。

  • 腎虚(じんきょ):生命エネルギーの不足。加齢や過労、冷えなどで妊娠力が低下する。
  • 血虚(けっきょ):血の不足により、子宮内膜が薄い・月経量が少ない・顔色が悪い。
  • 瘀血(おけつ):血の流れが滞り、卵巣や子宮の働きが低下。月経痛や経血の塊がある。
  • 気滞(きたい):ストレスなどで気の巡りが悪く、ホルモン分泌や排卵リズムに影響。
  • 湿熱(しつねつ):体に余分な熱や湿気がこもり、炎症や粘調なおりものが出やすい。

これらは単独で起こることもありますが、多くの場合はいくつかが重なり合っています。
漢方の強みは、検査で異常が見つからないような微妙な体調の違いにも対応できる点にあります。そのため、体質を丁寧に見極めて治療方針を立てることが大切です。

西洋医学との併用 ― 体外受精・顕微授精を支える漢方の力

現代の不妊治療において、漢方は自然妊娠を目指す方法だけでなく、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療を支える役割も果たしています。

中医学的には、「月経調整」「卵巣機能の回復」「子宮内膜の血流改善」「ホルモンバランスの安定」を柱とし、体の内側から妊娠しやすい環境を整えます。

治療段階に応じて、

  • 採卵前:卵の質を高めるために「腎精」を補う
  • 移植前:子宮内膜を厚く整え、着床しやすい状態にする
  • ホルモン治療中:副作用(ほてり・むくみ・情緒不安)を和らげる

といったサポートが可能です。
漢方は薬の副作用を軽減し、体の回復力を高める“調整役”として、統合的な治療に組み込まれています。

男性不妊にも、漢方のアプローチを

不妊の原因の約半数は、男性にも要因があります。
中医学では、精子の状態や性機能の低下も「腎の力(生命エネルギー)」の不足と関係があると考えます。

過労・ストレス・睡眠不足・喫煙・冷えなどは、精子の質や数を低下させる要因です。
漢方では、腎精を補い、血流を改善し、精子の質と活力を高めることを目指します。

代表的な漢方処方例

※体質や月経の状態、治療段階によって最適な処方は異なります。

妊娠力を育てる ― 「焦らず、整える」

妊活は、焦りや不安が心身のバランスを乱しやすい時期でもあります。
漢方では「焦らず整える」を大切にし、体と心の調和を回復させることを重視します。

体が整うことで、自然なリズムが戻り、ホルモンや血流も安定していきます。
その結果として、授かる力が少しずつ育まれていきます。

まとめ

不妊は「体の不調」ではなく、「体からのメッセージ」。
西洋医学の確かな技術と、漢方の体質改善を組み合わせることで、より高い妊娠力を引き出すことができます。

当店では、あなたの体質や生活に合わせたオーダーメイドの漢方相談を通じて、
「授かる力を育てるサポート」を丁寧に行ってまいります。
お気軽にご相談ください。

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